元メンバーとの対峙
F局 スタジオにて──。
人気クイズ番組「Qリーグ」収録中、司会の人気漫才コンビ「大ボケ小ボケ」の大山さん&小山さんは、代わる代わるに大声を張り上げた。
「おおっ、青チーム赤チームここまで9ポイントずつの大接戦だぁっ! ここへ来て、青チームの解答者は〜?」
「ルミナス☆ミ 桃谷果林ちゃんだぁっっ!!」
「どんと来いですっ!!」
解答席に立ち、ガッツポーズを取るウチ。
「対して赤チームの解答者は〜?」
「おおっ。なんと元ルミナス☆ミ メンバーの原口絵梨花ちゃんだぁっ!!」
「当然勝ちますっ!!」
ボブカットの髪を掻き上げてルミナス☆ミ初代メンバーの絵梨花ちゃんは挑戦的な笑みをこちらにこちらに向けて来た。
「ルミナス☆ミ 現センター(卒業間近)VS ルミナス☆ミ 初代メンバー(他の芸能プロに移籍)の因縁の対決ぅっ!!」
「これは目が離せませんねぇっ!!」
睨み合うウチと絵梨花ちゃんを前に、大山さんと小山さんは顔を見合わせた。
「では、勝敗を分ける運命の第11問は動物クイズ!!
タツノオトシゴは珍しい繁殖方法を取りますが、それはどんなものでしょうか?」
ピンポンッ!
「早押しで解答権を得たのは果林ちゃんだぁっ!」
「やったぁ!」
「っ……!」
持ち前の反射神経で早押しを制したウチは、悔しげな絵梨花ちゃんを横目に自信満々に解答した。
「タツノオトシゴは産卵の時、合体してオスがメスの一部になるっっ!!」
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「しょぼん……。チョウチンアンコウの生態と間違えた。ウチのせいで青チーム、負けちゃったよぉっ……。 んん?」
「っ……」
収録が終わり、ウチがトボトボ控え室へ向かって歩いていると、通路の途中で女の子が蹲っていた。
「あの、大丈夫で……、……! 絵梨花ちゃん!?」
「! ぐすっ……、……!!」
具合が悪いのかと近寄って声をかけてみると、それは、さっき収録で勝敗を争った絵梨花ちゃんで、彼女はウチを見て目を見開くと、赤くなった目元を拭って立ち上がった。
「な、なんだ。果林じゃない! さっきの解答は何よ? いくら可愛いおバカキャラを演じたいからってあれはないでしょ? ダッサ!」
「ち、ちがっ!! /// あれは本気で間違えたのっ!」
バカにされ、ウチは赤くなって言い返した。
(ちなみにさっきのクイズの答えは「オスが妊娠・出産する」あの後、絵梨花ちゃんは見事正解を出して、相手チームが勝ちました。トホホ……)
「あ、そうなの? ま、あんた元々教養がなかったもんね。 じゃ、失礼。うっ……!」
絵梨花ちゃんは、そう言ってウチに背を向けて歩き出したけど、数歩でよろめいた。
「大丈夫? 具合悪いの? マネージャーさん呼ぼうか?」
ウチは慌てて絵梨花ちゃんを支え、バッグから携帯を取り出したところ、絵梨花ちゃんはプイッとそっぽを向いた。
「い、いいわ。大した事ない……」
そう言いながらも、いつもの覇気がない彼女に、体よりも心の問題なのかもしれないと思った。
目が赤かったし、さっきは泣いていたのかな……?
「絵梨花ちゃん、何か心配事でもあるの? ウチでよかったら話聞くよ?」
「……! 何言ってんのよ。私はキラ星プロを裏切って移籍して、もうあんた達の敵なのよ?」
「そんな風には思えないよ。絵梨花ちゃんは三年間一緒に苦労を共にした仲間だし、今は会社は違えど、同じ年頃のタレントじゃん。ウチに出来る事があるなら、力になりたいよ」
「へえ。余裕あるのね。長年片想いしていたマネージャーと婚約まで行って幸せの絶頂のアイドル様は元メンバーの不幸話を聞くボランティアぐらいわけないって事?」
「絵梨花ちゃん……! ウチは……、??」
捻た物言いをする絵梨花ちゃんに窘めようとすると、彼女はまたふっと疲れた表情に戻り、ウチにメモを渡して来た。
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トリプルスターホテル
T都 S区 横島田 ◯−□
380号室
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メモにはそう書かれていた。
「ここでは話せないわ。今、色々あってホテル暮らしをしているの。メモに書いてある場所に泊まってるから、今日の21時以降よかったら話を聞いてくれる?」
「絵梨花ちゃん……!」
「私がこんな状態になってる事は誰にも知られたくないの。私と会う事は小松崎さんはもちろん他の人に内緒にしてね。お願いよ……」
ウチが驚く中、絵梨花ちゃんはふらつきながらその場を去って行った。
*あとがき*
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