ヲタッキーズ169 みんなミイラ
ある日、聖都アキバに発生した"リアルの裂け目"!
異次元人、時空海賊、科学ギャングの侵略が始まる!
秋葉原の危機に立ち上がる美アラサーのスーパーヒロイン。
ヲタクの聖地、秋葉原を逝くスーパーヒロイン達の叙事詩。
ヲトナのジュブナイル第169話「みんなミイラ」。さて、今回は秋葉原で超古代の女王の棺が発掘され、発掘メンバーが次々と不審な死を遂げます。
捜査が進む内に、超古代の血を引くアイヌ、強欲な出資者、闇の鑑定人などが跋扈する中、肝心の女王の棺からミイラが姿を消して夜の秋葉原を…?
お楽しみいただければ幸いです。
第1章 呪いはかけられた
市場時代の名残りでアキバの夜は早い。中央通りを埋めた大渋滞もインバウンドと共に去って夜は交通量も疎らだ。
「バカ野郎!何してる、死にたいのか?」
「ごめん、悪かったょ!」
「ぼーっと生きてんじゃねぇよ!don't sleep through life!」
中央通りの8車線を信号無視して横切り、クラクションを鳴らされた男は中国人ではなくて、れっきとしたアキバ民だ。
「ちぇ。つまんねぇ奴だな」
舌打ちして裏の地下アイドル通りへ逃げ込む。ドアの前に立って見上げるとビル壁面に並ぶ獣面の彫刻が見下ろす。
「おや?開かないぞ?」
差し込んだ鍵が回らない。ガチャガチャやるがダメ。その時、何かが風を切る音。フト見上げたら…目の前に獣面w
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
御屋敷のバックヤードをスチームパンク風に改装したら居心地良くて常連が沈殿。収益率も急降下でメイド長はお冠だw
そして今。常連のハッカー、スピアがダーツに興じてる←
「最初のダーツの大圏軌道からの離散率は…」
「一体何事だい?」
「"轟"に備えて、ルイナに弾道計算をしてもらうの。そのデータ集めょ」
カウンターでトグロを巻く常連達の頭上を飛び交うダーツ。
"轟"はアキバが萌え出す前から行われてるダーツ大会だ。
「え。スピアは"轟"に出るのか?」
「うん。ルイナにベスト弾道を計算してもらおうと思って、的のハズレ具合をリサーチしてるの…何?」
「去年は一緒に練習したのに」
僕は口をスボめる。
「テリィたんがいなかったけど、早く練習したくて。じゃあゴメンね。今から一緒にやろ?」
「そうだね」
「あ」
スマホ鳴動w
「ラギィ警部?」
「多分ね…でも、行かなくても良いカモ」
「ダメょ。ちゃんとお仕事しなきゃ。私は平気。ほら」
思い切り的を外し、常連は首をすくめる。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
血染めの彫刻。男物の靴(片方だけw)。回転スル赤ランプ。
警官隊が黄色い規制線のテープを張る。現場は常に凄惨だw
「最近、何かが落ちて来て死ぬのが流行ってる。2週間前にも10階から冷凍ソーセージが落ちて来て、玉ネギ銀行の頭取が死んだし」
「壁面彫刻が落下?古いビルだから劣化してたのかな?」
「違うわ、テリィたん。誰かの仕業ょ。痕がある」
彫刻にライトを当てながら屈み込むラギィ警部。
「バールかな?」
「タガネかもしれない」
「ラギィ。屋根にも痕が残ってた。今、指紋を採取してる」
先行したヲタッキーズのエアリ&マリレ。
因みに2人はメイド服。アキバだからねw
「しかし、原始的な方法よね。頭上から彫刻を落として殺すなんて」
「事故だと思わせるためだ。でも、そのためには相手をココで立ち止まらせる必要がある。もしかして、ドアの鍵とか壊れてなかった?」
「ビンゴ!大正解ょ。予めドアを破り侵入した形跡がアル」
マリレがビニールの証拠品袋に入った鍵を示す。
「管理人によると、被害者はウィル・メデナ。このアパートの4階に住んでる。鍵はコレ」
「お邪魔しましょ」
「本人は留守らしいぞ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ウィル・メデナの部屋。
「うわっ!ちょっとした博物館だな!」
「被害者のメデナは、アキバ歴史博物館の学芸員ょ」
「だから、こんなモノやあんなモノがたくさん!」
僕は飾ってある?ミイラや翡翠の玉や矢尻などを指す。
「ある意味、独身男の夢の城だけど、女子はドン引きだな」
「あら、そうかしら?」
「え。ラギィ、こーゆーのが趣味なのか?」
万世橋警察署の敏腕警部は、肩をスボめる。
「まさか、私じゃないわ。でも、洗面台に色違いの歯ブラシが2本あった」
「あ、テリィたん。お風呂にアロマキャンドルもあったわ」
「決め手は、ベッドの下のハイヒールね。どーやら、かなり"カジュアルな恋人"がいたみたい」
何でこんな奴がモテるんだょw
「OK。でも、その理解には若干の誤解もアル。本棚にこんな本がある。平成のベストセラー"食べて祈って恋をして"だ。彼女は相当読み込んでる。一般に、大人の女性が自分探しをスル時には"ロマンチックな関係"を求める。"カジュアルな関係"は求めないモノだ」
「あら。大人の男が読んでた可能性もアルわ。そもそも、テリィたんは何で自分探しの本だって知ってるの?」
「実は、愛読書だからだ」←
うーん気不味い沈黙…を破るエアリ。
「ラギィ。管理人さんによると、鍵は7時には壊れてなかったって」
「犯人は、その後壊したんだな?許せん(テレ隠しw)!」
「カレンダーに手描きの描き込みがアルわ。今日の予定ょ。"C.T. 17:30 avenue of the Akiba's"?殺害される2時間前ね。C.T.って何?イニシャル?"avenue of the Akiba's"は、新しく出来たオフィスビル。後で行ってみるわ」
すかさず、割り込む僕。
「じゃソッチはヲタッキーズに任せて、僕とラギィは、博物館に行ってみようょ。被害者のメデナに敵がいなかったか、同僚に聞いてみよう」
「そんなコト言って。実は、ただ博物館に行きたいだけナンでしょ?」
「バレたか。実は、新しいプテラノドンの骨格が入ったそうなンだ!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
アキバ市立博物館。
「博物館って、いつ来ても最高だ。小さい頃は毎週来て、何時間も走り回ってた。サハラの探検家やタイムトラベラーになり切って、勝手に館内を探検してたょ」
「テリィたんって、そーゆー少年の目になる時がアルってコトを忘れてた(ドン引きだけどw)」
「だろ?しかも、ココは優良ナンパスポットなんだ!」
溜め息をつくラギィ。
「もう台無しね…どうも。ウィル・メデナについて、話を聞かせてください」
万世橋のバッチを示すラギィ。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「ウィルが死んだなんて」
絶句スル首席学芸員のスタン・フォド。
「いつから知り合いですか?」
「2年前です。ミミコ遺跡の発掘プロジェクトの責任者が必要で、国の地理院にいた彼を私が引っ張りました」
「ミミコ遺跡?」
スタンは声を潜める。
「超古代アキバ文明の伝説的な女王です。次回の企画展示は、大半が彼女の埋葬室から発掘されたモノです。彼女は、イケメン奴隷のミイラと一緒に埋葬されていました」
「ツタンカーメンの秋葉原バージョンみたいですね」
「まさしくそうです」
正直、僕は大爆笑を抑えているが、スタンは真剣←
「1ヵ月以内に企画展が始まる。発掘したウィルが死ぬとは…困りました」
「最後に会ったのは?」
「今日の4時半です」
どーもスタンはホンキで困ってるw
「彼とは親密でしたか?」
「どうして?」
「身内の連絡先を知りたいと思いまして」
納得した顔で答えるスタン。
「両親は既に亡くなっており、兄弟はいません」
「彼の恋人は?」
「いないと聞いています」
フト振り向くと、博物館の売店でインディ・ジョーンズみたいな帽子を売っているので即購入し、かぶってみる。
インディ気取りでミミコの棺に近づくと、棺には天から降って来た獣面に、とても良く似た彫刻が施されている。
「何かの偶然なのかな」
僕は、撫でるような手つきで棺を覗き込み…ソッと触れてみる。棺には綱が回され、綱は滑車につながっている。
その先にリモコンがついていたので、ボタンを推してみたら軽いモーター音がし、棺の蓋が開き出すではナイか。
中から現れたミイラと…目が合う僕←
棺の中から凄まじい塵が舞い上がるw
思わズ咳き込む。
「何をしてるの?これは2000年前のミイラなのょ!」
委員長タイプのメガネ女子だ。慌てて棺のフタを閉める僕。
「空気に触れるだけで劣化する。直ぐ崩れて壊れてしまうコトだってあるのに」
「吸血鬼?いや、悪かった。その…」
「レィル・チェル、警察の方々だ。彼女はミイラの専門家です。ウィルと一緒に仕事をしていました」
血相を変えるレィル・チェル。
「彼に何かあったの?」
「先ほどお亡くなりになりました」
「…あり得ない」
茫然とするレィル・チェル。
「親しかったのですか?」
「し、仕事だけょ…スタン?」
「レィル、全て事故だと聞いてる」
僕の出番だ!
「実は殺人のようなのです」
「ええっ?!」
「待て!殺人などではない!」
別の男が割り込む。せっかく委員長タイプの度肝を抜いたのに…ところが、このパリッとした背広の禿頭も爆弾発見だw
「全て呪いだ」←
「ラギィ警部、テリィたん。紹介します。こちらルパト・ベント。発掘の出資者です」
「今、呪いとおっしゃいましたか?」
思わず聞き返す僕。すると、禿頭はスタンを振り向く。
「おい。伝えてないのか?埋葬室の入口に何と描かれていたのか。話したらどうだ?ミミコ女王の顔を見た者には天罰が下る!」
「まあまあ、ルパトさん…」
「ミミコ女王って彼女のコト?」
僕は、後ろの棺を指差す。
「その通り。女王の顔を見た者は全員が死んでいる!」
「え。全員?」
「警部。全て説明は出来ます。大学院生のニゴルは暴走族に襲われた。発掘現場の近い昭和通りで…ソレとフシャ教授はコロナで亡くなった。呪いの言葉は、墓荒らしを防ぐために描かれたモノに過ぎません」
ラギィが仕切り直し。
「メデナさんを殺したのは、人間の意志です。彼に敵はいませんでしたか?」
「彼は、ほとばしる熱いパトスで欲しいモノは必ず手に入れた。学者としては優秀でしたが、時に人と衝突するコトもありました」
「例えば?」
突っ込むラギィ。やっと捜査ポクなる。
「超古代人の血を引く人達が、彼に騙されて埋葬室を教えたと主張、私達に呪いをかけると脅して来ました」
「なぜソンなコトを?脅迫状でも?」
「コレです。私の下にも届きました。超古代の言語です」
象形文字的なモノが羅列した手紙を見せられる。
「この文字は…メデナの部屋にもあったわ」
「どういう意味ナンだ?」
「"墓荒らしには死を"です」
あ。目の前がグルグルw
第2章 ミミコのミイラ
万世橋に捜査本部が立ち上がる。
「超古代文字の脅迫状からは、指紋は出なかった。つまり手がかりは消印だけ」
「東秋葉原にいる怒れる超古代人なんて、すぐ見つかりそーだけどな」
「超古代文明大好き団体や人物のリストアップをオカルト雑誌"ラー"の編集部に依頼したわ。ダメ元だけど、念のため」
"ラー"は、僕の愛読書で創刊号も持っている。
「先月の"ラー"によると、メデナは以前リュック1つでアマゾンに入り、衛星写真からのリモートセンシングだけで1ヵ月後、シュパック王のお宝をゲットしてる。彼は最新技術を操る"外神田のインディ・ジョーンズ"だ。映画を撮ったら前作よりきっと面白い。で、C.T.のイニシャルだけど、誰だかわかった?」
「オフィスビル"avenue of the Akiba's"にはC.T.が8人いた。でも、誰もメデナを知らなかった。証言は皆無」
「コーヒーショップが1階にあって、そこで会う可能性もあるけど、常連は誰もメデナを知らない」
ヲタッキーズの2人からの報告。因みに2人はメイド服←
「ウィルの恋人は?」
「ソレが…同僚は彼に恋人がいたとは知らない」
「部屋にあった指紋もデータベースにヒットなし」
珍しくラギィが溜め息。
「もう最初から行き詰まりね」
「そうね。でも当然だわ」
「なんで?」
漫才のような会話の後で僕を指差すエアリ。
「だって、テリィたんが呪われたから」
「あぁそうだったわ」
「最悪ね」
息が止まる僕。ラギィを睨む。
「しゃべったのか?」
「話しちゃった」
「あのな。でも、残念だが僕は呪いを信じないから」
するとメイド2人は一斉に天を仰ぐ。
「ヤバいわょ。ネットで見たけど、ツタンカーメンの墓の発掘者って、全員不審な死を遂げてルンだって!」
「ソレは、全て合理的に説明出来る。棺の中の有害物質が大気中に放出された結果ナンだ」
「まさしくソレょ!あのミイラも有害物質だわ。だって、変な匂いがしたんでしょ?」
メイドのツープラトン攻撃だw
「でもさ」
「とにかく!ミイラと目が合ったんでしょ?」
「え…」
沈黙せざるを得ない。
「…呪いなんかナイさ」
そうつぶやき、画像コピーを取ろうとして…指を切るw
「指を切った!」
大袈裟に顔を見合わせるメイド2人。後退りとかw
「そうさ。どーせ呪いのせいで指が切れたンだょ!」
「小さなコトから始まるのょねぇ。山形のおばあちゃんも言ってた。悪いコトは3回続くって」
「そういえば、芸能人の不倫も3回続くわ」
ほとほとウンザリしたトコロでラギィが顔を出す。
「ルイナが鑑識結果で話したいコトがあるって」
僕は、指をしゃぶりながら検視局へ。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ルイナは、秋葉原D.A.市長のブレーンを務める超天才だが激務の合間にラボから"リモート鑑識"で手伝ってくれる。
検視局のモニターにルイナの顔。
「上着のポケットにスマホが入ってた」
証拠品袋に入ってる血染めのスマホを示す。
「呪いだと、保険で修理出来ないンじゃナイか?」
「とりあえず、ルイナ。SIMカードを調べてね」
「そういえば、石像についてた血とタガネの痕から、ある物質が検出された。きっと犯人の服に付着してたモノだと思うの」
モニター画像は、何かの拡大写真。
「何?水虫菌?」
「いいえ。有機化合物の混合物で花粉も含まれてる」
「じゃあ犯人は、殺害前にお花見してきたのね?」
冗談に根気よく付き合ってくれる超天才。
「惜しいわ。芳林パーク付属の自然教育園にしか育たない、特殊なカラバッシュの花粉なの」
「ミミコ女王の発掘現場だ」
「まだアルわ。2通の脅迫状にも全く同じ花粉が付着していた。きっと、この脅迫状の送り主が犯人ね。その人に花粉が付着してたってコトは、数日前まで自然教育園にいたってコトょ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ギャレー。他人の仕事の仕上がりを待つ時間は長く感じる。
「オカルト雑誌"ラー"編集部にリクエストした怪しい超古代マニアのリスト、遅すぎる。最近、東秋葉原を訪れた超古代マニアなんて、そーはいないだろう?」
ゆっくりとマグカップでコーヒーを飲むラギィ。小声でw
「パソコンの故障だって」
「うーン頼むょ"ラー"編集部。ところで、ミミコ女王の呪いって本物らしいな。"ラー"1982年12月号によれば、彼女は何百人も生贄にしてる。当時の都、三内丸山から遠く離れたアキバに埋葬されたのは、彼女の霊が戻って来ないようにだ。しかも、ピラミッドの1番奥深い場所に埋葬されていたらしい」
「そうなの?やっぱりミイラって怖いわ」
ラギィにしては珍しく弱気な発言だ、と思いながら腰掛けた瞬間、椅子が壊れてひっくり返る。見事にでんぐり返しだw
「テリィたん!大丈夫?」
「きっと椅子が古かったンだわ」
「念のため、呪いじゃないって3回言ってワンって吠えて」
腰に手を当て立ち上がる。ラギィのスマホが鳴る。
「もしもし…了解。ありがとうございました。メールでください。はい、どうも…"ラー"の編集部からだった。チャカ・テテテと言う人が、4日前に観光ビザで東秋葉原入りしてるって」
「チャカ・テテテ?イニシャルはC.T.だ」
「しかも、ビザの住所は自然教育園の近く。例の花粉が発生する地域だわ」
メールの画像をモニターに出す。イカつい顔のオバさんだ。
「あまり冗談とか言わなさそうね」
「とにかく、会ってみよう。僕が運転スルょOK?」
「絶対ダメ!…ペーパードライバーでしょ?」
逝ってみただけだょw
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
万世橋の取調室。
「マダムTとお呼びしても?」
「あら。名前は、チャカ・テテテょ」
「…犯罪歴がありますね?超古代省によると、2019年に観光客を脅迫して逮捕されてますね」
中年のおばさんだ。占い師の風格がアル。
「彼等は、神聖なる墳墓に侵入したからょ」
「2人を病院送りしてますね」
「私は"blood type BLUE"。自分を抑制出来なかった。早く本題に入って」
僕は、対テレパス用ヘッドギアを被り直す。
横に大きく"SF作家"と大描きしてアルw
「超古代文字で殺しの脅迫状を送るコトは重罪ょ」
「殺人も重罪に当たるぞ。生贄と逝った方がわかりやすいカモな?」
「なんのコトだかさっぱりだわ」
ラギィは、脅迫状のコピーを机に示す。
「コレで少しは思い出した?」
「メデナは私と会うことも拒否して来た。だから、そのメッセージを送るしかなかったの。私はアイヌ。私は、私達から盗んだ遺物を返せ、と言ったまでょ」
「でも、超古代省が既に博物館と契約してるわ」
首を振る女占い師風おばさん。
「私達とは契約していない。アイヌは北海道に数万人もいる。ミミコの出土品は、原始日本人の子孫であるアイヌのものょ」
「だから、メデナに脅迫状を送ったのか?」
「脅迫状ではなくアドバイスょ。盗んだモノを返さなければどんな運命になるか」
単刀直入にラギィ。
「昨夜の7時から8時の間どこにいましたか?」
「殺してはいないわ。私達には、彼を殺す理由がないから。なぜなら、一旦ミイラに呪われた者は、いずれ死ぬ運命だから」
「マジかょ」
挑むように僕を見るテテテ。明らかに狼狽する僕。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
万世橋の捜査本部。
「ラギィ。チャカ・テテテはシロだわ。C.T.の正体は彼女じゃなかった。同時刻に博物館の不当性について"ワラッタ・ワールドワイド・メディア"の取材を受けてる。5時半から8時過ぎまでスタジオでインタビュー撮り」
「じゃあ花粉は?」
「発掘現場は花粉の発生地域ょ。きっと発掘された遺物全てに花粉が付着してるわ」
ヲタッキーズからの報告に腕組みするラギィ。
「うーん。でも、チャカ・テテテは何か知ってそう。も少し拘留しましょう」
「ソレから、メデナのスマホを調べた。通話記録に不審な点はなかったけど…恋人の写真が保存してあった」
「え。ミイラ?」
マリレから渡された写真を手に当惑顔のラギィ。
「あ、ごめん。最後まで見て」
「…レィル・チェル?オフィスには内緒の禁断愛か」
「まだまだ隠しゴトがありそうね…殺人とか」
裸の胸を毛布で隠して微笑むレィルの写真w
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
万世橋の取調室。
「発掘プロジェクトの後から」
写真を押し戻し、太々しく開き直るレィル・チェル。
「なぜ秘密にしてたの?」
「スタンにクビにされる。スタンはウィルを憎んでたから」
「なぜ?」
思いがけない名が出る。
「ニゴル・グラハのせいょ」
「発掘の時に現場で事故死した院生?」
「YES。ウィルはスタンに任命され、現場でサバイバル術を教えてくれたンだけど、グラハが事故死して、スタンは彼女を1人にしたせいだとウィルを責め、プロジェクトから追い出そうとした。スタンはホンキだったけど、無理。だって、ミミコの埋葬室を発見したのはウィルなんだから」
ドヤ顔のレィル。女房気取り…いや、未亡人気取り?
「スタンは、ウィルを殺すほど憎んでたのね?」
「間違いナイわ!だって、あの時"ニゴルじゃなく、ウィルが死ぬべきだった"と言っていたモノ」
「立派な動機だ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
市立アキバ博物館の学芸室。
「ウィルと不仲だから私が殺したと?」
「ニゴルの死は、ウィルのせいだと言ったそうね」
「監督責任を指摘しただけです」
動揺と逝うより狼狽してるスタン首席学芸員。
「ソレに…ニゴルが自然教育園の夜の森にいたのは、ウィルとセックスするためでした。しかし、ウィルは現れなかった」
「何でそんなコトを知ってるの?」
「その2日前、私は2人が森から出て来るトコロを見た。私は責めたが、2人はトボけた。そして…ニゴルの明るい未来を奴は奪ったのです!」
意外に純情だ。もしかしたら童貞?
「メデナが殺された時、貴方はどちらに?」
「博物館にいました。警備か同僚に聞いてください。あ、防犯カメラにも写ってるハズです。私は、企画展示が始まるまで、ココを離れられないのです!」
「そう。アリバイが確認出来なかったら、また来るわ」
そう告げて歩き去る僕達の背中に叫ぶスタン。
「ウィルは呪いで死んだんじゃナイ。アレは業だ!」
余計悪いょw
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
博物館を出て、ラギィと中央通りを歩く。
「ラギィ。カルマって信じるか?悪行の報い、とかソンなニュアンスなんだけど」
「元カノなのにテリィたんの世話を推しつけられてる私は、何の業かしら」
「笑える」
力なくヘラヘラ笑うと、僕達を呼び止める声がスル。
「ラギィ警部さん、オマケの貴方。見てください、展示の宣伝が出来ました!」
ミミコ遺跡発掘プロジェクトの出資者ルパト・ベントだ。
中央通りの街灯毎にペナントを吊る作業を監督している。
「お!…"君はミイラと目を合わす勇気があるか?"か。なかなか迫るコピーだな」
「お上品ね」
「ヲタクは、こーゆーのに食いつく。誰もがみんな呪いに興味津々だょ。前売り券の売り上げも20%増加しました」
鼻息荒い禿頭。ウザい。
「ミイラを見に来た人が事故に逢ったら?バナナの皮で転んだりしたらどうします?訴えられますょ」
「え。…ちょっと弁護士に電話して来ます」
「ふふふん(鼻で笑うラギィw)」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
万世橋の捜査本部。
「スタンとレィルのアリバイは?」
「2人とも遅くまで博物館にいたコトになってる。だけど、いずれかが1時間抜け出して殺した可能性は残ってるわ。マリレ、口座は?」
「ウィルの口座に発見があったわ。死ぬ4日前100万円の入金があった」
マリレの報告に身を乗り出すラギィ。
「え。どこからのお金?」
「捜査中。だけど、事件当日その100万円を下してる。入金して4日間寝かして即出金。コレはマネーロンダリングね」
「明日の朝、お金の出所を調べて…」
ココで"僕"の悲鳴が上がるw
「わあああっ!助けてぇ!」
みんなが血相を変えてギャレーに飛び込んで来る!僕はエスプレッソマシンから噴き出す凄まじい蒸気に右往左往だw
「テリィたん、どーしたの?」
「大丈夫?」
「わからない!コーヒーを淹れただけなのに、マシンが突然ガタガタ震え出して、いきなり爆発したんだ!危うく死ぬトコロだった!ミユリさーん!」←
驚いた顔から…やがて、クスクス笑いだす3人。
「あぁ…そういうコトか。騙されたょ。面白い。笑えるぜ。上等だょ!」
「"僕、テリィたん。呪いは信じない"なんちゃって」
「おいおいおい!爆弾処理班にでも頼んだのか?」
笑い転げるラギィ警部とヲタッキーズのメイド2人。
「大丈夫。マシンの掃除モードょ。安全だわ」
「あの椅子も?」
「ネジを何本か抜いただけ」
3人でパンパンとハイタッチしてるw
「お疲れ、テリィたん」
ギャレーから出て逝くラギィ。大笑いするヲタッキーズ。
「おい!誰が片付けルンだ?」
割れたカップの取っ手だけ持って叫ぶ僕w
第3章 ミイラは夜歩く
その夜の"潜り酒場"。
「エアリ達まで?みんな、意地悪ですねクスクス」
「でも、全てを僕は見透かしていたんだょミユリさん」
「ソレは良かったですね…でも、世に未解明のモノが多いコトも確かです。ストーンヘンジとかデジャヴとか。例のスコットランドの劇とか」
役者っていうのは迷信深いからな。
「あぁ。また始まった。ミユリさんはメイドミュージカルの主演女優だからな」
「スコットランド?ミユリ姉様、マクベスかしら?」
「ダメょ。口に出して言っちゃダメ!」
ミユリさんの絡みに割り込む常連のスピア。
ミユリさんは指をバツに交差させて制する。
「マクベス!」
面白がって叫ぶスピア。ミユリさんは、溜め息ついて背を向け何やらペッペッとして掌をクルクル回す。オマジナイか?
「あのね、スピア。その名を口にすれば、必ず不幸が起きるの。私も最初は信じなかった。でも、高校の演劇の授業でウッカリ口に出しちゃったの。そしたら2日間イヤーなコトばかりが起きた。助演が足をくじいたり、スタッフが肺炎になったり。それで、とうとう監督が私に言ったの。劇場になる体育館の周りを反時計回りに走ってドアをノックしろって。そうしたら…」
「このママ、学校の怪談に付き合いたいトコロだけど、コレから殺人事件とデートなんだ」
「いってらっしゃいませ、テリィ様」
スピアの頭のてっぺんにキス。
「ねぇスピア。テリィ様は、信じてないから生き残るのね」
「え。ミユリ姉様、どーゆーコト?」
「だって、万世橋ナンて"業"だらけょ」
僕は、背中で聞き流しながら肩をスボめる。
「聞こえてるょミユリさん」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
"秋葉原マンハッタン"が西陽を浴びて黄金色に染まる。そ
んな摩天楼の谷間にアル万世橋警察署。その捜査本部では…
「エアリ、トマト銀行はどう?」
「入金も出勤も全部現金だったわ、ラギィ。手続きをした支店長がメデナのコトを覚えてた。メデナには連れがいたそうょ。銀行の防犯カメラにバッチリ映ってる」
「ソレ誰なの?」
途端に戯れ合うヲタッキーズのメイド2人。
「エアリから話して」
「いいえ。マリレからどーぞ」
「マジ?いーの?」
辛抱強く待つラギィ。
「…夫婦漫才が終わったら教えて」
マリレが防犯カメラ画像をモニターに流す。"口座を開くと半島旅行が当たる!"キャンペーンに応募する客の行列だ。
「前から3番目の女子」
「半島旅行に応募してるの?」
「"韓流"なのカモ」
やや呆れるラギィ。
「で、誰なの?」
「ノトン・グムズ。"覚醒剤"の密輸で2年間服役してる。"blood type BLUE"」
「キャンペーンの応募フォームは回収済み。現住所まで自筆で描いてアル」
エアリは、証拠品袋に入ってる用紙を示す。
因みに"覚醒剤"とは、アキバに"リアルの裂け目"が開いて以来、腐女子が超能力に"覚醒"、スーパーヒロイン化する例が後を絶たないが、その覚醒を促す特殊な薬のコトだ。
「韓流って…あの半島は大麻天国だから、発掘した遺物に忍ばせて密輸に使うとかかしら。メデナはソレに関与して殺された?」
「とにかく、せっかく自筆の住所がアルんだから、早く会いに行くのが礼儀だ」
「そうね。行くわょテリィたん」
ラギィの後を追いながら声をかける。
「僕が運転スル?」
「嫌ょ呪われてるのに」
「差別だ。チャンスをくれょ」
ペーパードライバーを卒業したいんだw
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
久しぶりの全力出撃だ。
神田同朋町の狭い路地に黒塗りのSUVが何台も連なり停車、全員が耐テレパス用ヘッドギア、防弾ベストの重装備。
音波銃にはカートリッジを装填w
「ノトン・グムズが逃げないように、念のため署を総出で当たるコトにスル。で、テリィたん。ホントに来るの?呪いは大丈夫?」
「当然だろ」
「ホントに良いのね?じゃGO!」
鍵は開いている。次々と飛び込んで逝く警官隊。
「万世橋警察署!万世橋警察署!ノトン・グムズ!手を挙げて出て来なさい!」
狂犬のうなり声w
「良い子にして…ぎゃ!噛まれた、逃げろ!」
再び勢い良くドアが開き僕を先頭に…あれ?僕だけ?何で?
未だ赤ランプが回転してるパトカーの天井に駆け上がる!
吠えながら狂犬?が追って来る。噛み付かれるw
「落ち着いて(犬にw)!シー!静かに!」
吠えるのをヤメない。犬が…楽しんでる?
「助けて!なぜ僕だけ?」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
万世橋の捜査本部。
「ラギィ。僕は死ぬかと思ったょ」
「でも、死ななかった。捜査してると、犬がいる家にぶつかるコトって良くアルし」
「でもさ。僕は、ミイラの顔を見た直後だぜ?タイミング良過ぎない?」
何か答えようとしたラギィのスマホが鳴動。
「了解。ホント?ソレ。どーゆーコト?…ありがとう」
「鑑識結果が出たんだだろ?何だって?」
「別に」
沢尻エリカかょ(古いw)←
「ウソだろ?」
「仕方ナイ。言うわ。石像に付着していた物質が判明したみたい。硝酸ナトリウムと酸化鉄。麻の繊維と…人間の組織」
「なんだって?」
僕は、ラギィのデスクサイドに腰掛ける。
「ミイラの組織ってコトは、その、あの、ミイラの肉?」
「つまり、犯人はミイラと接触したのょ。恐らくメデナを殺害する前に。その時"ミイラの成分"が服に付着したと考えられる…超天才ルイナの見解ょ」
「ソレか!よみがえったミイラが夜のアキバを彷徨って、復讐して回ってルンだ!」
渋々"同意"するラギィ。
「仮にミイラが棺で運ばれたとスルと、ミイラを取り出す時にノトン・グムズに"ミイラの成分"が付着した可能性がある」
思わズ口笛を吹いたら、勘違いした婦警さんが微笑むw
「ほぼビンゴ!でも、悪いけど、その先は1人で捜査してくれょ。僕はちょっち…履き替えて来るw」
「OK。でも、彷徨えるミイラに注意して」
「…知ってたのか」
犬に噛まれ、破けたズボンの穴を隠しつつ退散w
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
万世橋のギャレー。
「テリィたん、犬に噛まれるナンてタイミング良過ぎw」
「笑える」
「ヲタッキーズ。面白がって呪いを馬鹿にしてるわね?捜査中にテリィたんが呪い殺されたりスルと、かなーり面倒ナンですけど」
ヲタッキーズのメイド2人がコーヒーブレイクしながらクスクス笑っていると、ラギィ警部殿がコーヒーを片手に乱入。
「ラギィも呪いを信じるの?」
「信じろとは言ってない。解明出来ないコトには関与しない方が良いと言ってるの。殺人課の1年目の時ょ。相棒が捜査でアイヌの店の窓を割った。店主は激怒し、私達に呪いをかけると言ったけど、相棒は適当にあしらった。2時間後、相棒は心臓発作で死んだわ」
「ソレ、呪いのせいなの?」
心配そうに尋ねるマリレ。
「いいえ。ベーコンの食べ過ぎょ。でも、次の日。私達は、店に行って窓を直した。なぜなら…」
「解明出来ないコトには関与するな?」
「"君子、危うきに近寄らズ"?」
ちょっち違うが、うなずくラギィ。
「貴女達スーパーヒロインも、ソレを忘れないで」
「…ノトン・グムズも呪われたかしら。ミイラの顔を見てルンでしょ?」
「私は、呪いよりもラギィの尋問の方が怖いわ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
万世橋の取調室。
「トンだ勘違いだわ!私は、蔵前橋を出てから"覚醒剤"には関わってナイわ!」
「あーら不思議ね。メデナの殺害当夜、誰かから100万円を受け取った証拠がココにアル。貴女が無罪だと裁判員を説得するのは、かなり難しそうょ」
「あらあらあら。ちょっと待ってょおまわりさん!」
両手を広げ天を仰ぐノトン・グムズ。
「私は殺しもしてないし"覚醒剤"の密輸もヤッてない。新しい商売を始めたの。頭を使って"古美術の商売"ょ」
「ソレって頭を使うの?ってか、そもそも何でメデナは貴方から古美術を買うの?」
「買うんじゃナイの。売るの。博物館の企画イベントで会って、珍しい品に興味があると伝えた。そーしたら、数週間後に彼から電話が来た。要らないクマソ帝国の矢があるから買ってくれって。で、私が買い手を探してあげて、お互いに大儲けしたってワケ」
やっぱり頭を使ってナイだろw
「で、今回の品は?」
「ミイラょ」
「ミイラ?誰が買うの?王家の子孫?」
全く期待してなかったが渇いた笑いが起きる。
「台北のコレクターだって。メデナは断ると思いきや飛びついて来たわ」
「でも、ミイラが消えたら大騒ぎにナルでしょ」
「ならないわ。ミミコ女王のミイラと違って、奴隷の少女のミイラなんか誰も見向きもしない。どーせ倉庫に放置される運命ょ。仮に誰かが気づくとしても何年も先。つまりメデナは絶対に足がつかないと踏んでた」
やれやれ。多分その通りだw
「つまり100万円は頭金だったのか?」
「Yes。総額は2500万円」
「…でも、前金は払い戻された。ソレはナゼ?マネーロンダリングでしょ?」
経済犯罪に持って逝きたいラギィ。一蹴するノトン。
「何でマネロンが絡むの?そんな頭の良い人は絡んでナイ。もっと単純ょ。客の気が変わって、ミイラを買わなくなった。ソレだけ」
「どうして?」
「知らないわ。ミイラの実物確認に博物館へ誰かが送り込まれたって聞いたけど…it's not my business」
フランス人みたいに掌を天に向け肩をスボめるノトン。
「博物館に送り込まれたのは誰?台北のコレクターに何て報告したの?」
「だから、知らないって」
「ホントは、貴女が送り込まれたンじゃナイの?」
心底ウンザリ顔のノトン。
「コレ、取調べでしょ?少しは参考人が白状したコトを信じたら?どーせミイラが小さかったとか、そんな話だと思う。とにかく!台北はミイラに興味を失った。コレクターはコダワリがスゴいの。少しでも気に入らなければ買わないわ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
取調室を出てヲタッキーズを呼ぶラギィ。
「どーもミイラ売買みたいだわ」
「ソンなバカな。かと言って、メデナが"覚醒剤"に関与してたとも思えナイし…」
「メデナのマンションから"覚醒剤"が出るか、も1度調べてくれない?」
メイド2人はうなずく。
「アイアイ。もし出たらノトンが犯人ってコトね?」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
その夜の"潜り酒場"。カウンターの上に遺言書。ワイシャツのボタンを締めながら見詰める僕。
「あら。おかえりなさいませ、テリィ様。いつの間に?」
「ミユリさん。僕は、死に直面している。万が一、僕が呪いで死ぬようなコトがあったら、元カノ達の世話を頼む」
「はい。テリィ様」
あ、完全に聞き流してるw
「あのさ。ちゃんと頼むょw」
「(だって元カノ会はスピアが〆てるしw)テリィ様だって、呪いがモノホンだなんて信じてナイのでしょ?」
「ま、まぁね。でも、運命に抗いもせズ廃人になったらヲタクの名折れだろ(意味不w)?」
すると、ミユリさんはカウンターに肩肘をつき、斜め72度の角度で僕を見上げる。出たょミユリさんの"勝負角"だw
無茶苦茶カワイイ。激萌え。
「ソレではテリィ様。呪いを解く方法を考えましょう。私の時は、劇場となる体育館の周りを真冬にブルマで走りました。そこら辺、博物館の学芸員なら何か知っているのでは?」
「…ミユリさん。突然だけどキスしよう」
「はい、テリィ様」
カウンターに両手をつき、目を閉じるミユリさん。
「でも、お願い。キスの後でお話ししないで」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
市立アキバ博物館。
「呪いを解く方法?知らないな。ミミコ女王の棺には何も描かれてなかったし」
あっさり望みを断つルパト。ソコへラギィ達が現れる。
「テリィたん?何をしてるの?」
「あぁ実は君達を待っていたのさ」←
「ラギィ警部。貴女も呪いを解く方法を聞きに来たのか?」
怪訝な顔をするラギィ。
「違います。ミイラの話を聞きに来ました…ってか、テリィたん。未だ呪いが解けないの?」
「大丈夫ょ。死ねば本はベストセラーになるわ!」←
「(何なんだ?)おい、ミイラの話って何だょ?」
博物館にズケズケ入って来るラギィ達を追いかける。
「メデナはミイラを売ろうとしてたの」
「ちょ、ちょ、ちょ。最初から話してくれ」
「超古代文明においては、死者を埋葬する際に…」
はい、ソコは割愛。ココで両手を広げ立ち塞がるレィル。
「貴重な遺物ょ!簡単には棺を開けさせない!」
「ごめんね。でも令状があるの。どいて」
「全く馬鹿げてる。学術の冒涜だ!」
首席学芸員のスタンも飛び出して来るw
「あのね。貴方の同僚が"覚醒剤"を密輸してたカモしれないの。共犯になりたい?」
「ぐっ…でも、お願いだ。ミイラは繊細。棺を開けて外気と触れるだけで破損する可能性があります」
「安心して。抜き取り検査よ。絶対に破損しない(でも外気に触れるから約束出来ないワ)」
棺を開ける…ところが、中にミイラが無いw
「何てコトだ。ミイラがなくなってる!」
「破損のしようがナイわw」
「呪いを信じるワケじゃないけど…ミイラは今宵も秋葉原の何処かを彷徨ってるの?」
全員、茫然と立ち尽くすw
第4章 ミイラの正体
万世橋の捜査本部。
「も1度、鑑識に診てもらったけど、棺や他の遺物に"覚醒剤"が紛れてた形跡は無いわ」
「ソレなら、なぜミイラは消えたの?あ、彷徨えるミイラ説は封印して」
「ノトンが話した通り、メデナに売るつもりで既に移動した後だったとか?」
彷徨える説が封印され、我ながらツマラナイ仮説w
「メデナが買わないから、他の人に売ったってコト?」
「でも、メデナの死後もミイラはあったンでしょ?だから、テリィたんが呪われたワケだし」←
「やっぱり答えは1つだ!ミイラは復讐のために…」
ヲタッキーズのツープラトン攻撃!マリレは僕をフルネルソンで締め上げて、エアリは僕の口を塞ぐ。わ!何で鼻まで…
「この博物館には3000万点もの展示品がアル。後で警察犬も投入してミイラ探しをスルけど、難航スルわ」
「…放せょもう博物館にはナイかもなゼェゼェ」
「鑑識を呼んで棺の指紋を調べて。何かしらミイラ泥棒を特定出来る証拠が見つかるハズょ」
ソコにヤタラ大袈裟な手振りでルパトが現れる。
「最悪だ!大衆がメデナの死を知ったらタイヘンな騒ぎになる!ああっ困った!ホントに困った!」
言葉とは裏腹にヤタラ嬉しそうw
「あいつ、絶対に自分でメディアにタレ込む気だな。話題になって企画展の前売りはバカ売れだ」
「そっか。話題作りのためにルパトが殺したのね?!」
「そんなアニメみたいな展開はナイわ。ソレじゃ私は、悪の女幹部って感じ?」
僕は断言。
「いいや。ラギィはキャラ的にラスボスだ。セクシーなミニスカートで黒のコスチューム」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
万世橋のエレベーターの中。いつ着替えたのか、黒ミニスカのラギィをチラ見しながら、ミユリさんにスマホする僕w
「うん。そーなんだょミユリさん。呪いの解き方は、相変わらず不明ナンだけど大丈夫さ。僕が大袈裟に反応してた。ミユリさんが言ってた通り、呪いナンてナイ。世の中、そんなに捨てたモンじゃなさそう」
ミニスカをチラ見してたら…エレベーターが突然停止w
「きゃあ!テリィたん!」
「何だ?エレベーターが突然止まったぞ?ミユリさん?もしもし?スマホが通じない…大丈夫だ。慌てなくて良い」
「テリィたん、誰に言ってるの?」
エレベーターの照明が消える。
「少し慌てようw」
薄暗い非常灯が点灯。
「おーい誰か!」
ドアをドンドン叩く。
「呪いなんかナイ、呪いなんかナイ…落下したらどうする?ヤバいぞ。上にジャンプすべきか?違うな。床に寝そべるんだ」
その時ドアが開く。エレベーターの床に寝そべっている僕と"新橋鮫"…で、"鮫"は黒のタイトなミニスカと来てるw
「キャー!」
「ラギィ、大胆!」
「テリィたんとナニしてるの?」
全員が覗き込んでる!立ち上がり埃を払うと余計に怪しいw
「エレベーターが…その、いきなり、電気が消えて…落下するかと思い、衝撃に備えてた。またヲタッキーズの仕業か?」
「そこまではしない。エレベーターが古いからょ。管理会社を呼んでくれる?」
「直るまで誰も乗せないように!」
制服警官が取り囲んでいる。
「大丈夫か、ラギィ?」
「いや、その…ちょっと無理カモ。顔を洗って来る。ソレと…少し吐くわ…あ、1人で逝くから…no thank you」
「いってら」
真っ青な顔。フラフラとトイレに消えるラギィ。瀕死w
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
その夜の"潜り酒場"。
「考古学者の密輸に超古代人の脅迫、遺物の密売に消えたミイラ、黒いミニスカ。これらをつなぎ合わせる、何か論理的なストーリーが必要ですょね。特にラギィのミニスカ。コレには、圧倒的に合理的な説明が必要です、テリィ様」
「アレは潜入捜査だ!スーパーヒロインによる売春組織に潜入捜査で出掛ける予定で…ソンなコトより、ミユリさん。もし僕が呪い殺された時には、スピアを頼む。彼女は、ミユリさんを尊敬してる。変な彼氏が近づいたら、構わないから撃ってくれ」
「何も起きないわ。ソレとスーパーヒロインによる売春組織なら前々話で壊滅済みだし…」
あ、あれ?ミユリさん、何でミニスカ?
「ミユリさん。もしもの話をしてルンだ。あとクローゼットに若干のポルノがあるから処分してくれ…何だ?ヲタッキーズ」
「テリィたん。ルイナが棺から博物館の関係者以外の指紋を検出したって」
「しかも、メディナのカレンダーに描いてあったメモの何とかって言うオフィスビルの"バイオピンク"ってスタートアップで働いてるらしい。名前はチャル・ズテラ」
僕とミユリさんが異口同音。
「C.T.!」
「…"バイオピンク"って確か今は佃煮屋の女将w」
「2日前、聞き込みの時に、メデナを知らないと私にウソついたわw」
妖精でも男にダマされルンだなw
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
南秋葉原条約機構は、アキバに開いた"リアルの裂け目"からの脅威に対抗するための秘密組織だ。
その司令部は、パーツ通りの、とあるゲーセンの地下深く秘密裡に作られて…連行されて来るC.T.←
「いやいやいや。ウソじゃないょメイドさん。ホントに知らねぇんだ」
「でも、2日前の5時半に彼と会ってるでしょ?」
「私じゃナイ…ってかココ、何処だ?メイドさん達は警察なのか?そのメイド服は婦警の冬服?」
ヲタッキーズの尋問中だが…個室プレイにも見えるw
「でも、博物館の地下に行ったコトは認めるのね?」
「いいや」
「チャル・ズテラ。貴方の指紋があった。あのね。私達は、実はブラックホール第2.5惑星人で地球を征服に来たの。ホントのコトを話さないとメカゴジラの…」
途端に血相を変えブルブル震え出すチャル・ズテラw
「ク、クロスアタックビームか?!あの高圧電磁光線だけは勘弁してくれ!た、確かに地下には行った!」
「いつ?」
「ソ、ソレだけは!」
お?黙秘か?
「"メカゴジラの最大の敵は何だ?…ゴジラ"」
「ま、ま、ま、待ってくれ!会った。確かに会いました!ゴメンナサイ、ムガァール隊長ぉ!」
「メデナと?」
完ヲチだw
「YES。私は、殺人犯に誤解されるのが嫌でウソをつきました。私は、ミイラを確認しただけです」
「ミイラを確認?」
「はい。あるコレクターにリクエストされて行ったのです。実は…俺は"闇の鑑定人C.T."だ!」
正々堂々と逝われると聞いてる方が恥ずかしくなるなw
「コレクターって何処の人?」
「はい、台北です。前にも、縄文人の頭蓋骨やマンモスの牙の鑑定を依頼されています。今回は、ミイラが本物かどうかを調べました」
「で、どーだったの?」
身を乗り出すヲタッキーズ。
「ソレが…複雑ナンです」
「慣れてる。話して」
「古い遺骸ほど炭素は少ない。中でも炭素14は、個体の死と同時に崩壊が始まります。だから、その崩壊率で遺骸の年代を正確に計測出来るのです。今回、私は棺の中のサンプルと、遺骸が巻かれてた布と、骨を測定にかけたのですが、おかしな結果になりました」
ますます身を乗り出すヲタッキーズ。
「おかしなコトって何ょ?」
「はい。サンプルと布は2000年以上前のモノでしだが、骨は判定が出来なかったのです。放射性炭素による年代測定法で判定不能と言うのは、つまり500年以内と言うコトです」
「え。500年前って安土桃山時代だっけ?良い国作ろう足利尊氏?」
静かに微笑むチャル・ズテラ。
「500年以内は測れナイってコトですょメイドさん」
「つまり、メデナが売ろうとしたミイラは偽物と言うコトなのね?」
「…私は、顧客のリクエストに誠実に答えるのみです。とにかく、測定結果が言われたコトと食い違っている旨をメデナに伝えました。しかし、彼は信じなかった。だから、1度会うコトになりました。その晩に彼は死んだのです。南無八幡大菩薩」
チャル・ズテラは合掌。ココでミユリさんが顔を出す。
「テリィ様。消えたミイラが見つかりました。博物館の地下で、絶対に見つからないように隠されていたそうです」
「ミイラが偽物だと知ったメデナが、調べ始めたら即、殺された。その後で誰かがソコに隠したンだ」
「テリィ様。ルイナにミイラを調べてもらいましょう」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
警備上の理由からSATO司令部に隣接してるルイナのラボ。
「チャル・ズテラの言う通り、彼女は500年以内に死んでるみたいね」
「500年以内って…も少し何とかならないの?」
「なるわ。4ヶ月前ょ」
あっさり答えるルイナ。あ、因みに彼女は車椅子にトレードマークのゴスロリだ。超天才は大抵の仕事はラボでこなす。
「4ヶ月?見た目は他のミイラと同じだぜ?」
「ソレは、ミイラの専門家が作ってるから。乾燥させる前に血を抜いて臓器を丁寧に除去した跡がアルわ」
「死因は何?」
一気にリアルな殺人事件だ。超古代の謎もロマンも封印w
「後頭部を強打されてる。不意をつかれた感じ」
「で、彼女の正体は?」
「この状態じゃ指紋も取れないわ。ココから先は相棒のスピアに聞いて」
スピアは、凄腕のハッカーだ。
「秋葉原中の歯医者の電子カルテをハッキングした。歯型で確認が出来たわ。そのミイラは"呪いで死んだ人シリーズ"の中から薄幸の大学院生、ニゴル・グラハ」
「暴走族に襲われて死んだんじゃなかったっけ?」
「でも、確か遺体は見つからなかった。衣服と頭皮の1部が発見されただけ」
僕は頭を抱える。
「おいおいおい。誰かが彼女を殺してミイラにしたとか逝うなょ?」
「でも、死体の隠し方としては天才的だわ。出土品に紛れ込ませるなんて。メデナがミイラを売りに出さなければ、絶対にバレなかったし」
「チャル・ズテラの報告に不審を抱いたメデナは、詳しく調べようとした。ソレを知った犯人は、秘密がバレる前に先手を打って殺した…筋は通ってるけど、じゃ犯人は?」
超天才ルイナのまとめ。そして、疑問には僕が答える。
「遺体をミイラに出来るホドのスキルがある専門家は、今のトコロ1人だけだ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
レィル・チェル"恋人"学芸員 を"召喚"。
「なんで私が?ってか、貴女はモノホンのムーンライトセレナーダーょね?もしかして、ココは噂のSATO司令部なの?SATOって、実在の組織だったのね?!」
「ソレはどーかな。ところで"食べて祈って恋をして"…そして、殺して。君にしか出来ない方法で遺体を処理スルのは殺人犯としては失格だな」
「はぁ?遺体?一体何の話をしてるの?」
"犯人はお前だ!劇場"の開幕だ!
「君には、薄幸の大学院生、ニゴル・グラハを殺して隠すために遺体をミイラにした容疑がかかっている!」
「は?ってか、オッサン、あんた誰?ねぇムーンライトセレナーダー、違うの!ニゴルは暴走族に襲われて輪姦されたのょ!」
「でも、遺体は出なかっただろう、え?」
マズいな。僕は嫌な刑事役になってるw
「だが、その後、遺体は見つかり、メデナもソレに気づき…
だから、お前は彼をも殺したのだ!」
「ありえない。おっさん、黙って。ねぇムーンライトセレナーダー…」
「あのね、レィル・チェル。コチラは"地下鉄戦隊メトロン5"や"(宇宙)船コレ""宇宙女刑事ギャバ子"でお馴染み、国民的SF作家で、私のTOのテリィ様ょ。も少し敬意を払って。お願い」
絶句するレィル・チェル。
「え。貴方がテリィたん?このオッサンが…」
「そーだ!悪いか?…レィル・チェル!君は自分の恋人と自分より遥かに若い女子大生との密会を目撃したンだろ?さぞかし悔しかったろう。わかるょ。そして、嫉妬は殺意へと変わったのだ!」
「ムーンライトセレナーダー!貴女のTOに無礼な態度をとってゴメンナサイ(でも私、このオッサンどーしてもムリw)!聞いて!ニゴルとは親友だった。彼女とウィルとの関係はデタラメょ。確かにニゴルも他の女子もみんな彼に惚れてただけど、私との関係を知って、みんな潔く諦めてくれた。ねぇムーンライトセレナーダー。いつもたくさんの元カノに囲まれながら、救いのない馬鹿面でヘラヘラ笑ってるカレをカワイイって思う今カノの余裕の気分、貴女ならわかるハズょ!」
この奇妙な説得力は何だ?
「気をつけろ、ミユリさん!ディスられてるぞ!」
「でも…スタン・フォド?ねぇ嫉妬したのは、首席学芸員のスタン・フォドょ。みんなにバレバレだった。ツインテ命の彼はポニーテールのニゴルが好きだった。いつもオカズにしてて怖かったわ!」
「しかし、ミイラを作れるのは、お前だけじゃナイか」
検察側の最後の切り札だ。ところが…
「あら。ミイラを作れるのは私だけじゃないわ。私達は全員、スタンから作り方を教わってるの。コツさえ掴めば、ミイラ作りナンてカンタンょムーンライトセレナーダー」
「え。そーなの?」
「YES。ねぇムーンライトセレナーダー。ミイラ作りって、スゴい複雑な工程を踏むの。だから、ミイラには必ず犯人のDNAが残ってると思うの」
すると、ミユリさん…じゃなかった、ムーンライトセレナーダーは、パチンと指を鳴らし、レィルにニッコリと微笑む。
「わかったわ。スタンのDNAサンプルを取りましょう」
「でも、ムーンライトセレナーダー。スタンは、絶対にサンプル提供には応じないと思うわ」
「大丈夫。私のTOの元カノ会の顔ぶれは恐ろしく多彩なの。任せて」
なんなんだ。この女同士の軽妙なやりとりはw
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
市立アキバ博物館。僕とミユリさんは乗り込む。
「首席学芸員スタン・フォド。薄幸の大学院生ニゴル・グラム殺害容疑で逮捕ょ」
「ウィル・メデナの殺害もな。秘密をバラされないように、メデナも殺害してルンだろ?」
「ムーンライトセレナーダー?リアルで見るのは初めてだけどモノホンかょ?SATOが捜査に乗り出したのか?冗談だろ?」
企画展を翌日に控え、遺物の搬入でゴッタ返す会場。
「DNAの提供を求める」
「(テリィ様の元カノで最高検察庁ミクス次長検事お手製の)令状が出てるわ」
「全く驚いたな。アニメみたいな展開だ」
途端に回れ右して、ダッシュで逃げ去るスタンw
「男の本能ですね。戦うか逃げるか」
「でも、逃げ切れると思ってるのかな。ミユリさん、追わなくて良いのか」
「必要ありません、テリィ様」
スタンがホールを駆け抜けたトコロで、にっこり微笑む2人のメイドに出くわす。
得意?の回れ右で、逆方向に走り出した途端、階段を踏み外しハデに転げ落ちる。
「呪いは信じないけど…コレは大凶だな」
"ミミコ女王"が踊り場に張ったポスターの中で笑ってる。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
解散が決まり、後片付けが始まった捜査本部。
「スタンが全て自供したわ。あの晩、自然教育園の森で、ニゴルにポニテになるよう迫り、キモがられたから殺した」
「ヲタクにキモいは禁句だな…もともと棺に入っていたミイラはどーなったのかな?」
「劣化が進んで、布を外し外気に触れた瞬間、粉々になったらしいわ」
すっかり体調が回復したラギィ。慣れないミニスカでカラダが冷えたようだ。何で捜査中にミニスカに着替えたのか謎。
「残った布で、ミイラ処置を施したニゴルの遺体を包んで封印。数ヶ月後、棺の中でミイラの出来上がりょ」
「メデナ殺しでは、博物館のバールを使って石像を落とし呪いのせいになるコトを期待したってワケか」
「"ミミコ女王"のミイラを発掘した3人が死んだ。やっぱり呪いはモノホンね」
ムーンライトセレナーダーがつぶやく。
「あ、呪いと言えば…」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
万世橋地下の拘置所。
「あ、貴女は…ムーンライトセレナーダー?モノホン?マジで私と同い年ぐらいなのに、セパレートのメイド服なのね。寒くない?」
「あのね…チャカ・テテテ、取引しない?知り合い(でテリィ様の元カノのw)次長検事に相談したら、協力次第で脅迫罪を取り消すって逝ってくれてルンだけど」
「協力って何ょ?」
簡単には飛びつかないチャカ・テテテ。
「ウチのTOにかかった呪いを解く方法を教えて」
「え。何で?」
「ルパト・ベントを説得したわ。企画展の後、遺物はアイヌの博物館に返却される」
さすがに驚くチャカ・テテテ。
「あの強欲なルパト・ベントがソンな条件を飲んだの?」
「彼は、今回のキャンペーンの告知に失敗して、世間からバッシングされた。娘さんが学校でイジメに合ってルンだって。パパは名誉挽回に必死なのょ」
「誰にでも弱点はアルのね。気がつかなかったわ。OK、ムーンライトセレナーダー。貴女のTOのお耳を拝借」
チャカが手招きスル。彼女は、僕の耳元で一言、正確には二言ナンだけどささやき、指をクルクル回して僕にうなずく。
「ソレだけ?」
今度はチャカがうなずく。ミユリさんは微笑んでいる。
「あと、も1つ。神田リバー水上空港まで送ってょ」
「ケッテンクラートの後部座席だぞ」
「あのピンクの奴?」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
その夜の"潜り酒場"。
「テリィたん、上機嫌ね」
「ようやく呪いから解放されたンだ」
「あら。どうやって?」
常連のスピアが絡む。カウンターでトマトを…刻んでる?
「呪いの解き方は内緒さ。試しにワザと危険な道を歩いて帰って来たンだ。ところで、またまたトマトは何かの事件に巻き込まれてるの?」
「サラダょ。ヲタ友が遊びに来るの」
「ハッカー仲間か?」
カウンターの中でミユリさんがクスクス。
「いいえ。考古学者だそうですょテリィ様」
全力で嫌な予感がスルw
「ミユリ姉様、スピア!ただいまー。ねぇ今週末の"私の"企画展、絶対に来てね!はい、タダ券。売店のコーラが無料になるわ…あら、テリィたん?」
「レィル・チェル"恋人"学芸員w いつの間にココの常連になったンだ。僕は、一応オーナーなんだけどな」
「でも、テリィ様。"潜り酒場"は3回来たら常連だとおっしゃったのはテリィ様です」
そーゆーミユリさんは雇われメイド長ナンだぞ…ってか、もう3回も来てるのかレィル・チェル。いったいいつの間にw
「ソレでね、テリィたん。実は、来週の企画展で発表スルけど、スゴいコトがわかったの。日本の古代史を塗り替える令和の大発見ょ」
「うーん嫌な予感しかしないな」
「"ミミコ女王"と卑弥呼のDNA鑑定が一致したの。どーやら邪馬台国は秋葉原にあったみたい!」
ヤメてくれ。
おしまい
今回は、海外ドラマによく登場する"ミイラ殺人"をテーマに、令和のインディ・ジョーンズ、博物館の癖のある学芸員達、次々と不審な死を遂げる考古学者、大学院生、強欲な出資者、闇の鑑定人、謎多き超古代の女王、ミイラ殺人を追う超天才や相棒のハッカー、ヲタッキーズ、敏腕警部などが登場しました。
さらに、超古代業界の内情や業界を選ばないモテモテ女子の悩みなどもサイドストーリー的に描いてみました。
海外ドラマでよく舞台となるニューヨークの街並みを、すっかり"ヲタクのニューヨーク"と化した秋葉原に当てはめて展開してみました。
秋葉原を訪れる全ての人類が幸せになりますように。