アイドルとマネージャーの海辺デート〜商店街編〜
海辺の昭和のレトロ感漂う商店街の一角で──。
「ハイよ、金髪の可愛いお嬢さん! マグロカツサンド、お待たせ〜!」
「ありがとう! わぁっ! すっごいボリューム!」
鮮魚店のおばちゃんからマグロカツが、パンからはみ出しそうになっている御当地グルメを受け取り、果林はサングラスの向こうで青い目を輝かせた。
あれから、順調に車を走らせ、例の海岸にも近いK県Z駅に車を止め、俺と果林は商店街を歩き回る事になった。
いわゆる海辺デートというやつだ。
白のワンピースの上に、黒系のカーディガンを羽織り、芸能人らしく、黒縁眼鏡に帽子を身に着け、目立たない格好になっている筈の果林だが……。
そのサラサラの金髪と内から滲み出る美人オーラは隠し切れないようで、鮮魚店のおばちゃんに容姿を指摘された事に、本人とバレないか慌ててつつ、「流石、果林は地味にしてても可愛いぜ!」と得意になるという、とても複雑な感情になっていた。
「ぷふーっ。あらっちゃん、面白い顔〜!」
顔に出ていたのか、果林に笑われた。
「あらっちゃんも一緒に食べよ? ハイ、一口かじって?」
「ええ? いや、俺はいーよ」
目の前にマグロカツサンドを差し出され、慌てて断るも……。
「遠慮しないで。 あらっちゃんも美味しそうって言ってたじゃん! 食べ物シェアするのってなんかカップルっぽくてよくない?」
「分かったよ。はむっ。あ、うめーなコレ……!」
再度果林に勧められ、マグロカツサンドにかぶりつくと、サクッとした衣からジューシーなマグロのうまみが染み出し、俺は頬に手を当てた。
「はむっ。本当だ。マグロエキスうま〜♡」
果林もマグロカツサンドをかじり、幸せそうな笑顔になった。
金髪に碧眼、天使のような整った美貌の人気アイドルにも関わらず、それを鼻にかけず、庶民的な感覚を持ち、誰にでも気さくな態度で接するところが彼女の魅力で、色んな番組に引っ張りだこだった。
今度、食べ歩き番組の仕事を取ってきてもいいかもしれないな。
よし、グルメレポーターとしてコメント力を鍛えるため、色んな店を回ってみるか?
なんて考えていると……。
「あ。今、あらっちゃんから仕事モードの波動を検知しました!」
隣を歩く果林に指摘され、俺はギクリとした。
「な、なんで分かった?」
「そら分かるよ! 今、あらっちゃんの目が銭マークになって、キュピーンって光ってたもん」
「銭マーク……! マジか!」
衝撃を受ける俺に、果林は人差し指を突き出して主張して来た。
「今はデートなんだから、マネージャーとアイドルという事は一旦忘れて婚約者モードになって下さい!」
「ああ、すまん、果林!」
果林に怒られ、尤もだと謝った。
そう言えば、歴代の彼女から振られた理由は、大体彼女より仕事(バイト/サークル)を優先させた事によるものだった気がする。
美咲さんも、婚約破棄の時、俺の経済力と共に忙しくて会えない不満を口にしていたよな。
今日なんて、たった一日、しかも細切れ数時間のデートすら、相手と向き合えないとは、俺は婚約者としてなんてダメな奴なんだ。
「はぁ。俺が今までフラれ続けた理由が分かった気がしたわ……。果林、本当に俺なんかでいいのかよ?」
ため息をつき、更に情けない事を聞いてしまう俺に果林は大きく頷いた。
「ん! 悔しいけど、ウチは今お仕事と歴代彼女で頭がいっぱいのあらっちゃんが大好きなんだからしゃーなし!」
「……!」
再び心を読まれギクリとする俺に、果林はいたずらっぽい笑顔を向けて宣言した。
「言っとくけど、ウチからは絶対離れてあげないからね! 他の事を考えている時はイヤでもウチの事を考えるように仕向ければいいんだし!」
ギュッ。もにゅっ♡
「おおぅっ……♡//」
果林に急に抱き着かれ、たわわな胸を押し付けられ、思わず嬉しそうな声が出てしまった。
「ふふっ。あらっちゃん、ウチの事で頭いっぱいになった? 次は、向こうのお店でジェラート食べに行こー!」
「わぁっ。引っ張るなよ、果林!」
その後、育てたアイドルとマネージャー、そして、今や婚約者同士の俺達は、海辺の商店街を蛇行した軌道を描きながらよたよたと歩き回ったのだった……。
*あとがき*
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