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ファルクエン戦記  作者: 結城 からく


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第16話 祝福の名

 レニに掴まれた腕は、義手ではなく生身だった。

 アーデ兵の残党を殺しているうちに、いつの間にか生えていたのだ。

 レニは俺の全身を観察しながら指摘する。


「腕もそうだけど、傷一つ負ってないね。あんなにたくさんの敵兵と戦ったのに。再生の祝福かな」


「えっ……いや、何のことですかね」


「誤魔化さなくていいから。バレバレだし」


 レニが俺の背後に回り込み、背中をぺたぺたと触る。

 そこには小さく畳まれた竜翼があった。


「こっちも治ってるね」


「あ、あの……」


「ちなみに、君が戦う姿もこっそり見てたから。怪力に水に硬化……やりたい放題だったね」


「…………」


 これはもう隠し通せる気がしない。

 下手な言い訳をしたら、機嫌を損ねて殺されるかもしれない。

 そう考えた俺は、己の祝福について正直に説明した。

 説明を聞いたレニは楽しそうに目を細める。


「なるほど。死体から祝福を奪う祝福。聞いたことない力だね。いくらなんでも反則すぎない?」


「俺もそう思います……」


「じゃあ、この人達の祝福も奪えるの?」


 レニが指差したのは、彼女が運んできた二つの死体だった。

 俺は死体の前に屈んで頷く。


「たぶんできると思います」


「目の前で見せてよ。男の方は血の祝福、女の方は影の手の祝福ね」


「……わかりました」


 二つの死体に触れると、新たな力を感じ取れた。

 その感覚のままに俺は祝福を発現する。


 全身に付いた血液が蠢いた。

 血液は俺の意識に合わせて生き物のように這い進んで集まり、一本の赤いナイフになる。

 掴んでみるとかなり硬い。

 乱暴に扱えば折れそうだが、不意打ち用としては十分だろう。

 特に大量の血が流れる戦場では、他にも様々な使い道があるに違いない。


 続けて俺は自分の影に注目する。

 しばらく見つめていると影が勝手に動き出した。

 変な踊りをしながら伸び縮みして、やがて膨らんで立体な人間の腕になる。


 俺は影の手と恐る恐る握手をした。

 少し弾力があってひんやりと冷たい。

 握手の後、影は音もなく縮んで元の形に戻った。


 一連の現象を目撃したレニは感心する。


「うんうん、どっちの祝福も機能してるね。君は本当に死体の祝福を奪えるらしい。その祝福の呼び名は決めてるの?」


「いえ……祝福を奪う祝福としか」


「長いし呼びづらいじゃん。あたしが考えてあげる」


 レニは腕を組んで無言で考え込む。

 やがて何か閃いたらしく、得意そうな顔で俺に告げた。


「今日から君の能力は、簒奪の祝福だ」

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