第4話 芽吹く才能
俺は叫びながら突進する。
対峙する二人の兵士は、ニヤニヤ笑って会話していた。
「どうする」
「もう殺していいだろ。俺がやる」
背の高い兵士が前に進み出ると、舌なめずりをして槍を構えた。
完全に油断している。
俺なんかに負けるはずがないと考えているのだ。
その事実にさらに怒りが増す。
兵士は気楽な動作から刺突を繰り出してきた。
「そらよっ」
俺は僅かに身を屈める。
避け切れずに穂先が肩を掠めた。
肉を抉られる痛みに顔を顰めつつ、俺は一気に踏み込む。
そこから全力で拳を放った。
「うおおおああああああああぁっ!」
突き出した拳は兵士の腹にめり込み、鎧をぶち抜いて胴体を貫通した。
兵士は信じられない様子で目を見開く。
半開きの口から真っ赤な血が垂れた。
「……あ?」
拳を引き抜くと、白目を剥いた兵士は倒れる。
右手は血みどろになり、内臓の破片がへばりついていた。
(今の力……やっぱり……)
一瞬の思考の隙をついて、もう一人の兵士が襲いかかってきた。
相手の槍が俺の腹をまっすぐ貫く。
「ぐっ……!?」
「ふざけんじゃねえよ、クソ奴隷がッ! さっさと死にやがれ!」
俺は歯を食い縛り、腹を貫かれたまま前に進んだ。
右手を力強く握り込んで振りかぶり、ぎょっとした兵士に向けて告げる。
「死ぬのは、お前だ」
叩き込んだ拳が兵士の顔面を爆散させた。
骨と肉片と眼球がバラバラになって撒き散らされる。
首から上を失った死体は仰向けに倒れた。
俺は腹を貫く槍を引き抜いた
こぼれ出す血を見て舌打ちする。
「痛え……」
馬車の陰から悲鳴が上がる。
見に行くと、御者が走って逃げるところだった。
俺は小石を何個か拾って投げつける。
高速で放たれた小石の一つが、御者の太腿に命中した。
破裂音と共に御者が転倒する。
小石の当たった太腿の肉が裂けて出血していた。
「ひっ、ひっ、ひぃっ……」
御者、泣きながら鞄を漁り始めた。
薬瓶を取り出すと、中身の軟膏を傷口に塗り込む。
それを見た俺は薬瓶をひったくる。
「血止めか。ちょうどいい、欲しかったんだ」
「あ、あの……返して……」
「お前はもういらないだろ」
懇願する御者の頭を踏み付けて力を込める。
抵抗はほとんどなく、腐った果実みたいに頭部が潰れた。
手足を大きく痙攣させた後、御者は動かなくなる。
俺は自分の足を見て呟く。
「一体どうなってるんだ……」
元々、俺の身体能力はカエナにも劣っていた。
村でも貧弱だとからかわれていた。
それなのに、素手で人体を破壊できた。
明らかに異常である。
「…………」
俺は馬車の鉄格子の中を一瞥する。
ロン爺ちゃんの死体は物言わず横たわっていた。




