事件だよ! 全員集合!!
突然乱入して来た無原は、突然出会したスクープのチャンスに目を爛々と輝かせ、果林に事情を聞いてきた。
「う〜ん、見たところ、完璧に修羅場ですね〜? 桃谷果林さん、事情を説明してもらえますか?」
「は、はいっ。この柏崎という人に、危ないところを助けられて、安全が確保できるまでこの部屋ににいるようにと連れて来られたんですが……。
変な薬の入ったお茶を出されて、襲いかかって来てっ……。あらっちゃんが助けてくれなかったら、どうなっていた事か……! ううっ。怖かった……!」
「果林、もう大丈夫だ!」
俺は半分演技、半分本気で震える果林をギュッと抱き締め、その後を継ぐように説明する。
「果林が危ない目に遭う前、友人から相談を受けてこのホテルに行くと聞いていました。
私も心配で、彼女に同意の上で、小型カメラをつけて貰っていたんです。そうしたら、案の定恐ろしい事に巻き込まれている事が分かり、ここまで飛んで来ました。
彼女には、客室に入る時にドアストッパーをかけて置くように言って置きましたので……」
「ああ! それで、ドアストッパーを挟んで、密室にならないようにしてあったんですね〜?」
「!! 部屋に入った時、ふらついていたのはストッパーを挟む為か! クソッ! 忌々しい小細工を……!」
「キャッ!」
ギリギリと歯ぎしりし、こちらを睨む柏崎に果林は怯え、俺は後ろ手に庇った。
「それだけお前が警戒にするべき人物だって事だろ! それで本当に襲って来てるんだから、文句の言える立場かよ!」
「ああ、それで顎と腹を一発ずつ殴られたと……。これはどう見ても、正当防衛のように思われますね〜? 柏崎さん、残念な状況ですが、今のお気持ちいかがですかぁ?」
「黙れ、この三流事務所のクソマネージャーに、三流新聞会社のクソ記者がぁっっ!!」
俺に責められ、無原に呑気にインタビューされ、柏崎は完全にブチ切れた。
「いいか? もう一度言ってやる! 柏崎グループのトップにいる親父に言えば、お前らなんていかようにもっ……」
と柏崎が言いかけた時、無原の手元を見て、奴は驚愕に目を見開いた。
「あん? お、お前、今、何をしている??」
「ああ。ヨーチューブの配信ですよ? 言いませんでした? 『世俗を離れて一介の新聞記者が思う事』というチャンネルを配信中だったんですが……。
いやぁ、見て下さい! 思わぬハプニングで、今日の視聴者数とコメントが物凄い事になってますよ〜♪」
「ぬっ、ぬわんだとおおぉ〜〜〜〜っっっ!!!!☠||||||||」
無原にスマホの画面を見せつけられた柏崎は、顎が外れそうになる程叫んだ。
そして、そんな柏崎の画像に対して、一万超えの視聴者数、「柏崎、最悪!!」「悪者ののどちんこいらね!」「イケメン実業家、性犯罪犯して人生詰む図」「かっこいいと思ってたのにこんな人だったなんて、がっかり!」などすごい勢いで流れていくコメントを確認して俺は果林と目配せをし合った。
「(上手く行ったね?)」
「(ああ、これだけ世間に広まれば、いくら親が大物でも、揉み消すなんて、簡単に出来ねーだろ!)」
「す、すぐに配信を停止しろおぉっ!!」
ダダッ!!
「おっとぉ〜、 そうは行きません!」
「ぐはっ!!」
ドガシャン!!
絶叫しながら突進してくる柏崎から無原がヒラリと身を躱すと、奴は、テーブルと共に転倒した。
「記者の勘によると、この状況になる前に、果林ちゃんが会ったという友人も気になりますね〜! もしや、何か関係が……」
呻いている奴を気にもせず、無原は嬉しげに考察を始めた時……。
バンッ!
「柏崎さん! どういう事ですか? 果林を呼び出して、枕営業させるように言ったのはあなたなのに、なんで裏切るような事をっっ!!」
「んなっ……!!☠☠」
「「「!!」」」
タイムリーにえらい剣幕で部屋に飛び込んで来た美女・原口絵梨花に、一同目を丸くした。
「あらあら、これは全員お揃いで。記念撮影でもするべきですか?」
その後ろから、カメラを担いだ撮影スタッフ……、もとい、果林のボディーガード鈴木が現れ、呑気な笑顔を浮かべたのだった……。
*おまけ話* 「鈴木一郎(偽名)の活躍 in 380号室」
「絵梨花ちゃわ〜ん♡ 一緒に遊びまちょ〜♡」
「絵梨花ちゃわ〜ん♡ まずは、お洋服脱ぎまちょ〜ね♡」
「いやぁっっ!! あんた達、やめてぇっ!!」
素行が良くないと噂されるひげ面の映画監督・丸手さん(トランクス派)、陰気な顔立ちの脚本家・瀬久さん(ブリーフ派)が鼻の下と手を伸ばし、元ルミナス☆ミでタレントの原口絵梨花さんは必死に抗っていた。
「お〜、いい構図だ! 記念撮影しましょうね!」
カシャリ!
そして、どこにでもいる顔立ちのカメラマン?(ボクサーパンツ派)は、ポラロイドカメラでその場面を撮ると、彼らの背後に近付き……。
トスッ!×2
「ぐふぁっ!?」ドタッ!
「うふぇっ!?」バタッ!
首元に手刀を浴びせると、丸手さんと瀬久さんはあっけなくベッドに崩れ落ちた。
「え? 何? いきなりどうしたの?」
二人がいきなり意識を失った事に原口さんが戸惑っていると、僕はおどけたように首を傾げる。
「さあ? 大分お酒が入ってたので、寝ちゃったんですかね? 僕も無理矢理ってのは撮る気しないんで、ちょうどよかったです。ハイ。この写真は原口さんにあげます」
僕はポラロイドカメラから出てきた写真をテーブルの上に置くと、荷物の中の寝ロープを取り出し、二人を縛った。
「ふうっ……。これで、逃げる事も出来ないでしょうし、原口さんは、被害者でもありますから、訴えられますよ?」
「あなたは一体……」
驚いている彼女に、僕はにっこりと笑いかけた。
「通りすがりのカメラマン鈴木一郎です」
偽名ですが……。(※本名は鈴木太郎)
と僕は心の中で呟く。
これで、小松崎さんと桃谷果林さんから頼まれた絵梨花さんについてのボディーガードの仕事は終わりです。
僕は後で消える役なんで、穏便に終わってよかったです。
ありふれた顔。よくある名前。名前を少し偽っているだけなのに、今回もきっと誰の記憶にも残らず身バレする事もないでしょう。
今回の件についてかなり揉めましたが、最終的に、桃谷果林さんの意思を尊重して、彼女の警護は小松崎さん、絵梨花さんの警護は僕という割り振りになりました。
それは、この緊迫した局面で、好きな人に自分を守ってもらいたいという女心も多分にあったと思いますが、僕がここにいる事は、桃谷果林さんの原口さんへの最後の思いやりでもありました。
まぁ、今の原口さんにはそれは分からないでしょうがね。
「それにしても、私を見捨てるなんて、柏崎さんひどい! 果林も許せない!」
怒りに打ち震えている彼女に、僕は服を着ながら問いかけた。
「彼らが今どこへいるか分かりますか?」
「ええ。このホテルの459号室よ! 果林を嵌めた後は、わたしが柏崎さんの部屋に行って可愛がってもらうところだったの。今から彼を問い質しに行くわ!」
「状況説明のお役に立てると思いますので、僕もお供します!」
修羅場が予想される場所へと僕達は急いだのでした。
*あとがき*
時系列をほんの少し遡った鈴木さん視点のおまけ話も付け足してみました。
読んで頂きまして、ブックマークや、リアクション、評価下さって本当にありがとうございますm(_ _)m
関係者が集まりましたが、更なる修羅場が始まるのか、いっそ皆でドリ◯を歌い始めてしまうのか?
来週も見守って下さると有難いです。




