ゴール
僕は遠慮なくアリアの裸の身体を荷物のように抱え上げ、走り、“アリアのゾーン”のゴールアウトへ。
ここに、真っ当に、勝利を手中に収めたのだった! イェイ、やったね!
『やったね、じゃないわよ!? 貴方が貴方のゾーンからサイドアウトした瞬間、貴方の負け確定でしょうが!“そこ”は、わたしのゾーンだったんだから!』
ごもっとも、と一つ頷き、僕は解説する。
「実は、僕はまだ、サイドアウトしていないんだ。今いる“ここ”は、僕のゾーンの内なんだよ」
『なに言ってんの?』
「僕はスタートインした直後、運営からバトルゾーンのマップを見せられたとき、“申し込んだ諸元が正しく反映されていない”とクレームを入れたんだ。
両津湾からスタートし、真野湾にゴールするのは間違っていない。
ただ途中が正しくない。
僕は、地球を一周してから、ゴールしたかったのさ。
ライン、40014.6km。全幅、2000.73km。
これが、正解。――だから、僕の勝ちなんだ。
唯一の懸念材料が、キミから、僕のゴールアウトを恵まれてしまうコトだったんだ。
僕の勝利が確定する前に、僕のゴールが決まってしまうという、判定が実に微妙なものになるからね……。
“ゴールはゴールラインの外側、ただそれだけでございます”からね。
ま、キミが“女王”であってくれて、助かったよ(笑)」
『そんなのアリ~?』
「キミだって人のこと言えないと思うよ」
『貴方のクレームが認められたとき、こちらに更新の通知が来なかったわ!』
「ノーコメントとさせてもらう」
『実質、後出しジャンケンじゃない!』
「キミは、百回に及ぶルーチンワークに慣れきってしまって、確認をほったらかしにしてしまったんだ。それが、敗因だと思うよ』
必死のアリアが口走った――
『ルールにあるでしょう?“道義上感心できない”って。これ、絶対おかしいよ!』
「――仰るとおり。こんなこと、もう今回限りだと思うよ。僕も、キミもね」
『……』
僕らは巨人のまま真野湾まで歩き、そこで人間サイズに戻ったのでした。
(青線は参考)