第19話 プレゼント
ファルクエンの街ルヅミに帰還したのは三日後の深夜だった。
レニは俺を傭兵酒場の二階へと連れて行く。
「空き部屋があるからそこを使いなよ。もちろん宿泊費は取らないから」
「ありがとうざいます」
案内されたのは殺風景な部屋だった。
少し埃臭く、ベッドと小さな棚しか置いていないが十分な広さがある。
ここに無料で泊まれるなら贅沢すぎるだろう。
レニが部屋から去った後、俺はベッドに腰かけてふと考える。
(鈍色の獅子は国盗りが目的だ。このまま所属していれば、いずれハンニグまで辿り着くだろう)
復讐の道は想像以上に順調だった。
しかし肝心の俺はまだまだ弱い。
もっと力が必要だ。
ハンニグを殺せるくらい強くならなければならない。
(今回の戦いで使える祝福は増えた。だけどまったく使いこなせていない。練度を上げていくべきだ)
咄嗟に使った水の祝福は役に立たなかった。
本来の使い手は矢の雨を難なく防いでいたから、あれは俺の制御能力が低かったからだと思う。
再生の祝福だってそうだ。
セイクはどんな致命傷でも一瞬で再生する上、首無しの胴体を動かしていた。
俺は片腕一本を生やすのにも時間がかかる。
(今のままじゃ宝の持ち腐れだ。簒奪の祝福で最強にならなければ……)
そんなことを考えているうちに、いつの間にか眠っていた。
翌朝、レニに叩き起こされた俺はルヅミの寂れた区画へと連れて行かれた。
「どこに向かってるんですか?」
「着いてからのお楽しみだよ」
到着したのは木製の大きな倉庫だった。
レニが扉を開けると、吐きそうな異臭が漂ってくる。
広々とした室内には天井付近までずらりと棚が設置されていた。
棚には全裸の死体が並べられている。
死体の状態は様々で、腐りかけのものからドロドロになって蛆が湧くもの、完全に白骨化したものまで揃っていた。
俺は目に涙を滲ませ、鼻と口を手で塞ぎながら呻く。
「こ、これは……」
「鈍色の獅子が管理する死体だよ。戦場で拾ったり、街で買い取ったものでね。兵士、一般市民、犯罪者まで色んな死体がある」
「どうして集めてるんです?」
「祝福の中には死体を扱うものがあるからね。日頃から集めておくと便利なんだ。ちょうど君のようにね」
「死体を扱うって、まさか……」
「ここにある死体から祝福を搾り尽くそうって作戦だね」
レニは世間話のように目的を明かした。




