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結婚直前に婚約破棄されたマネージャーの俺が育てたアイドルに拾われ婚するってマ?   作者: 東音
第七章 育てたアイドルに魔の手が 迫るってマ?

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心に引っかかっている人

 9年前 デビュー前、ルミナス☆ミ メンバーでダンスの自主練をしていた時の事──。


「元気出してね マイダーリン〜♪

 君は僕の……あっ!」

 ドンッ!

「きゃっ!」


 テンポについて行けず、次の立ち位置への移動が遅れて左隣から移動して来たアヤちゃんとぶつかってしまい、ウチは慌てて謝った。


「ごめん! アヤちゃん!」

「ううん。大丈夫だよ? 私も周り見えてなくてごめ〜ん」


 ゆるふわのロングヘアーを揺らして首を振り、アヤちゃんは笑顔を浮かべてそう言ってくれたけれど、右隣の絵梨花ちゃんは、顔を顰めた。


「ちょっと! あんたら、真面目にヤル気あるの? 特に、果林! センターのくせに振り付け一人だけ遅れてるし、高音で音程外れるし、終わってるよ!」


「……! ご、ごめん……」


 絵梨花ちゃんに言われて、ウチは唇を噛み締めた。

 彼女の言う事は、正しい。

 この三人の中でダンスも歌も未経験なのはウチだけで、明らかにパフォーマンスは見劣りする。


 なのに、大文字社長からセンターを指名されたのは何故かウチ。

 デビューステージまでにもう時間がないのに、なかなか上達せず、焦ってしまっていた。


「絵梨花ちゃん、そこまで言わなくても……」


 アヤちゃんは困った顔で絵梨花ちゃんを宥めるように言ったとき……。


 コンコンコン! ガチャッ。


「ジャッジャーン! お前達頑張ってるかぁ? スポドリの差し入れだぞぅ!」


「「小松崎さん……」」

「あらっちゃん……」


 あらっちゃんが全く空気を読まずに、レッスン室へ入って来てウチ達を見て目を丸くした。


「ん? お前達どした〜?」


        ✽


 差し入れのスポドリを飲みながら休憩を取っている最中、絵梨花ちゃんは、あらっちゃんの腕を取り、アピールしていた。


「どうして果林がセンターなんですか?ダンスも歌も上手い私の方がよっぽど、センターに向いてるじゃないですか?」


「うん。絵梨花の実力は社長も認めてるよ? だからルミナス☆ミのリーダーは君だろ? いつも皆を引っ張っていってくれて感謝してるぞ?」


「小松崎さん! 私はリーダーじゃなくて、センターになりたいんです。 小松崎さんからも、社長に勧めてみて下さいよ。ね? お・ね・が・い♡ 新さん」

 ふにゅっ!


「うをっ!// 色仕掛けやめい!」


「ぐ、ぐぬぬっ(絵梨花ちゃん、あらっちゃんにベタベタしないで〜! あらっちゃんもロリコンじゃないって言ってたくせに、鼻の下伸ばして〜)」

「ほほう……?(果林ちゃんは、小松崎さんの事を……? 分かり易いな〜♪)」


 絵梨花ちゃんが早熟なお胸をあらっちゃんの腕に押し付けているのを、ウチはアヤちゃんと少し遠くから見守り、まだ成長途中のささやかな胸を見下ろし、肩をプルプルさせるしか出来なかった。


「まぁまぁ! 気が早り過ぎだ、絵梨花」

「あっ。小松崎さん!」


 デレデレしていたように見えたあらっちゃんは、絵梨花ちゃんを引き離し真剣な顔で、言い聞かせた。


「最初の決定はどうあれ、ファンの反応でセンターは変わっていくだろうし、その座が欲しいなら実力で勝ち取って行けばいいだろう?」

「でもっ……」


 絵梨花ちゃんはまだ不服そうに顔を顰めていたけど、あらっちゃんは、ウチとアヤちゃんにも目を向けた。


「お前達も、今はそれぞれの立ち位置で自分達の魅力を最大限引き出すパフォーマンスを見せる事だけを考えてくれ。癒し系のアヤは、焦らず笑顔を忘れずにな!」


「は、は〜い」


 アヤちゃんは困ったような笑みを浮かべて返事をする。


「果林は……」


 ウチの事にも言及され、ビクッと肩を揺らした。


 センターなのに、ダンスもダメ、歌もダメ、笑顔もうまく作れない。


 ダメ出しされて当然だ。きっとあらっちゃんもウチに失望している。


 何を言われるかと身を固くしていたけど……。


「果林はどうしたって天使なんだから、もっと自分が可愛いと言う事を自覚して、自信を持ってパフォーマンスをやってみろ!」


「へっ///」


 その言葉にウチは目をパチクリさせた。


「そ、それだけ? もっと具体的なアドバイスはないの?」


「ああ。果林は自分の可愛いさを知って、ステージに立てば最強だ。実力は後から付いてくる。騙されたと思って俺の言葉を信じてみろ! 金髪と青い目、すらっとした肢体、果林はめちゃんこスーパー可愛い!! 素敵の固まり! 誰もが一目見ただけで君を好きになる!! 絶対だ!!」


「はわっ! はわわわっ……! ////」


 あらっちゃんに怒涛の如く褒め言葉を送られ、ウチがその場に崩れ落ち、真っ赤になっていると……。


「ぷっ。あはは! 小松崎さん、何ですか?それ〜」


 絵梨花ちゃんに大笑いされ、ウチは恥ずかしくなった。


 ホラ、あらっちゃん、突拍子もない事言うから、笑われちゃったじゃん。


「そんな事でパフォーマンスが良くなったら苦労しないでしょ。いくら褒めるところがないからってそれはないわぁ」

「……!」

「え、絵梨花ちゃん、言い方〜」


 絵梨花ちゃんの言葉に、ウチは現実に引き戻され、アヤちゃんが困ったように窘めた。


「いんや? 俺は思ってる事しか言ってねーし、自信を持つ事は何より大事だぞ? 果林、本当に試してみろよ?」


 あらっちゃんは、絵梨花ちゃんに言われた事を全く気にせずウチに笑いかけ、親指を立てた。


 もう、優しい言葉をかけてくれるのは嬉しいけど、あらっちゃん。


 絵梨花ちゃんの言う通り、そんな事でパフォーマンスが良くなるワケないと思うな〜。


 自分が可愛いなんて思ったからって……。


『金髪と青い目、すらっとした肢体、果林はめちゃんこスーパー可愛い!!』


 か、可愛いなんて、そ、そんな事言われたからって……///


 ウチはその言葉とあらっちゃんの顔を思い浮かべ、顔が熱くなった。


「元気出してね マイダーリン〜♪

 君は僕の天使〜僕の太陽〜♪ 暗闇照らす眩しい光〜♪」


「あれ? 果林ちゃん? さっきより高音綺麗に出てない? 体の動きもさっきより良くなってるような……」

「え? 本当?」

「っ……!」


         ✽


    

 『素敵の固まり! 誰もが一目見ただけで君を好きになる!! 絶対だ!!』


 そ、そんなベタ褒めされたからって……//

 パフォーマンスに影響なんて……。


「僕はずっと君の側に〜〜い・る・よ〜〜♪」


 わああっ!!


「あのセンターの子、めちゃめちゃ可愛い!」

「まだ、動きが荒削りだけどなんか目が離せねー!」

「これから来る子かな〜?」


 イベント会場のメインライブの前座で、初めてアイドルグループ ルミナス☆ミとしての、ファーストステージ。


 パフォーマンスを喜んでくれるお客さんの声を聞き、高揚した気分になりながら、ウチは思った。


 いや、あらっちゃんの言う事は正しかった!

 影響アリアリじゃん!!

 

 どうやら、ウチは自分で思ってるより単純な子だったみたいだ。


「果林ちゃん〜! 本番すごいよくて、こっちもやりやすかったよ〜!」

「まぁ、前よりは幾分マシになったかもね? 次は負けないけど!」

「アヤちゃん、絵梨花ちゃん〜!!」


 アヤちゃん、そして絵梨花ちゃんにまでそう言ってもらえて、ウチは目を潤ませた。



「だから、大丈夫って言ったろ?」


 舞台袖で迎えてくれたあらっちゃんのドヤ顔がちょっと癪だけど、ウチは口パクでメッセージを伝えた。

「◯◯◯◯」

「ん? 何て?」


「ふふっ。“ありがと”って言ったんだよ」


 本当は“だいすき”って言ったんだけどね?


 ウチはその時確信したんだ。


 世界中でたった一人大好きな人、あらっちゃんが私を見て「可愛い」と言ってくれるなら、ウチはどこまでも輝けるっ!


 そして、それからウチはずっとセンターの座を守り続けた。


「私の方がずっと実力があるのに」っていう絵梨花ちゃんの不満や憤りは隣で痛いほど感じていた。


 けれど、それでも、あらっちゃんにど真ん中で見てもらえるこの立ち位置を譲る事は出来なかったんだ……。


 ✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽

そして現在いま──。


「果林、一応伝えて置くけどな? 今度出演予定のクイズバラエティ「Qリーグ」なんだが、絵梨花が相手チームで出演するそうだ」


「……!」


 事務所でスケジュールを確認する時あらっちゃんは言いにくそうに教えてくれた。


「まぁ、果林はいつも通りにやってくれればいいからな?」


「うん。分かってるよ。あらっちゃん……」


 黒髪に意思の強い瞳を持つ美少女を思い浮かべ、複雑な気持ちになりながらも、ウチは笑顔で頷いたのだった……。


*あとがき*


 いつも読んで頂き、ブックマークや、リアクション、ご評価下さって本当にありがとうございますm(_ _)m

 

次週は、元メンバー絵梨花と対峙する話をお届けしていきたいと思います。


 今後ともどうかよろしくお願いします。

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