召喚された男
「マネージャー怒り心頭パーンチッッ!!」
「げぶふうっっ!!」
ドゴオンッッ!!!!
ガタガタガターンッッ!
果林に無理矢理迫っていた柏崎のボディに渾身の一撃を入れてやり、奴が苦悶の表情を浮かべ、床に転がるのを見遣りながら……。
法律事務所で美咲さんの件を片付けたすぐ後、事務所にて、大文字社長、佐々木さんを交えて果林の安全対策会議を開いた時の事を俺は思い返していた……。
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「例の間男について、色々調べてみました。すると、果林が「初恋のあの人へ生告白♡」への出演が決まった時点で、番組の女性スタッフに番組内容についてしつこく詳細を聞いてきた奴がいたそうです」
「(株)スイートスタッフの社長の柏崎頼愛です」
机の上のタブレットにカメラ目線でニヒルな笑顔を浮かべる柏崎の画像を出し、皆に見えるような位置に置いた。
「あっ、この人、若手実業家として雑誌で紹介されているのを見た事があります。確か、新しい人材派遣の会社を立ち上げたとか……。長身に甘いマスクで、女性に人気なんですよね」
佐々木さんの言葉に、大文字社長も頷く。
「ああ。俺も知ってる。親の資産を元手に立ち上げた会社が成功したらしいが、とにかく女癖が悪いらしい。それどころか、裏で怪しい薬を扱ってるとか、たらし込んだ芸能界崩れの女を業界の有名人に斡旋してるとか黒い噂が絶えないんだよな」
「そんな噂まで……!」
流石、顔が広い社長は裏の情報に精通している。
「イケメン・甘いマスク・金持ちの実業家」美咲さんから聞いていた間男の情報とも合致する。
もし間男がそいつだとしたら、美咲さんを落とすのも、金を出すのも造作もない事だったろう。
俺は苦々しい思いでそいつの画像を見遣った。
「果林を狙うのに、距離の近いマネージャーの俺が邪魔で、精神的打撃を与えて立ち直れないようにする為に美咲さんを奪ったのかも……」
「そんな事があり得るの?! 外道過ぎるじゃん!!」
目を剥く果林に、俺は顎に指をかけ考えた。
「もしくは、以前、既に俺が奴のアプローチを邪魔をした事があるかもな……。
果林、奴の顔に見覚えはないか?」
「えっ。ううん、そうだなぁ……。そう言えば、どこかで見た事があるような……」
果林は難しい顔をして考え込んだ。
「う〜ん。といっても、パーティーでは、いつもあらっちゃんと一緒だったし、打ち上げも女の子同士で固まっていたし……。あっ!」
不意に果林は大声を出し、目を見開いた。
「ウチが20歳になってすぐの頃、グラビアアイドルのまりりんちゃんに強引に実業家の集まりに連れて行かれて、その時口説いて来た人がこんな顔だったような気がする!」
果林の答えに俺も三年前の事を思い出し、ポンと手を打った。
「ああ! そういや、そんな事あったな。あん時は酔っ払ったお前に「実業家の集まりに連れて来られて、絡まれて怖いから迎えに来てくれって」呼ばれて飛んで行ったっけ?」
「エヘヘ……。 あの時はご迷惑をおかけしました」
果林は気まずそうに笑って頭を搔き、社長と佐々木さんは顔を見合わせた。
「それなら、かなり可能性は高そうだな」
「ええ。私、美咲さんが間男と出会ったというバーへ行って、店員さんに聞き込みに行って来ます」
「佐々木さん。ぜひお願いします。
それから、もし、柏崎がほぼ間男と確定出来たとして……。
今までのやり口から言って、また誰か他の人間を使って仕掛けて来る可能性が高いです」
「果林さんも芸能人の割に交友関係は
そんなに広くないですからね……」
「ああ。近しい人間でも油断せず、警戒する必要があるな……」
「……!☠||||||||」
青褪める果林に俺は念を押す。
「とにかく、果林。何か少しでも普段と違った事があったら俺達に報告してくれ。いいな?」
「う、うん。分かったよ」
果林は神妙な顔で小刻みに頷いていた。
「あとは、仕掛けてくる奴をどうやって追い詰めるかだが……。資産家の親を持つ奴は金の力で、もみ消してくるかもしれん。学生時代の知り合いで、一人力になってくれるかもしれん奴がいるから、連絡取ってみるかな〜」
「社長は本当に顔が広いですね!」
頭の後ろに手をやるそう言う社長を俺が称賛すると、彼は苦笑いをした。
「いや、反りが合わない相手で、あんま気は進まねーんだがな? 俺ぁ、奴の行動原理は嫌と言う程知ってんだわ」
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「ぐっぞ〜!! 弱小事務所マネージャーの分際で、この俺によぐも、暴力を振るいやがったなぁ!! 柏崎グループのトップにいる親父に言えば、お前なんていかようにも出来るんだからなぁっ……!!」
「「……!!」」
奴が腹を押さえながら青筋立てて言い放った言葉に、俺も果林も緊迫したところ……。
「おやおやぁ〜?? せっかく休暇を取って、『世俗を離れて一介の新聞記者が思う事』のSNS配信をしていたというのに、隣が騒がしいですね〜〜!」
「「「?!」」」
この場の空気をぶち壊す、素っ頓狂な声が部屋の外で響いた。
コンコンコン!
「もしもし〜! 中の方、うるさいですよ? あれ? ドアストッパーがかかってて、ドアが開いちゃう……! 様子がおかしいので、開けてみますねぇ〜〜」
ガチャッ。
実況中継のような声と共にドアが開き、鋭い瞳の50代位の男性が俺達を見て目を丸くした。
「あれあれ〜っ!! ルミナス☆ミの桃谷果林ちゃん! 彼女を庇うような婚約者のマネージャーの小松崎新さん! 今正に殴られたように床に転がるイケメン実業家の柏崎頼愛さん!! この三人がホテルの部屋に集結してるとはっ!! これって一体どういう状況でしょうか〜〜っ?!✧✧」
「お、お前はっ……!!」
「「!!(ほ、本当に来た……!)」」
スマホの画面をこちらに掲げて、満面の笑みで声を上げたのは、ドグマ新聞の無原記者だった……。
*あとがき*
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