第15話 戦後処理
夕暮れの砦。
俺は門付近に座り込み、食糧庫で見つけた保存食を齧っていた。
味も食感も最悪だが、水で流し込むことでなんとか誤魔化す。
ひどい食事だが空腹だから文句は言えない。
祝福を乱用したことで消耗しているのだと思う。
だから栄養を取らないといけないのだ。
足元には数人のアーデ兵の死体が転がっていた。
どいつも首や顔に傷を負って死んでいる。
(意外と苦戦しなかったな。それだけ再生の祝福が強いってことか)
兵士の大半が身体強化系の魔術を使ってきたが、複数の祝福を持つ俺の相手ではない。
特にセイクから奪った再生の祝福が反則に近い。
どんな致命傷を受けても即座に回復するので負けることがないのである。
今後も頼っていくことになりそうだ。
休憩する俺の前に、傭兵酒場の主人レニがやってくる。
彼女は気さくに話しかけてきた。
「やあ、お疲れ」
「あ、どうも……」
「生き残ったのは君だけかな」
「はい。他は全員死にました」
「そっか。仕方ないね」
レニが血みどろの大きな麻袋を地面に落とす。
開いた口から男女の死体がはみ出していた。
どちらも首がねじれている。
「誰ですかこれ」
「アーデ軍の祝福持ち。君がセイクを殺した段階で砦から逃げたんだよ。どこか別の部隊に砦の陥落を報告するつもりだったんじゃないかな」
「殺してよかったんですか。生かしたまま拷問すれば情報を引き出せたかもしれないのに」
「別にいいよ、面倒くさいし」
ぼやくレニは掠り傷しか負っていない。
疲れた様子もなく、俺より元気そうだった。
死体を持っていなければ、戦った直後とは思えないほどである。
俺や傭兵に仕事を丸投げしたと思いきや、ちゃんと別動隊として働いていたらしい。
「……まさか一人で祝福持ち二人に勝ったんですか?」
「うん。連携してきたから少し手間取ったけど、そこまで苦戦はしなかったんじゃないかな」
「すごく強いですね」
「でしょでしょ。割と自信あるんだ。それでさ――」
屈み込んだレニが不意に俺の顔を覗き込む。
彼女の手が俺の片腕……今朝まで義手だった部分を掴んだ。
反射的に振りほどこうとするが、びくともしない。
無理に抵抗すれば握り潰されそうだった。
真顔のレニは瞬きもせずに問いかけてくる。
「君、なんで祝福をいくつも持ってるの?」




