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第4話 委員長とのお弁当デートで、カバンの中の猫に恋愛指導された件

第4話 委員長とのお弁当デートで、カバンの中の猫に恋愛指導された件


翌日の昼休み、俺は屋上に向かう階段を上りながら、

緊張で手のひらに汗をかいていた。


時計の針は11時58分。

委員長との約束の12時まで、あと2分。


(どうしよう、何を話せばいいんだ?)


カバンの中からミストの声が聞こえてくる。


『大樹様、落ち着いてください。

普通に会話すればよろしいのです。』


(普通にって言われても、俺、女子と二人で話すの慣れてないんだよ。

しかもあの委員長だぞ?)


『それでは、私がアドバイスをいたします。』


(え?恋愛指導?猫に?)


屋上のドアを開けると、委員長がすでにベンチに座って待っていた。

黒髪ロングを風になびかせながら、

眼鏡越しに俺を見て微笑む姿が、

いつもより美しく見えた。


「橘君、おはよう。」


「あ、おはようございます、佐々木さん。」


思わず敬語になってしまった。委員長はくすっと笑う。


「そんなに堅くならなくても大丈夫よ。

美月って呼んでくれていいから。」


「え、でも...」


「私も大樹君って呼ばせてもらうわね。」


(うわ、名前で呼ばれた!でも俺が委員長を名前で呼ぶなんて...)


心臓がドキドキしているのを、委員長に気づかれないようにカバンを膝の上に置いた。


『大樹様、今です!

美月さんのお弁当を褒めてさしあげてください。』


ミストの声が頭に響く。

委員長がお弁当箱を開けているのを見て、俺は慌てて声をかけた。


「委員長の...お弁当、すごく美味しそうですね。」


「ありがとう。お母さんが作ってくれたの。

大樹君のお弁当も美味しそう。」


「俺のはコンビニ弁当だけどね…。」



俺の弁当を見て、委員長が優しく微笑んだ。

比較すると、明らかに委員長の手作り弁当の方が豪華だった。


『次は、美月様の好きなことを聞いてみてください。』


(美月様って...)


「委員長は、普段どんなことが好きなんですか?」


「そうね...読書が好きかな。

あと、クラスのみんなが楽しそうにしてるのを見るのも好き。」


さすが委員長らしい答えだ。


「読書?どんな本を読むんですか?」


「最近は...」


委員長が本の話を始めると、表情がぱっと明るくなった。

文学からラノベまで、幅広く読んでいるらしい。

俺も本を読むのは好きだから、共通の話題で盛り上がった。


『素晴らしいです!共通の趣味は親密度アップの基本です。』


(ミスト、なんか詳しいな...)


でも、楽しく話していると、だんだん緊張がほぐれてきた。

委員長は思っていたより話しやすくて、笑顔も可愛い。


「そういえば、大樹君って最近変わったわよね。」


「え?」


急に話題が変わって、俺は身構えた。


「前はもっと一人でいることが多かったけど、

最近は...なんていうか、生き生きしてる感じがするの。」


委員長が眼鏡を軽く上げながら、じっと俺を見つめる。

その視線が、妙に鋭く感じられた。


(やばい、魔法のことがバレるかも?)


『冷静に、大樹様。自然に答えてください。』


「そうかな?特に何も変わってないと思うけど...」


「そう?でも確実に変わってるわ。

表情も明るくなったし、なんだか自信がついたみたい。」


委員長の観察力は、やっぱり鋭い。

委員長として、普段からクラスメイトをよく見ているからだろうか。


「何か良いことでもあったの?」


『ここは素直に答えても大丈夫でしょう。』


「まあ...新しい友達ができたって感じかな。」


「友達?クラスの?誰?」


(うわ、詳しく聞かれた。)


カバンの中でミストが小さく身じろぎした。

ちょうどその時、風が吹いて、カバンの口が少し開いた。


「あら?」


委員長の視線がカバンに向かう。


(やばい!)


慌ててカバンの口を閉めたが、委員長は不思議そうに首をかしげた。


「今、カバンの中で何か動いた?」


「え?そ、そんなことないよ。きっと風で教科書が動いただけだと思う。」


『大樹様、落ち着いて。嘘をつくのは得意ではありませんね。』


(ミスト、今はアドバイスいらない!)


委員長は眼鏡を直しながら、まだ疑っているようだった。


「そうかしら...でも確かに何かいるような...」


その時、校庭から野球部の大きな声が聞こえてきた。


「ナイスキャッチ!」


委員長の注意がそちらに向いた隙に、俺は安堵のため息をついた。


『危機一髪でしたね。』


(本当だよ。委員長の観察力、半端ないな。)


「ところで、大樹君。」


委員長が再び俺の方を向いた。


「今度の土曜日、図書館に一緒に行かない?

新刊が入ったって聞いたの。」


「図書館?」


『これはチャンスです!お受けしてください。』


「う、うん!ぜひお願いします。」


「やった!

じゃあ、土曜日の午後2時に駅前で待ち合わせましょう。」


委員長が嬉しそうに手を叩いた。


(図書館デート?これって、デートって言うのかな?)


『立派なデートです。良かったですね、大樹様。』


昼休みの残り時間、俺たちは本の話や学校の話で盛り上がった。

委員長は委員長らしく、クラスのみんなのことをよく気にかけていた。


「田中君は最近元気がないし、山田君は何か悩んでるみたい。」


「すげぇな、みんなのことよく見てるんですね。」


「当然よ。委員長として、クラスのみんなが幸せでいてほしいもの。」


そう言って微笑む委員長を見て、俺は改めて思った。


(この人、本当に優しいんだな。

委員長って呼んでるけど、もう少し親しくなったら...)


俺はふと思った。

さっき委員長は「美月って呼んで」と言ってくれたけど、

まだそこまで親しくなれていない気がする。


でも、今日の会話で少し距離が縮まったような気もする。


『美月様は信頼できる方のようですね。』


(ああ、でもさすがに魔法のことは言えないよな...)


チャイムが鳴って、昼休みが終わった。


「今日は楽しかったわ。また一緒にお弁当食べましょうね。」


「こちらこそ、ありがとうございました。」


委員長が先に教室に戻っていく。

俺は一人屋上に残って、大きくため息をついた。


(何とかバレなかったけど、ハラハラドキドキだった。)


『お疲れ様でした、大樹様。

初めてのデートとしては上出来でした。』


(デートって言うな。恥ずかしい。)


『でも、美月様の観察力は予想以上ですね。今後も注意が必要です。』


(そうだな。今度図書館に行く時も、ミストのことがバレないようにしないと。)


『大丈夫です。私も工夫いたします。』


教室に戻ると、委員長が席で他の女子たちと楽しそうに話していた。

俺の方を見て、小さく手を振ってくれる。


(今度の土曜日も楽しみだな。)


でも同時に、新たな心配も浮かんできた。


(委員長といる時間が増えるってことは、

魔法のことがバレる可能性も高くなるってことだよな。)


(それに、昨日感じた敵の気配のこともあるし..

.委員長を危険に巻き込むわけにはいかない。)


カバンの中でミストが小さく鳴いた。


『大樹様、心配しすぎてはいけません。

美月様も、いずれは私たちの仲間になるかもしれませんから。』


(仲間?)


『ええ。彼女の観察力と判断力は、魔法使いにとって貴重な才能です。』


(でも、危険だぞ?)


『それは私たちが守ればよいのです。』


午後の授業が始まったが、俺の頭の中は委員長との約束のことでいっぱいだった。


図書館デート、楽しみだけど、ミストのことをどうやって隠そう?


それに、もし敵が現れたら...


考えれば考えるほど、不安と期待が入り混じった複雑な気持ちになった。


でも、一つだけ確かなことがあった。


委員長ともっと仲良くなりたいという気持ちだった。

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