第20話 死体荒らし
「死体ってどれくらいあるんですか」
「わかんない。たぶん五百体くらい? 小さい骨だけのやつも含めたらもっと増えるかも」
「どの死体が祝福持ちなんですかね……」
「そこまではちゃんと管理してないなぁ。片っ端から触っていくしかいないね」
「なるほど……」
これはかなり手間のかかる作業になりそうだ。
とは言え、大量の死体に触れられる機会なんて滅多に巡ってこない。
新しい祝福を手に入れる好機である。
面倒だろうがしっかりやり遂げるしかないだろう。
レニは眠たそうに伸びをした後、さっさと踵を返した。
彼女は俺に手を振りながら倉庫の出口へと向かう。
「それじゃ、終わったら酒場に戻ってきて。手に入れた祝福の検証をしよう」
「えっ、帰るんですか」
「ここにあたしがいても役に立てないからね。たまった仕事も片付けなきゃいけないし。詳しいことはグイルに任せてるから頑張ってね」
「グイル……?」
レニが扉を閉めた瞬間、背後に誰かの気配が現れる。
振り返るとそこには、ズタボロの外套を着込む猫背の男がいた。
木製の仮面で顔を隠した男は、くぐもった声で名乗る。
「グイルだ。鈍色の獅子の団員だ」
「えっと、アルフです。レニさんに誘われて入団したばかりです。よろしくお願いします」
「話は団長から聞いている。こっちに来い」
グイルは俺を手招きして倉庫の奥へと進む。
俺は恐る恐る後をついていった。
「簒奪の祝福だったか……細かい発動条件はあるのか。インターバルは? とにかく触れるだけでいいのか」
「たぶん触れるだけです。部位も関係ないかと」
「死体の状態や経過日数はどうだ」
「その辺りはまだ分からないですね……」
「ならば徹底的に調べてみるか」
グイルが手を打ち鳴らす。
すると、棚に並べられた死体が一斉に動き出した。
床に転がった死体達は不気味なほど滑らかに整列し始める。
「こ、これは……」
「死霊術の祝福だ。俺の血を塗った死体を自在に操ることができる。その気になれば不死の軍隊を構築可能だ。難攻不落の城塞だろうと俺一人で滅ぼせる」
グイルは自信に満ちた様子で述べる。
冗談や虚言ではなく、本当にそれだけの戦力なのだろう。
死体の軍勢なんて悪夢そのものだ。
今の俺では敵わないんじゃないだろうか。
(レニさん……とんでもない人を雇ってるんだな)
すべての死体が整列し終えたところで、グイルが俺を指差した。
彼は淡々と指示を出す。
「お前はそこで立っていろ。目の前に来た死体に触れるだけでいい。わかったな?」
「は、はい。ありがとうございます」
「礼には及ばん。久々に祝福を全開にできるんだ。悪くない気分だ」
その後、俺は近付いてくる死体に順番に触れるという行為を延々と繰り返した。
軽く半日以上はかかってしまったが、倉庫内のすべての死体に触れることができた。
片付けをするというグイルに礼を言うと、俺は傭兵酒場へと戻った。




