立場逆転と去就する想い
「はい。では、訴訟はなしの方向で……。古丸美咲様の慰謝料については、お父様が退職金から立て替えられるという事で宜しいですね」
「ハイ、了解ですっと! こっちからはこの案件について解決済みの声明出しときますわ。きっちり解決した方が再就職にも有利だと思いますよ? では、これにて」
「「ハイ……|||||||| ありがとうございます……」」
南村弁護士の確認に、大文字社長はホクホクの笑顔で、美咲さんの両親は死人のような顔色で応じた。
結局世間体を気にした美咲さんの両親はは、回収した現金との慰謝料差額分、七百万円を支払う事に同意し、示談ですむ事になった。
ほぼ貯金がない美咲さんに代わって、慰謝料を父親が全額立て替える事になり、彼女自身には何も痛手がないように思われたが、話し合いが終わり、会議室を出た途端……。
「美咲! 尻拭いをするのは、これで最後だぞ! 家族の面汚しであるお前はこれを機に勘当だ!」
「美咲! もう家族じゃないんだから、荷物を纏めて家から出て行ってちょうだいね!」
「そ、そんな! ううっ……、お父さん、お母さん、ひどいわ!!」
両親から勘当され、家を追い出される事になり、美咲さんは涙を流していた。
「あ、新さん! 私を助けて!! さっきは、私が『これ以上不幸になるのを望みません』って言ってくれてたじゃない!」
俺にまで縋って来る彼女に俺はニッコリ笑って言ってやった。
「ああ、そうは言いましたけど、それは俺の役割じゃないんで!
美咲さん、さようなら。今の雀の涙の持ち金で結婚出来る程度の、あなたにお似合いの相手が見つけかるといいですね?」
「っ……!!」
一瞬美咲さんに蔑むような笑みを浮かべ、俺は果林に向き直る。
「さっ。果林、行こうか」
「ええ。自業自得で家も家族も最高の婚約者も失った人は放っておいて行きましょうか」
俺は果林の肩を抱いて歩き出した。
呆然としている美咲さんを残して……。
✽
「た……。新? 新ってばよ!」
「あっ。すみません。何ですか、社長?」
事務所へ向かって車を走らせている途中、助手席の大文字社長に呼びかけられていた事に気付き、俺はハッとして問い返した。
「いや、例のボディーガードの件だが、彼は何日から動けそうかって聞いてたんだが……」
「あ、ああ! 明後日の午後から入れるそうです」
「了解! 新、ボーッとしてんなよ? ハハッ。元婚約者との一件が片付いて気が抜けちまったかぁ?」
「そ、そうかもしれませんね……。ハハ……」
大文字社長に笑われ、俺は頭を掻く。
そうだ。しっかりしろ、小松崎新! 正体不明の間男の件もあるし、まだ気を張っていなきゃダメだろう!
美咲さんにはこれ以上ないぐらいにキッチリざまぁ仕返してやったじゃないか……!
婚約破棄から美咲さんやその両親に対して今まで感じていた怒りや悔しさはかなりの部分解消されたように思う。
だけど、まだすっきりしない。
まだ残っている、この重苦しいモヤモヤは何なんだ?
自分で自分の気持ちが理解出来ず、戸惑っていると……。
「あらっちゃん、あらっちゃん……」
後部座席から果林に呼ばれた。
「何だ、果林? ドリンクなら、隣の席に置いてある保冷バッグの中から適当に……」
「違う。そうじゃなくて……えと……」
果林は否定して、少し躊躇った後……。
「半日ぐらいでもスケジュール空いてるとこあったらさ、デート……しよ?」
「え」
思わず後部座席を振り返ると、白い頬をピンクに染めて上目遣いでこちらの出方を窺っている金髪碧眼の完璧美少女が目に入り、「コラ! イチャイチャは車を降りてから! 運転中よそ見すんな!」と社長に怒られたのだった……。
✽あとがき✽
新年明けましておめでとうございます!
今年もどうか宜しくお願いしますm(_ _)m
※おみくじをひいた果林をイメージしたAIイラストをみてみんに投稿していますので、よければご覧下さいね。
https://42432.mitemin.net/i1073483/
今回、5章最終話になりまして、次話から6章 育てたアイドルと甘々デートするってマ?に入ります。
トラブルを解決し、元婚約者にざまぁ返ししたものの、完全にはすっきりしない新ですが、果林とのデートを楽しむ事が出来るのか?見守って下さると有難いです。




