オーバーラップ
プレイヤーネーム:アリア(Lv99 Ex39600)
「ツッコミ所がありすぎる!」
『そうでございましょうねぇ……』
なんだか面白がっていそうな声音だった!
「まず、“向き”を教えてくれよ。地区名だけじゃ分からないよ!」
『スタートの北狄地区が左上、ゴールの金井新保地区が右下でございます』
「マージン20kmってなんだよ」
『ラインが400kmですから、そうなるかと』
「そうだそうだよラインだよ。このマップでこの長さで――400って、間違ってるでしょうが!」
『確かに。このマップでこの“水平距離”ですと、約10.4kmでしょうか』
「水平距離ィィィ!?」
『ハイ。アリア様は、ゴール地点を“金井新保地区の直下”に、“スタート地点との高低差”約399kmの地下に、設定されました。で、ございますれば、三角関数により、ライン長は400kmということに』
「それ、いいの?!」
その場所は、地球内部、“マントル”となる。
『リョム様におかれては、これまで……経験がまだ浅いということもあり、スタート地点、ゴール地点を、行儀良く、海抜0m位置に設定されておりましたね。その、固定観念に囚われているのではないでしょうか』
「――ですが、現実的に、“そんなとこ”に行けないでしょう?」
『ゴールはゴールラインの外側、ただそれだけでございます』
「……」
『もう、よろしいでしょうか?』
「まだ言いたいことがある」
『どうぞ』
「なんだよこのバトルゾーン! そっくり僕のゾーンじゃん! 僕、勝ち目ないじゃん! せいぜい、ゴールアウトして、経験値の確保を期待する程度しかやれることがない!」
勝利の条件は、自分はセーフのまま、相手をゾーンアウトさせることだ。マップを見るに、自陣の四方が相手方セーフゾーン。なるほど勝ち筋が完璧なまでになかった。
「ねぇ、不足なく、余りなく、寸法に合わせて、こんなに綺麗に全体を覆い尽くすことなんてできるはずないよ。これ、完全に後出しジャンケンじゃない? 何らかの不正があったと思えるんだけど――どうよ?」
『リョム様のゾーンを盗み見てから自分のゾーンを設定したのでは、との御言葉ですが、事実とは異なっております。
先にアリア様のゾーンがあって、後からリョム様のゾーンが重なったのです。
これについては、アリア様が以前に口になさった言葉がございますので紹介させて頂きます。曰く――
“島に来るプレイヤー兼観光客の皆さんは、みな、同じコースを設定する”
だそうでございます……』
顔が熱くなった。