桃谷果林卒業コンサート〜永久欠番のサイリウムカラー〜
「それは甘い(果林)」「甘い(アヤ)」「甘い(舞弓)」
「「「恋のスパイス〜♪」」」
わああぁぁっ!!!
「果林ちゃ〜ん!」
「アヤちゃ〜ん!」
「舞弓ちゃ〜ん!」
ルミナス☆ミがキュートな振り付けと話題の「Spice Of Love♡」を歌い終わり、観客席がそれぞれ果林、アヤ、舞弓のイメージである水色、ピンク、黄色のサイリウムで湧いていた。
「ぐすっ……。皆さん、立派になられて……! 9年間付き添ってられた小松崎さんは感動もひとしおでしょうね?」
それを舞台袖で見守り、涙ぐむ佐々木さんにふられ、俺は頷いた。
「ええ……。何だか言葉になりません」
輝いている三人の姿を目に焼き付け、胸に熱いものが込み上げていた。
観客席の盛り上がりが少し収まった頃、ステージの上で、果林はアヤと舞弓と顔を見合わせ、頷き合うと、一歩前へ進み出た。
「最近、周りで色々な事でお騒がせして、ファンの皆さんをご心配させてしまう事があったかと思います。それでも、今日のコンサートを無事迎えられたのは、ひとえに皆さんが支えて下さったおかげです。本当にありがとうございます」
果林は観客席に向かって深く頭を下げる。
そう。卒コンの直前には本当に色んな事があった。
番組で果林がマネージャーの俺に告白し、カップル成立→婚約成立と怒涛の展開。
そして、元婚約者の美咲さんから、SNSで俺のDV疑惑をかけられ、法律事務所で彼女と対峙する事になった。
それがやっと解決したと思ったら、俺から美咲さんを奪った柏崎が、今度は本命の果林を手に入れる為、元ルミナス☆ミメンバーの絵梨花を使って策略を仕掛けて来た。
柏崎を撃退し、果林を無事救えたのはよかったが、同時に芸能界の枕営業事情を暴く事になり、大騒ぎになった。
絵梨花に対しては、果林の強い希望で起訴をしない方針となり、現在身を寄せている親元から、謝罪と感謝を述べる手紙が届いた。
絵梨花の心と体の静養の為、暫くは彼女の叔父が住むA国に行く事になるだろうとの事で、彼女の処遇に胸を痛めていた果林は少しだけホッとしたようだった。
そして、その全てを見守っていたファンは飲み込む事もあったろうし、心労をかける事もあっただろう。
それでも、コンサートチケットをキャンセルする人はほぼおらず、皆温かく応援し続けてくれ、ルミナス☆ミの活動が一区切りとなるこのコンサートを楽しみにしてくれていた。
「皆さんもご存知かと思いますが、今回のコンサートツアーを最後に私・桃谷果林はルミナス☆ミを卒業します!」
「果林ちゃん、寂しい〜」
「ううっ……。果林ちゃんっ」
涙を浮かべた果林の宣言に卒業を惜しむファンの声やすすり泣きが聞こえる。
「9年前、ある人が私をアイドルとして拾ってくれて、当時暗闇にいた私に光を与えてくれました。
私はその人のように人に元気をあげられるような人になりたいと思い、ここまで精一杯走って来ました。
実際は、ファンの皆さんに支えて頂き、仲間に支えてもらい、逆に、多くの人に助けられてばかりでした。
ステージデビューした時に、応援してくれた初めてのお客様、握手会に毎回来て頂いて、初めてのドームコンサートで泣いて下さった皆さん、私達の曲を聞いて下さった皆さん、桃谷果林は皆様に元気を、光をお届け出来ていましたでしょうか?」
「果林ちゃん! 眩しいほど輝いているぜ〜っ!!」
「ずっと元気もらってたよおぉっ〜〜!」
「ゔあぁぁ! がりんちゃ〜ん!!」
観客席は、どよめき、大量の水色の光が揺らめいた。
「あ、ありがとう……ございますっ! ぐすっ……。ずっと応援して頂いた皆さんの光になれていたなら、こんなに嬉しいことはありません!
ファンの皆さん! 9年間! ルミナス☆ミ センター・桃谷果林を応援して下さり本当に、本当にありがとうございましたっっ!!」
果林は涙をボロボロ零しながらお礼を伝え頭を下げると、観客席からは盛大な拍手が沸き起こった。
同じく涙を零しているアヤと舞弓が、泣いている果林を支えるように肩に手をかけた。
「果林ちゃんは、卒業してからも活動の形を変えて皆様の前で光を届け続けてくれると思います。今後の彼女を応援してあげて下さいねっ!」
「ア、アヤちゃんっ……」
「なお、果林ちゃんのサイリウムカラーの「水色」はルミナス☆ミで永久欠番カラーとさせて頂きます! 彼女がルミナス☆ミに遊びに来てくれた時には、皆さん「水色」で迎えてあげて下さいねっ?」
「舞弓ちゃぁんっ……」
果林は仲間の想いが詰まった言葉にまた涙し、二人を手で指し示しながら歓声と共に水色のサイリウムを振ってくれる観客達に向かって声を張り上げた。
「アヤちゃん、舞弓ちゃん、そして、新しいメンバーを迎えて新生するこれからのルミナス☆ミもどうか宜しくお願いします!!」
わああぁぁっ!!
「ルミナス☆ミ 最高っ!!」
「三人共、大好き!! 感動をありがとう〜!!」
「ルミナス☆ミの絆は永遠に不滅だぁっっ!!」
ピンク、黄色のサイリウムも交じり、会場は最高潮に盛り上がっていた。
「うっ。ううっ……! 果林さんっ……! アヤさんっ……! 舞弓さんっ……!」
「っ……」
果林達同じ位ボロ泣きしている鈴木さんから目をそらし、俺も鼻を啜っていると……。
「ぐすっ。ここで、最後の曲へ行きたいところなんですが……」
「すんっ。その前に、9年前、果林ちゃんに光を与えてくれた人、どんな人だか皆さん見てみたいと思いませんか〜?」
「え」
リハの台本になかったアヤと舞弓の言葉に、俺はピキンと固まった。
ざわめき戸惑いながらも、観客からチラホラ「え?もしかしてDTマネージャー降臨?」「ちょっと見てみたいかも?」という声が上がる中、果林が満面の笑みを浮かべてこちら(舞台袖)に向かって呼びかけた。
「あらっちゃあぁん!! ご登場願いしま〜〜すっ!!」
げっ!! 嘘だろっ?!!
「!! 小松崎さん、これ、聞いてました?」
「も、もちろん、聞いてませんともぉっ?|||||||| 「小松崎さん、どうぞ!」あ、ありがとうございます」
隣で慄いている佐々木さんにげんなりと答えながら、舞台袖に待機していたスタッフにマイクを渡され、俺は引き攣り笑いを浮かべた。
「でも、なんとなく予感はしてました。い、行って来ます……」
おいおい、果林を奪った男として、ファンの皆にぶっ殺されるんじゃねーだろな。
戦々恐々としながらも、俺は果林の待つ光り輝くステージへ向かって歩いて行ったのだった……。
*あとがき*
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