雨の日の決闘
「そろそろ時間だ」
「そうね」
放課後の教室。
俺とB美は自分の席に座っていた。
教室前方の壁に設置された時計を見て、俺達は席を立つ。
共に教室を出て、廊下を歩き、階段を降りて、昇降口へ。
その間、無言。
ただ、俺達の胸の内には、譲れない思いが、静かに燃えていた。
靴を上履きからスニーカーに履き替え、傘置きから各々自分の傘を手に取る。
「さぁ、始めようか」
「いつでも構わないわ。勝つのは、私よ」
「馬鹿を言うな。勝つのは────俺だ!」
傘を振り上げ、俺は一直線にB美へと駆け、振り下ろす。
B美は自らの傘で俺の傘を防ぎ、次いで斬り返すように傘を振るう。
俺は後方へ飛び退き、傘を構えた。
昔習っていた剣道の構え。
対して、B美の構えはそれとは違い、西洋の騎士を思わせる構えだった。
「次は、私の番!」
B美は傘を顔の横に持ち上げ、そのまま距離を詰めてくる。
その構えから繰り出される手段は──突きしかない。
B美の傘が突き出される。
狙われているのは顔。
分かりやす過ぎる。
俺は、槍の如き迫る傘を、自らの傘で下から跳ね上げ、軌道をそらす。
そして、跳ね上げた傘で、そのままB美を斬り払った。
「実剣であれば、お前はもう、死んでいる」
「くっ、今回は、私の負けね……」
カクン、と崩れ落ち、膝を付くB美。
そこへ、
「お前らまたやってんのか。馬鹿なことやってないでさっさと帰れ。相合傘なんてな、男の傘でやればいいんだよ」
担任教師がたまたま通りかかり、そんなことを言って去っていった。
「…………」
「…………」
「帰るか」
「そうね」
俺達は共に、校舎を出る。
今日の勝負は俺の勝ち。
俺は傘を開き、2人で肩を並べ、1つの傘の中に収まって雨の中に出る。
雨の日になる度に行われる、どちらの傘で帰るかを決める戦い。
俺は心の中で、次も勝つと闘志を燃やす。
良い子は真似しないでね。




