特徴のないボディーガード
「ひっ! ストーカーっ……!?||||||||」
「誰だ、お前! 勝手に動画を撮りやがって!」
突然ひょろっとした特徴のない顔の男が現れ、カメラを向けて来たので、俺は
果林を庇う位置に立ち、大声で叫んだが……。
「ええ! 何で、小松崎さんまで警戒してるんですか?」
何故か男は心外だという表情で(と言っても、特徴のない顔に変わりはないのだが……)俺に訴えかけて来た。
「一昨日、写真付きの契約書渡したでしょう?」
「ん? 契約書……?? あ!」
俺は思い当たる事があり、ポンと手を叩いた。
「そう言えば、前の仕事が終わり次第、すぐに果林のボディーガードに付くようにお願いしていたんだっけ。(あれ?でも、フツメンと言われる俺以上にどこにでもいる顔で、よく思い出せないぞ……。名前は確か……)えーと……あなた、鈴木一郎さん?」
「鈴木太郎ですが、ボディーガードの依頼を受けた者で間違いないです」
「あっ、大変失礼しました!」
記憶から引っ張り出して来た名前すら違っており、慌てて謝ると、鈴木太郎は苦笑いで手を振った。
「いえ、顔だけでなく名前もありふれていますから、なかなか人に覚えてもらえないのはしょうがないです。まぁ、隠密行動には逆に便利なんですが……」
「えっ……。って事は、この人私のボディーガードなの?」
果林は青い目をめいっぱいに見開いた。
「な、なんで、ボディーガードの人が勝手に動画とか撮ってんのようっ……?」
「小松崎様から何かあれば映像に残して置くように言われておりましたので、海辺で感動のラブシーンが始まった時、これは撮らねばと思いまして……!」
「そういう意味じゃねーんだけどな……」
ドヤ顔の鈴木太郎に、俺はタラリと汗を流し、果林はブチ切れた。
「もう、キラ星プロで頼むボディーガードさんは、何でこんな変な人ばかりなのっ! この前ストーカー対策で雇われた人は、天井から急に忍者みたいに現れて、心臓止まるかと思ったんだからね!」
「ま、まぁまぁ、果林、仕事自体は完璧にこなしてもらったんだからよかったじゃないか! 社長から紹介された会社から派遣されるボディーガードさんは、確かに個性強過ぎるけど、腕は確かなんだぞ?」
怒る果林を俺が宥めていると、こちらの空気などお構いなしに鈴木太郎は、嬉しげに指を鳴らした。
「ああ、忍者みたいと言うと、ウチの会社の服部サスケ先輩ですね? 先輩レベルになると姿すら現さずに案件が片付いてる事も多いので、彼に会えるなんてラッキーでしたね!」
「そんな、ガチャのレアキャラみたいな……」
「ラッキーな気持ちにはあまりなってないんだけどぉっ……」
興奮したように同僚について語る鈴木太郎に、俺と果林はちょっとついていけなかった。
「まぁ、ひっそりとボディーガードしてくれるのは有難いですが、録画は緊急時のみで大丈夫ですからね」
俺が一応釘を刺して置くと、鈴木太郎は笑顔で聞き入れてくれた。
「了解しました。ご安心下さい。データは、今、小松崎様にお送りしてからすぐに消去致します。SNS等で拡散する事はありませんので!」
「ああ、そうして下さい」
「!」
そうして、データを送ってもらった後、鈴木太郎は引き続き遠くから警護をするとあっという間にどこかへ消えた。
「本当に気配を消すのが上手いな……」
「あらっちゃん、あらっちゃん……」
俺が感心していると、果林がツンツンと俺の服の裾を引っ張って来た。
「ん? どした? 果林?」
「さっきの動画さ、再生してみよ?」
「ぇ゙……」
✽
『果林はいい女になったな……。お前に何も望まないと思っていたけど、今はちょっと違う。
婚約者として過ごす内、お前は俺にとって側にいて欲しい大切な存在になっていってる……』
「きゅううんっ……♡♡」
「か、果林、めちゃめちゃ恥ずいんだが……////(俺ぁ、なんてくさいセリフを吐いてしまったんだぁっ!)」
俺のスマホに映し出される動画に果林は悶え、俺は顔に手を当てた。
「もう3回目だぞ? もう、これで終わりにしよう?」
「やだ。もっかい聞く!」
「ええ!」
かくして、残り少ないデートの時間、オレンジだった空が濃い夕闇に染まるまで……、砂浜に果林と寄り添い、さっき演じた二人のメモリアルシーンを何度も視聴する羽目になるのだった……。
*あとがき*
いつも読んで頂き、ブックマークや、リアクション、ご評価下さって本当にありがとうございますm(_ _)m
9年間、そして現在の絆を確かめ合った新と果林ですが、またも間男の陰が忍び寄る次週も見守って下さると有難いです。
今後ともどうかよろしくお願いします。




