元メンバーの告白
それから、ウチは雑誌のインタビューとラジオ番組の仕事を終え、渡されたメモに書かれていた場所、トリプルスターホテルの380号室へ向かったのは、夜の10時を回っていた。
「果林、来てくれたの? そこにでも掛けて?」
絵梨花ちゃんは、広いスイートルームでウチを嬉しそうに迎えてくれ、高級感のある肘掛け椅子に座るよう勧めてくれた。
「ありがとう……」
そして、沈黙……。
ウチが取り敢えず当たり障りのない話題を探していると、彼女はおもむろに話を切り出した。
「何から話せばいいのか分からないけど……、そうね。キラ星プロを出て、今のドロNUMAプロに入ったものの、最初はなかなか仕事が貰えなくてね? でも、ある人が業界の有名人を紹介してくれるようになって、それからは番組や映画で役がもらえるようになったの」
「絵梨花ちゃん、それって、もしかして……」
ウチは嫌な予感にドキドキしながら問うと、絵梨花ちゃんは頷いた。
「ええ。あんたの想像通りよ。まぁ、俗に枕営業と言われる奴よ。
最初は自分を安売りするようで嫌だったけど、皆やってる事だしね? 綺麗事だけでのし上がっていける世界じゃないわ」
「……!! 絵梨花ちゃん……! ||||||||」
ウチよりも常に先を歩く芸能界の先輩のように思っていた彼女は、身を削って仕事を取っていた。
さっき、廊下で様子がおかしかったのは、心も体も疲れ切っていたせい……?
淡々と話す絵梨花ちゃんに、ウチは心臓がギュッと握られるように痛んだ。
ガタンッ!
「何よ、その目! 同情なんか真っ平よ! それでも、ずっと弱小プロで守られていたあんたなんかより、売れてるんだからね!」
絵梨花ちゃんは激昂して席を立った。
「それに、言って置くけど今日のは、ここにおびき寄せる為の演技だから!」
「え?」
怪訝な顔のウチに絵梨花ちゃんは歪んだ笑みを浮かべた。
「あんたの婚約祝いにゲストを呼んであげたのよ? 皆さん、もう出て来ていいですよ〜?」
バッ! ボフッ!
「「「ジャジャーン!」」」
「キャアッ!!」
部屋のベッドから、布団をはぎながら、パンツ一枚の男性が三人飛び出して来て、ウチは悲鳴を上げた。
「こんな格好だけど、有名映画監督の丸手屑彦で〜す♡」
「こんな格好だけど、売れっ子脚本家
瀬久原介でーす♡」
「こんな格好だけど、カメラマンの鈴木一郎で〜す♡」
「……!!? あなた方、一体どうしてここに……|||||||| 絵梨花ちゃん?」
素行が良くないと噂されるひげ面の映画監督(トランクス派)、陰気な顔立ちの脚本家(ブリーフ派)、そしてどこにでもいる顔立ちのカメラマン?(ボクサーパンツ派)の出現にウチは後退ると、絵梨花ちゃんは高笑いをした。
「あははっ。皆さん、あんたと親密になって、お仕事したいんですって! 結婚後に仕事がなくなる心配がなくなってよかったじゃない?」
「絵梨花ちゃん、騙したのっ? ひっ!」
絵梨花ちゃんを睨み、すぐに部屋の外へ走ろうとしたけれど、丸手監督と瀬久脚本家が迫っていた。
ガシッ✕2
「果林ちゃん、逃げちゃダメだよ?」
「果林ちゃん、一緒に楽しい事しよう?」
「では、僕は皆さんのメモリアルシーンを撮影するとしましょうか?」
男達に両腕を掴まれ、カメラを向けられ、私は慄いた。
「絵梨花ちゃんっ! お願い! こんな事、やめて! 助けて!!」
必死に叫ぶ私に、絵梨花ちゃんは邪悪な笑みを浮かべた。
「ふふっ。じゃあね、果林! 元メンバーのよしみで、小松崎さんには秘密にしておいてあげるわ。逆に彼も仕事が増えて喜ぶんじゃないかしら? ごゆっくり〜」
バタン!!
「っ……!||||||||」
そう言って、絵梨花ちゃんは部屋の外へ消え、私が絶望を噛み締めた。
「さぁ、果林ちゃん、ベッドへ行こうか〜?」
「果林ちゃん、優しくしてあげるからね〜?」
「撮影もばっちりですよ?」
「いやぁっ!! 放してぇっ!!」
男達に声をかけられ、必死に抵抗しようとしていると……。
『おい、ここで何をやっているんだ?』
『えっ!? なんで、あなたが……』
部屋の外で、絵梨花ちゃんが誰かと会い、戸惑ったような声を出した。
ガチャッ!
!!
そして、部屋のドアが開き、見たことのある男性が姿を現したのだった……。
*あとがき*
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