第14話 不条理の体現
セイクの頭部を破壊していると、背中に凄まじい衝撃と激痛が走る。
振り返ると、首のないセイクの胴体が立っていた。
千切った両腕は繋がっており、その手で棍棒を掲げている。
(首無しでも動けるのかよ! どういう仕組みだ!?)
セイクの胴体は俺を滅多打ちにしてきた。
よほど必死なのか、とてつもない威力である。
皮膚を硬化させていなければ一撃で終わりだったろう。
俺は棍棒の痛みを根性で耐えて、抱えた頭部を必死に攻撃し続ける。
胴体に対処する余裕はなかった。
頭部が再生して胴体と繋がったら確実に負ける。
それが分かっているからこそ、このまま強行するしかないのだ。
(死ぬ前に殺す、死ぬ前に殺す、死ぬ前に殺す、死ぬ前に……)
俺はセイクの顎に指をかけて無理やり開いて引き裂く。
そこから口内に手を突っ込み、滅茶苦茶に中身を掻き混ぜた。
己の窮地を感じたのか、棍棒の攻撃がさらに激しくなる。
なりふり構わず勢いを乗せて連打してくる。
あまりの破壊力に、義手が外れて吹っ飛んだ。
硬化させた皮膚も割れて剥がれ落ち、打撃が骨まで響いてくる。
俺は全身から血を流しながら、残る片手でセイクの脳を磨り潰した。
(頼む、間に合ってくれ……っ!)
目の前が闇に染まって意識が途切れる寸前、不意に痛みが緩和する。
見れば傷が塞がっていくところだった。
ほぼ同時に棍棒の攻撃が止まる。
セイクの胴体が地面に倒れていた。
原形を失った頭部はいつまで経っても治らない。
俺は不死身のセイクを殺し、再生の祝福を奪ったようだ。
「ふふ……ははは、ははははははッ!」
高笑いした俺は血みどろの髪を掻き上げる。
身体がほぼ万全まで再生していた。
俺はセイクの棍棒を拾う。
かなり使い込まれた棍棒は、ちょうどいい重さで頑丈そうだった。
人間を殴り殺すのにぴったりだろう。
命令通り待機していたアーデ兵は驚愕していた。
彼らは予想外の結末に狼狽えている。
「セイク様が死んだ!?」
「嘘だろ……あの人は不死身なんだ! ありえねえだろ!」
「そもそもあいつ、傷が治ってないか?」
「一体どんな祝福なんだ……」
士気が目に見えて低下している。
これを好機と見た俺は、雄叫びを上げてアーデ兵に走り寄り、力いっぱいに棍棒を振り回した。
一撃で数人のアーデ兵の胴体を粉砕し、頭部を潰した。
間髪いれずに二撃目、三撃目を叩き込んで被害を拡大させる。
怪力の祝福を込めた棍棒に、アーデ兵は太刀打ちできない。
対策を試みる者もいたが、いずれも無駄な行動だった。
防ごうとすれば武器や防具ごと腕が潰される。
反撃しても硬化した皮膚に遮られる。
なんとか付けた傷はすぐに再生してしまう。
こんな理不尽なことはないだろう。
結局、俺はその場にいたアーデ兵を皆殺しにすると、逃げた数人を追いかけ始めた。




