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雨の日の決闘

掲載日:2026/09/20

「そろそろ時間だ」

「そうね」


 放課後の教室。

 俺とB美は自分の席に座っていた。

 教室前方の壁に設置された時計を見て、俺達は席を立つ。

 共に教室を出て、廊下を歩き、階段を降りて、昇降口へ。

 その間、無言。

 ただ、俺達の胸の内には、譲れない思いが、静かに燃えていた。

 靴を上履きからスニーカーに履き替え、傘置きから各々自分の傘を手に取る。


「さぁ、始めようか」

「いつでも構わないわ。勝つのは、私よ」

「馬鹿を言うな。勝つのは────俺だ!」


 傘を振り上げ、俺は一直線にB美へと駆け、振り下ろす。

 B美は自らの傘で俺の傘を防ぎ、次いで斬り返すように傘を振るう。

 俺は後方へ飛び退き、傘を構えた。

 昔習っていた剣道の構え。

 対して、B美の構えはそれとは違い、西洋の騎士を思わせる構えだった。


「次は、私の番!」


 B美は傘を顔の横に持ち上げ、そのまま距離を詰めてくる。

 その構えから繰り出される手段は──突きしかない。

 B美の傘が突き出される。

 狙われているのは顔。

 分かりやす過ぎる。

 俺は、槍の如き迫る傘を、自らの傘で下から跳ね上げ、軌道をそらす。

 そして、跳ね上げた傘で、そのままB美を斬り払った。


「実剣であれば、お前はもう、死んでいる」

「くっ、今回は、私の負けね……」


 カクン、と崩れ落ち、膝を付くB美。

 そこへ、


「お前らまたやってんのか。馬鹿なことやってないでさっさと帰れ。相合傘なんてな、男の傘でやればいいんだよ」


 担任教師がたまたま通りかかり、そんなことを言って去っていった。


「…………」

「…………」

「帰るか」

「そうね」


 俺達は共に、校舎を出る。

 今日の勝負は俺の勝ち。

 俺は傘を開き、2人で肩を並べ、1つの傘の中に収まって雨の中に出る。

 雨の日になる度に行われる、どちらの傘で帰るかを決める戦い。


 俺は心の中で、次も勝つと闘志を燃やす。

良い子は真似しないでね。

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