第18話 鈍色の獅子
俺はレニと一緒に、元の街ルヅミへと向かう。
その帰路で、レニの運営する傭兵団について話を聞いた。
まず傭兵団の名前は鈍色の獅子。
超実力主義の戦闘集団らしい。
レニが認めた者しか入れず、団員は二十人程度だという。
かなり小規模だが、代わりに一騎当千の傭兵ばかりが所属しており、いざ戦場に出れば凄まじい活躍をするのだそうだ。
現在、鈍色の獅子の拠点はファルクエンにある。
ただし活動範囲は他国の戦場にも及び、特定の団員を個人で指名する依頼が来ることも珍しくないらしい。
傭兵団という形式ながら、団員が揃う機会はほとんどないとのことだった。
「強い祝福持ちがいるけど、殺して奪っちゃだめだからね」
「そんなことしませんよ!?」
「本当に?」
「いくら強くなりたいと言っても、そこまで手段を選ばないわけじゃないです。それに、仲間を狙ったら俺のこと殺しますよね?」
「そりゃもちろん。早く死にたくなるような目に遭わせるかな」
レニは平然と言う。
脅しではなく、事実を述べただけなのだろう。
彼女は退屈そうにあくびをした後、何気ない口調で俺に尋ねた。
「ところでアルフ君は、どうして入団してくれるの? お金は名誉じゃなくて、何か目的があるっぽいけど」
「……そういうのって分かるんですか」
「これでも団長だからね。人を見る目はあるつもりさ」
俺は立ち止まって黙り込む。
そして自分の身体を見下ろした。
再生の祝福で綺麗に消えているが、焼き切られた苦痛はよく憶えている。
「ファルクエンの王ハンニグ……故郷を滅ぼしたあの男に復讐したいんです」
「なるほど。よくある動機だね」
「そうなんですか?」
「この世界は理不尽な暴力に溢れている。同じ数だけ被害者は生まれ、報復を企むものさ。ほとんどが失敗に終わるけどね」
「…………」
力こそ正義。
それがこの世界の唯一絶対のルールである。
弱者は強くならなければならないが、生半可な覚悟で実現できるものではなかった。
「まあ、君には簒奪の祝福がある。今はとても敵わないけど、復讐を達成できるんじゃないかな」
「……ちなみに止めませんよね」
「うん、別に反対する理由もないし。今後の局面次第では、あたしもハンニグを殺す予定だからさ。むしろちょうどいいと思ってるよ」
「え……?」
突然の情報に俺は戸惑う。
驚きながらもなんとかレニに訊いた。
「レニさんもハンニグに復讐を?」
「違う違う。あたしはただ国が欲しいだけ……誰かが築き上げた国を乗っ取ってみたいんだ」
「……国を乗っ取ることに意味があるんですか」
「うーん、どうだろう。なんかスカッとしそうじゃん。あたし、誰かに指図されるのって嫌いで、偉そうな奴をぶん殴りたいんだ。そこが一番の理由かなぁ」
滅茶苦茶だ。
目的の規模は大きいのに、根本の動機や考えは呆れるほどに浅い。
だがしかし、レニの目は無邪気に輝いていた。
冗談などではなく、本気で国盗りを実行するつもりらしい。
「アルフ君はファルクエンの別名を知ってる?」
「いえ、わからないです」
「簒奪の国だよ。歴史上、ファルクエンは一度も血統による王権の継承が行われてないんだ。王を殺してその座を奪うことが当たり前になっている。ずっと昔から血みどろの慣習を繰り返しているのさ」
「レニさんは新しい王になりたいわけですね」
「まあね。別に乗っ取れるなら別の国でもよかったけど、そういう国風も含めてファルクエンが最適なんだ」
レニは楽しそうに言う。
ひとまず彼女と俺の目的は合致している。
これほど頼もしい味方もいないので、ここは喜んでおくべきだろう。




