第27話 双子の想い
今まで世の災いをもたらす者を止めようと旅に出た者も多い。しかし、誰一人としてその功績を成し遂げた者はいない。
あの宮庁の長、シャディルトでさえ手を出さぬものなのだ。
それを彼女らに任せて再び戻ってくることができるのか。
「レニファー、聞いて。私は今日の夕日の沈む頃に旅に出ることの声明を出そうと思ってる。それまでは、このことは内密なことなんだ」
その前に本当にこの道を歩んでいいのか、考えるためにこうやって皆の元へやってきたんだけど。
ソシアの言おうとすることが分かったのか、レニファーは口をつぐむ。
一時の沈黙を賑やかな中に落とすことしばし。
「ソシア様、お早くー!」
別の方角からやってきた声に二人の間から沈黙が消え去った。
声のするほうを振り返ってみれば、宮庁の一人、ソシアと同じ年のエクアラが難民を前に両手を振りかぶっている。
「今行くよ!」
食膳を運ぶ役目を担うため、ソシアはレニファーにまたね、と手を振る。
手を振られたレニファーは自分の元を去ろうとする彼女の袖を掴み、自分の想いを精一杯声にする。
「わたくしはっ!わたくしは、あなた様にこの国に残っていただきとうございます!あなた様こそ、この国を治めていくべき人だと信じています!」
「ちょ、レニファー?」
その手も、声も震えていた。
一国民の意見です、そう締めくくって、礼儀正しく一礼をして走り去ってしまった。
ソシアは彼女の名を呼んでみたが振り返ることもなく、まさしく一目散という速さで建物の間に見えなくなってしまう。
走り去るレニファーを追おうとソシアが食膳を近くにあったテーブルに投げうつように置くと。
「まあ、姉さまったら。わたくしが姉さまを追います。ソシア様は皆に食事を振舞ってあげてくださいまし」
テーブルに投げうたれた食膳をソシアに戻しながら、ピーシェが微笑む。
でも!
そう口にするより早く、ピーシェは人差し指を立てて静かに、というサインを出す。
「皆があなた様を待っているんですよ?その想いを無駄にしてはいけません。皆の話を聞いて参考にしてください。そして、帰ってくることを…その胸に置いてください」
先程の話を聞いていたのであろうことは予想がついた。
ピーシェの能力には『地獄耳』が備わっている。
二人の話を聞いて、ピーシェはピーシェなりの意見をソシアに伝えたつもりだ。
そしてそれはソシアに痛いほど伝わった。
だから次期当主である彼女は言った。
「ありがとう。私は、あなたたちと知り合えて幸せだよ」
では。
ソシアの言葉を受け止めると、ニコッと笑ってピーシェは姉の後を追った。
彼女もまた、脱兎のごとく駆けだしていく。
ピーシェに言われた通り、ソシアは人々に食事を振舞うべくトレーを運んだ。
行った先では、エクアラがリレプーを器に盛りつけている。
みずみずしい果実が朝日の光を浴びて本来の色を取り戻していた。
たどり着いたソシアに、遅いですよ~と膨れてみせる同い年の宮庁の者に苦笑いを向けて、ごめん、と手を合わせて謝罪する。
そこで、謝らなくていいですよ、と隣で言ったのはエクアラと仲が良い一つ年上のイサーシャ。
二人とも昨年、宮庁の試験に合格した新人だ。
殊にエクアラは宮庁に最年少で就任するという優秀な逸材でもある。
その二人が訪れた人にリレプーを振舞っているところであった。
彼女らから艶やかな果実を受け取ると、人々は各々礼を述べて家族の元へ戻っていく。
ソシアもそれを見送りながら二人に笑いかける。
「リレプーって癖があると思っていたけど、みんな好きなのかなぁ…」
「今なら、なんだっておいしいんだと思いますよ?」
ソシアの何気ない問いにイサーシャが答える。




