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結婚直前に婚約破棄されたマネージャーの俺が育てたアイドルに拾われ婚するってマ?   作者: 東音
第七章 育てたアイドルに魔の手が 迫るってマ?

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甘くて苦い慟哭

 その後、警察が駆け付けると、絵梨花と修羅場の真っ只中にあった柏崎は再び逃げようとして、数人の警官に取り押さえられ手錠をかけられ、先に連れて行かれた。

 その場をカメラに収めた(もちろんヨーチューブに生配信中)無原は、枕営業を受けようとしていた監督と脚本家のいる部屋にも逮捕の決定的瞬間を撮るために飛んで行った。


 警察の事実確認で、果林への暴行未遂教唆に当たる罪を犯したとされ、絵梨花も、連れて行かれる事になった。


 果林にしようとした事、柏崎との関係、今までの枕営業の事実、全てが明らかにされれば彼女の芸能人生は終わりだろう。

「果林、あんた、私を嵌めたわねっ?! 心配して相談に乗る振りしてこんなっ……!!」


 警察官に必死の形相で責め立てる絵梨花に、果林は哀しそうな顔で訴えた。


「絵梨花ちゃん、ウチ、あの時は本当に心配していたよ!


 けど、社長とあらっちゃんに、この時期、急に近付いてくる相手(特に女性)がいたら、注意しろって言われてたし、事情を話さない訳にはいかなかった。柏崎と関係がなければいいと思ってたけど……」


「いい子ぶらないで! 結局警察まで呼んで、もう私の人生おしまいよっ!!

 元メンバーにこんな仕打ちするなんて、人の心はないのっっ!? うわあぁっ……! ああぁっ……!」


「え、絵梨花ちゃっ……||||||||」


 号泣する絵梨花に、果林が涙目で青褪めているところへ、俺が割って入った。


「お前がそれを言うのか? 絵梨花?

 果林がどんな目に遭うのか分かって、監督や脚本家をけしかけていたよな?


 その時の様子は、果林の服のリボンに取り付けられたカメラを通して、俺も見ている。


 柏崎に無理矢理従わされてたなら、まだ庇うことも出来たが、あの時のお前は自分の意思で果林を陥れようとしていた。こうなった責任は自分にあると思わないか?」


「小松崎さんっ……!」


 絵梨花は俺の言葉に顔を歪めて、今度はこちらに向かって不満を喚き散らした。


「全部が私のせいだって言うの?! 私だって、最初の境遇は果林と同じで、親の助けもなく、身を売るように芸能界に入った。

 なのに、最初に入った事務所では、マネージャーの小松崎さんも、果林ばっかりひいきして、どんなに努力しても私に何もしてくれなかった!

 ちょっと愛嬌があって、甘え上手なだけで、どうして果林は、恋愛も仕事も成功して、私はこんな目に遭わなきゃいけないの?!」


 絵梨花の憎悪に満ちた瞳を痛みと共に受け止めながらも、その言い分を全て受け入れる訳にはいかなかった。


「お前がルミナス☆ミにいた頃、俺にも配慮が行き届かないところがあっただろうし、それは申し訳なく思う。


 だけど、少なくとも果林はどんな状況だろうと、友達をひどい目に遭わせるような画策はしない。


 道を踏み外したのはお前自身の意思だ。それは、誰のせいにする事も出来ないぞ」


「っ……!」


 残酷な程きっぱりと告げてやると、絵梨花は言葉を詰まらせる。


「何よっ、どう綺麗事を言っても、男は結局、あの天使みたいな外見に弱いだけでしょっ?

 果林、今はいい気になってるかもしれないけど、あんただって、腹の底は私と大して変わらないんだから!

 汚れたら、容姿が衰えたら、飽きられたら、いつか私と同じように使い捨てられる! 


 あんたなんて、アイドルじゃなくなったら、マネージャーの小松崎さんにとって何の価値もないんだからねっ!


 その時、私と同じ思いを味わうといいわ!! あっ……!」


「それ以上は暴言を吐くと、自分の為になりませんよ。後は署で事情を聞きましょう」

「痛いわねっ! 放してよっ! あんた達なんか、皆大嫌いっ! 死んじゃえっ!」


「絵梨花ちゃんっ……!」

「絵梨花っ……!」


 付き添う警察官に強引に引き立てられて行くのを、果林と俺は遣る瀬無い気持ちで見送った。


 呪詛の言葉を吐く彼女の姿は、嫌が上にも、9年前、果林を罵倒した母親の姿を思い起こさせられた。


「うっ……、ううっ……。 絵梨花ちゃんっ! 絵梨花ちゃんっ!」


 その場で泣きじゃくる果林の小さな肩に俺は手をかけた。


「果林、また、あの時みたいに、危険な目に遭わせて、辛い思いさせてごめんっ……! 芸能界がこういう残酷な場所だって分かっていて、この道を選ばせたんだ。俺がっ……」

「怖いのも辛いのも大丈夫だよっ! 今はあらっちゃんが一緒だからっ!!」

 ギュッ!

「!!」


 言うなり果林に抱き着かれ、俺は目を瞠る。


「つ、辛いのは、あらっちゃんも一緒だもんねっ……! 絵梨花ちゃんに厳しい態度を取るしかなくて、泣けないあらっちゃんの分まで今はウチが泣くっ……うっ。うあぁっ………」


「果林っ……!」


 胸に果林の熱、背中に彼女の涙がかかるのを感じながら、俺は苦くて熱いものが込み上げて来るのを必死で飲み込み、果林に言い聞かせるように囁いた。


「柏崎の悪事と共に、これから絵梨花、監督、脚本家だけじゃなく、有名人の罪が暴かれ、芸能界は大騒ぎになるだろう。

 雲行きによっては、被害者である果林や、マネージャーの俺、果てはキラ星プロそのものが理不尽に恨まれ圧力をかけられる事があるかもしれない。

 だけど、果林。例えお前がアイドルでもタレントでなくなったとしても、例え汚れても、容姿が衰えたとしても、俺はお前が好きだ!」


「あらっちゃ……、んっ……!」


 驚いて俺を青い目で見上げる果林に顔を寄せ、その桜色の唇に触れるようなキスをした。


「今日、絵梨花に呼ばれた事、相談してくれて、無事でいてくれてありがとう」


「あ、あらっちゃぁんっ! うあぁっ……、ああ〜ん!」


 そのまま深く抱き寄せて、フワフワした金髪を撫でながら、甘くて苦い果林の嗚咽を間近に聞いていた。


 しばらくして、警察官に事情聴取の為の同行を促されるまで──。




*あとがき*


 いつも読んで頂き、ブックマークや、リアクション、ご評価下さって本当にありがとうございますm(_ _)m


 柏崎と絵梨花とは決着が着きましたが、新と果林にとっては苦いものが残る結果に……。


 痛みを共有し、寄り添う二人の今後を見守って下さると有難いです。


 今後ともどうかよろしくお願いします。

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