結婚式前夜
結婚式2週間前、平日の午後2時――。
2週間後に結婚式を控え、俺は婚約者にして担当アイドルの灰谷果林(24)と共に、打ち合わせの為、式場『アルテミス』に来ていた。
「こちらが席次表 席札になります。ゲストのお名前と肩書き等お間違えないでしょうか?」
「「はい。大丈夫です」」
支配人の橘さんも同席する中、ウエディングプランナーの井堀さんに資料を見せられ、頷く俺と果林。
結婚式の三ヶ月前に、ここで美咲さんに婚約破棄をされ、そして告白番組で果林に告白され、逆プロポーズをし、そのまま同じ日にここで果林と結婚式を挙げると事になった。
式まで間もない中、結婚相手が変わるという前代未聞の事態になりながらも、実は準備自体は思った程大変ではなかった。
芸能関係者に向けたパーティーは別日に行う事になったので、新郎(俺)サイドの招待客は当初の予定からほとんど変わる事なく、新婦(果林)サイドの芸能関係の友達や、父親&その家族が招待客が増えただけで、こじんまりしたアットホームな雰囲気の式になりそうだった。
元々ルミナス☆ミ メンバーは式に呼ぶ事になっていたので、新たにスケジュール調整する事なく済んで助かった。
「しかし、大文字社長、仕事の鬼なのに、マネージャーの結婚式の為に、よく人気アイドルのスケジュールを空けてくれたよな〜」
俺が首を傾げていると、果林が若干鋭い眼差しをこちらに向けながら事情を明かした。
「それはね、あらっちゃんの結婚式に参加させてくれないと、この先の仕事をしないと私が社長に泣きついたからだよ」
「え。そうなのか?」
「うん。あらっちゃんが別の人と結婚するとしても、せ、せめて好きな人の幸せを見届けたいと思ってっ……。ううっ。あの時は本当に辛かったよぅ。うえ〜ん!」
「か、果林……?!」
当時の辛さを思い出して、泣き出す果林に俺は慌てた。
なお、アヤ、舞弓は、そんな辛い状況の果林に付き添いたいと申し出て、結果ルミナス☆ミ メンバー全員出席する事になったらしい……。
「か、果林ちゃん、泣くな〜? 今は、お前が新婦の立場なんだから。なっ?」
「う、うん。招待客から、新婦に昇格出来た。本当によかったよ。びえ〜ん!」
「どっちにしろ泣くんかい!」
今度は嬉し泣きし始める果林に手を焼いていると、井堀さん、橘さんに温かい目で見られてしまった。
「お二人は本当に仲がよいご夫婦ですね〜」
「本当にそうですね。小松崎様が誠実な方なだけに、婚約破棄の時は残念に思っていましたが、灰谷様との今の絆を目の当たりにして胸の温まる思いです。差し出がましいようですが、より幸せな道を歩まれていると思いますよ」
「「!」」
二人にそう言われ、俺と果林は顔を見合わせた。
「あらっちゃん、ウチと結婚できて幸せ?」
「あ、当たり前だろ?// 果林みたいないい女と結婚出来て幸せにならない奴がいるか」
「ふふ。嬉しい♡」
果林はとろける様な笑顔を浮かべ、俺達は自然と手を重ね合わせた。
「見ているこちらも幸せになってしまいます。当日は、お二人の幸せな姿をたくさんの方に見て頂きましょうね。これから、司会の方と共にタイムスケジュールを確認したいのですが、その前に支配人から警備について確認があるそうです」
「ええ。芸能人の方の結婚式という事で、披露宴会場内は小松崎様の頼まれたボディーガードの方が巡回されると伺っています。こちらでも、いつもの警備に加えて、入り口に顔認証システムを取り付け、特定の方は建物内に入れないように出来ます。どなたか、警戒すべき方はいらっしゃいますか?」
「そうですね……。絵梨花は外国、柏崎は警察に拘留中だし、気をつけるとしたら、5年前にストーカーして来た男かな? まぁ、ボディーガードの服部さんに脅されて死ぬ程怖がっていたから、可能性は低いと思うけど……。あと誰かいるかな?」
俺はううん……と考え込むと、果林が鋭く叫んだ。
「あと、元婚約者の小丸美咲も気をつけなきゃ!」
「ええ? 彼女とはもう法律事務所で決着着いたから流石にないだろう」
その指摘を俺は笑って否定したのだが、果林の目は真剣だった。
「あらっちゃん! 女の情念を侮っちゃダメ! 特にああいうタイプの人は、思い込んだら何をするか分からないんだから、警戒するに越したことはないよ!」
「わ、分かったよ。一応お願いするか……」
果林の勢いに呑まれるように、俺は頷き、彼(女)らの画像データを橘さんに渡す事になった。
「変装したり、体重が増減する事で、顔認証が効かない事もあるんですか?」
「顔を覆っている方がいたら、顔認証の前で取って頂きますし、短期間に通常ではあり得ない位の体重の増減をしない限り、そんな事はありませんよ。ハハッ」
俺の質問に橘さんは笑って答えてくれ、胸を撫で下ろしたのだった……。
*あとがき*
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いよいよ最終章。よければ最後まで見守って下さると有難いです。
今後ともどうかよろしくお願いします。




