その出会いは運命だったってマ?①《桃谷果林視点》
✽まえがき✽
24〜28話、過去篇《果林視点》を5話分同時投稿させて頂きます。飛ばしても話の流れが分からなくなる事はないかと思いますが、ご興味ある方はご都合のよい時にご覧頂けると有難いです。
今後とも宜しくお願いしますm(_ _)m
運命の出会いは、ウチが14の時。梅雨が明け、本格的な暑さが始まった7月上旬のある日の夕方──。
「……。お腹痛いって言って帰っちゃお〜かな……」
当時のクラスメートのミアちゃん、ココちゃんに他校の男子とのカラオケに誘われ、彼女達がトイレへと消えた途端、噴水広場のベンチで呻くように呟いていると……。
「やぁ! 君、中学生? 可愛いね! 芸能界とか興味ない?」
スーツ姿の新入社員っぽい20代位の男の人に声をかけられた。
中肉中背、ちょっと筋肉質、短髪、フツメンだけど、意思の強そうな太い眉。
一見好青年ぽく見えるけど、怪しさ満載の笑顔でそんな胡散臭い話を持ちかける彼に、ウチは最大限の警戒をする事にした。
「はあ? おじさん、誰? それ以上近付いたら通報しますけど!」
緊急通報の番号の表示されたスマホの画面を見せてやると、彼は流れるような土下座をして泣き出した。
「ううっ。勘弁して下さい! 今日、通報されそうになるのこれで4回目なんで!」
いや、一体何なのこの人??
ウチの人生を大きく変える事になる、初恋の人、あらっちゃんとの出会いだった。
✽
彼の名は小松崎新。
彼はキラ星芸能プロという結構まともな芸能プロダクションのマネージャーで、ウチにスター性を見出してアイドルとしてスカウトしたいと熱弁を振るって来た。
う〜ん。ドラマチックな話だけど、芸能界とか興味ないし、ウチには無縁の世界だと正直思った……。
けど、同じ年頃の男子達やお母さんの男と違ってウチを下心のある目で見る事なく、高く評価してしてくれる事は嬉しかったし、他校の男子達とのカラオケを断る口実にもなる。
「俺の事、利用してくれて構わないぜ? お茶ぐらいなら奢るけど……」
「っ……」
彼・小松崎新さんの口車に乗せられる形で、もう少しだけ彼の話を聞いて見る事にしたんだ……。
✽
家でも学校でも息を詰めるように過ごしているウチにとって、ミアちゃん、ココちゃんに誘いをハッキリ断るのも、男の人と二人きりでカフェに行くのも、初めての経験だった。
ウチはパフェを奢ってもらう事になり、向かいの席の小松崎さんはコーヒーを頼んだ。
喜怒哀楽がハッキリして、コミカルなところもあるけれど、小松崎さんはやっぱり大人だった。
別れ際にココちゃんとミアちゃんがあらっちゃんの事を悪く言っていたのも気にしないし、逆にウチの事を心配してくれて、悩み相談みたいな流れになっちゃうし、自分ばっかり子供みたいで恥ずかしくなってしまった。
「君……、えーと、確か友達に果林って呼ばれていたよな? 名字も聞いていい?」
小松崎さんに聞かれて、ウチは答えるのを一瞬躊躇う。
向こうはスター性があると期待してくれてるのに、ウチの名字「灰谷」って……。
なんとなく、灰とか灰色を連想させて、あんまり華やかなイメージじゃないんだよなぁ……。
(※あくまで果林の感想です)
「……に果林」
「え?」
「灰谷果林! 私の名前!!」
ウチが、自棄気味に答えると、小松崎さんは驚いたように目を見開いた。
熱っぽい目で近付いて来て、触ってこようとする男は、苦手だし、どう思われてもいいと思ってたのに……。
何でだろう?
この人にはちょっと見栄を張りたい。子供だと思われたくない。
そんな気持ちになってしまう自分に戸惑っていたんだ……。




