惑星剣玉
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七夕祭りには毎年、空羅が住む街の近所では屋台が軒を連なる。
屋台と云えばやはり、型抜きに、射的に、くじ引きに、ヨーヨー……と云った感じの小さな遊技場が子供たちに人気だ。
空羅が屋台の中でも特に好きなのが、色んな景品があるくじ引きだ。
当たりを引けばなかなかの玩具が当り、外れを引いても質素だが駄菓子が当たるのでそれなりに楽しめる娯楽だ。
父に連れられて縁日の屋台へとやって来た空羅は他の屋台には目もくれず、くじ引きの屋台に向かっていく。
毎年の事ながら、くじ引きの屋台には良い玩具が揃えられてある。
「父さん、くじ引きやりたい!」
「くじ引きか、良いな。
父さんも引こう」
「らっしゃい!」
好奇心旺盛なのは空羅も父も同じだ。
様々な景品が並ぶ台を見詰めて、どの景品が楽しめるが品定めを始める二人。
この屋台のくじ引きの手順は、景品に繋がれている紐がゴチャゴチャに絡んでいて、その紐の先を引っ張り先の物を引き寄せる形式となっている。
(欲しい玩具が沢山あるな……どの紐がどの景品と繋がってるか、考えどころだ……)
「空羅は何が欲しいんだ?」
「んん……トランシーバーも良いし、カードゲームも欲しい……ブーメランも捨てがたいな」
景品に繋がれる紐を見詰めて、空羅と父は思案する。
「どれを引けば、欲しい景品に当たるかが問題だな。
おやっさん、お目当ての景品が当たるコツは?」
父が屋台のおやっさんにくじ引きの攻略法を聞くが、おやっさんは飄々とした口調で返答する。
「さあ……紐に聞いてくれな。
くじの仕組みはくじにしか分からねえ」
「「絶対知ってるな、その顔つきは……」」
「さあねえ……」
にこやかな面持ちのおやっさんを見ながら、空羅、父は目をつけた紐を引いた。
「「これだな!」」
タイミングがピッタリ合った声を出し、二人は力強く紐を引いた。
紐の先に繋がる景品が引き寄せられる。
おやっさんの瞳に光が宿った。
二人が引いた景品それは……同じ剣玉だった。
「親子で剣玉‼」
「おソロ」
やはり空羅と父は似ている部分がある。
「お二人さん、運が良い!
そりゃ、銀河と連動してる剣玉『惑星剣玉』だで」
興奮するおやっさんを前にして、空羅も……同じく父もポケッとしている。
「『惑星剣玉』って?」
「そんな、凄いの?」
珍しい出来事におやっさんは思わず立ち上がり、二人が引き当てた剣玉について熱く語り始めた。
「『惑星剣玉』と云うのはだな、遊んだ動きに合わせて、惑星までもが同じように動くんだで!」
「「へえ~っ」」
「俺の事、イカれたオヤジと思ってんな?
そんならその『惑星剣玉』で遊んでみな。
分かるから」
おやっさんに促され、空羅と父は顔を見合わせ互いの考えを問う。
「剣玉歴、何年?」
「四年間……でも小学生時代だぞ?
空羅は確か学校のクラブで……」
「剣玉クラブ入ってる!
脇道に寄って試してみよう」
「試すだけなら、損は無し!」
空羅と父が剣玉を構える姿を、おやっさんは真剣な眼差しで見詰めている。
他の人々もチラチラ二人を気にしている感じだ。
「父さん、いくよ!」
「ハイよ!」
二人の剣が玉を振り上げた。
「「ホッピー……ン!」」
二つの赤玉が宙を舞い、華麗な動きを見せた。
空羅の得意なトリック『蝋燭』が決まり、父が久々見せたトリック『灯台』が決まった。
その瞬間、向こうの方でザワザワと声がし始めた。
「今向こうの空で、デッカイ星が二つすれ違って流れたぞ!」
「ダブル流星?
ミラクルだ!」
「地震の前兆?」
「何かが起こるの?」
周りの騒ぎをよそにおやっさんは、空羅と父のやっちまった感漂う顔つきを楽しんでいる。
「どうでい?
『惑星剣玉』の遊び心地はよう……」
「「ミラクル過ぎるっす……」」
とんでもない玩具が当たってしまい、二人ともひきつった笑いを浮かべていた。




