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エピローグ 帰還

 その後、ギルドに戻る。


 不安そうな顔をしたミントさんがギルドの入り口で待っていた。


 「皆さんっ。ご無事で何よりですっ。」


 ギルドに入ると他に冒険者は誰もいなかった。


 緊急対応ということで少し閉館時間には早いが閉めたみたいだ。


 メンゼフが皆に宣言する。


 「ルークの件、捕縛できたのはみんなのおかげだ。ありがとう。もちろん、巻き込んでしまったオレの責任だ。申し訳ない。お礼と言ってはなんだが、金銭的にも精神的にもギルドが責任をもって対応させてほしい。」


 エンリルの弓矢のミナトは「いえ、傷も癒やしてもらいましたし大丈夫ですよ。冒険者にはあるリスクですし。」と言った。


 「そういうわけにはいかねえ。帝国議会からたんまりと報酬は出るんだ。ギルドの落ち度だ。しっかりとサポートさせてくれ。」


 そうなのね。それじゃあお言葉に甘えようかしらとミナトがうなずいた。


 「お金の件は少し待っていてくれ。来週中には議会で結論が出るだろうから。そしたら報酬も渡せるだろう。」


 ニンマリと笑ったメンゼフが続ける。


 「今日のところと言ってはなんだが、オレはギルド長としてねぎらいの意味も兼ねて飲み会を提供する義務がある思う。オレのおごりで飲み会を行おう。参加するやつは? 」


 いつの日にか同じようなことを聞いた気がするが、もちろん参加だっ。


 飲み会は冒険者、全員の楽しみと言っても過言ではないだろう。


 エンリルの弓矢やギルドメンバーもおーと腕を上げている。全員参加するみたいだ。


 

 「よしっ。それじゃあ、買い物担当は…オレとカインでいくかっ。」


 メンゼフがそう言うと、女性陣から不満の声が上がる。


 「カインは人気だなっ。じゃあそうだな…公平にじゃんけんでもどうだっ」


 エンリルの弓矢の女性陣と十六夜さん、ミントさん、そしてマンゼフさんもなぜか参加してじゃんけんが始まった。




 「カインさん、ごめんなさい。じゃんけんで私が勝ってしまって…。」


 ミントさんが申し訳無さそうな顔で言った。


 「じゃんけんは運ですから。そこまで周りに気を使わなくても良いと思いますよ。」


 じゃんけんで勝利したのはミントさんだった。


 二人で明けの明星まで買い出しに歩く。


 ミントさんが少し先を歩く。


 「カインさん、今日は本当に大変でしたね。それでも解決するのは、さすがカインさんですっ! 」


 「いえいえ。犯人はルークだという仮説がたまたま当たったから解決できただけです。僕今日も死にかけましたし。運が良かっただけですよ。」


 そうなんですねとミントさんが言う。


 ミントさんはあまり元気が無さそうだ。


 「でも、カインさんじゃなければ解決できなかったと思います。本当に…先輩として鼻が高いです。」


 ミントが話しながら振り返り、笑顔でカインを見つめる。


 ミントはカインに抱きつく。


 「みっ…ミントさん」


 「カインさんもう少しだけ、このままでいさせてください。」


 カインはミントを強く抱きしめた。


 「カインさんが皆さんからモテていることも、わたし知っています。でもやっぱり好きなんです。」


 カインは困った顔をして頬をかく。 


 「ミントさんありがとうございます。すごく嬉しいです。でも……。」


 ルークは家庭の事情を説明した。調べたらポーン家に籍がまだ残っていたこと。家を飛び出してから一度もあっていないが、隣国の貴族の娘と婚約状態にあること。


 もちろん。その娘との自由恋愛で婚約を結んだ訳ではない。ポーン家当主である父アルベルトが決めたことであった。


 ミントさんは静かに頷いて笑った。


 「カインさんが貴族なのも知っています。貴族が多妻制なことも調べました。その…結婚したいとかじゃないんです。わたしはずっとカインさんと一緒にいたい。」


 そう言うと、ミントはカインのに口づけた。


 カインは顔が赤くなる。


 「みんなには悪いですが、少しだけ小川の椅子に座って話しをしましょう。」


 ミントさんがニヤッと笑いウインクした。




 「覚えていないかもしれませんが、小さい頃、わたしと母はカインさんに命を救われているんですよ。」


 「えっ…」


 カインにミントさんと小さい頃に会った記憶はなかった。


 ふふふ。覚えていないですよねとミントが笑う


 「ずっと会ってお礼を言いたいなって思っていました。何回も言おうと思っていたんですけど、いい機会なので言わせてもらいますっ。母と私を救ってくれて、ありがとうございます。」


 深々とミントが頭を下げる。


 「そうなんですね。僕もイグニスの槍を追放されてから、自分を見失っていました。そんな僕を支えてくれたのは、ミントさんあなたです。こちらこそありがとうございます。」


 二人して頭を下げる。


 周りから見たら変な人ですねとミントが言い、二人で笑った。


 「これからもよろしくお願いしますね。カインさん。」


 「こちらこそよろしくお願いします。」


 二人は握手をかわす。


 「そろそろ急がないとです。カインさん走りますよっ。」


 走って明けの明星に向かう。


 二人が座っていた椅子は夕日に照らされていた。


 

 「よしっ。みんな酒を持ったな。今日はカインおまえが乾杯しろっ」


 周りがカインを囃し立てる。仲のいい人たちだが少し照れるな。


 「みなさん、今日はお疲れ様でした。本当に無事で良かったです。ルークとは色々なことがありました。人生を絶望していた時、救ってくれたのはギルドのメンバーです。みなさんと働けて僕は幸せです。」


 カインが頭を下げる。メンゼフさん含めて皆が笑っている。


 「長い挨拶になりましたが、今日は飲みましょうっ! 乾杯っ! 」


 「「「乾杯っ! 」」」


 皆でわいわい言いながら盛り上がる。

 

 エンリルの弓矢のミナト、シンラ、ユキナとも話をした。


 どうやら疫病の問題解決が評価されて、エルフの街の専属で冒険者をしないかと誘われているらしい。


 「カインが付いてきてくれるなら、帝都から離れてもいいわっ。」


 ミナトが酒を一気に飲み干しながら、カインに絡む。


 「僕はギルドの職員なので、出張する機会が有ったら、ご一緒させて下さい。」


 「うふふ。良い子ね。それも楽しみにしておくわっ。あらっ美味しそうなご飯ね。ちょっと食べに行ってくるわ。」




 扉がバンと開き、妹のサナが入ってきた。


 「お兄様、心配しましたのよっ。」


 サナがカインに抱きつく。


 「サナっ。公共の場で抱きつくんじゃない。それに寮の門限があるんじゃないのか。」


 「何を言ってますの。お兄様が大事件に巻き込まれたんですのよ。緊急事態ですわっ。」


 勝ち誇って言うサナにミナトが絡む。


 「カイン、誰よその小娘は。」


 「あら私のことを知らなくて。私はサナ=ポーン。カインお兄様の妹ですわっ。」


 「カッカインの妹。それはそれは…はじめまして。私はエンリルの弓矢のミナトよ。よろしくね。」


 妹と聞くとすぐに仲良くしようとするのはどうかと思うぞミナト。


 お酒がどんどん進む。


 そうだ。イブを出すのを忘れていた。ご馳走を食べれないと機嫌悪くなるからな。


 少しお手洗いに。と言い、部屋を出た。


 戻ろうとすると、メンゼフさんが廊下で酒瓶を片手にタバコを吸っていた。


 どうやら僕を待っていたみたいだ。


 「おう、カイン少し良いか。」


 「はい。もちろんです。」


 メンゼフがカインを連れて屋上に行く。


 「カイン、イブ出してくれ。オレからもお礼を言いたい。」


 『イブ、おいで。』


 イブが人間の姿で現れる。すこぶる機嫌が悪そうだ。


 「悪かったよイブ。まだまだご馳走もあるから、戻ったら一緒に食べよう。」


 「もう、せっかく助けてあげたのに、このままお預けかと思ったわ。カインも頑張ったから今日は許してあげる。」


 「オレからもお礼を言わせてくれ。イブがいなかったらカインや十六夜も死んでただろう。ありがとう。」


 「大丈夫だよ―。もうご飯食べてきて良い? 」


 どうやらイブはご馳走を待ちきれなかったみたいだ。走って屋上を出ていった。


 メンゼフさんはタバコを吸いながら話しかける。


 「なあカイン。おまえは今回のルークの件、どう見る。」


 「正直、ルークが一人で計画を考えつくとは思えません。見たことがない魔法具も揃えていました。誰かが協力していたと見て間違いないでしょう。」


 メンゼフが頷く。


 「そうだな。どうも引っかかる。ルークは今まで恐喝含めてその場で思いついたような犯罪を犯していた。カインへの復讐だとしてもここまで頭が切れるとは考えにくい。何か裏で動いているやつがいそうだな。」


 沈黙が流れる。


 「なあカイン。今回イブやウンディーネはなにか言っていたか。」


 「いえ。でもまた会いましょうみたいなことは言っていた気がします…」


 「そうか。議会としても動いているが、まだなにも<災害>については掴めていない。おまえさえよければだが…地方を回って調査してくれないか。」



 「もちろん。ギルドでは新しく人を雇う。姫様への教師もあるだろう。何カ月も行けとは言わない。一週間くらいの単位でお願いしたい。」


 「はいっ僕で良ければ。ニコラとルークどうなりそうですか。」


 「ニコラはおまえが言った通り、ギルドで面倒を見ようとする話だが数年は牢屋だろうな。弟だけはなんとか面倒見てやれそうだが。さすがにギルド職員を刺してるんだ。かばいきれないだろう。ルークは…おまえは知らない方がいい。」


 そうですかと返事をする。罪を犯したんだ報いを受けないといけない。


 返事を聞いて、メンゼフがカインを見つめる。


 「カイン、オレはなおまえがイグニスの槍にいた頃からずっと見ていた。ずっと頑張っていたもんな。家から飛び出したことは噂でしか聞いていないが、ルーク含めたパーティから奴隷のような扱いうけていて追放されたこと。ギルドで働きだしてからも色々と噂されたりと嫌なことがあっただろう。いや、嫌なことしかなかったかもしれねえな。」


 メンゼフが続ける。


 「でもなカイン。おまえはそんな状況でもガムシャラに前に進み続けた。まさにチェスで言うところのポーンだ。おまえは毛嫌いしているが、帝国で最も位が高いポーン家の一員なんだと胸を張って良いと思うぞ。」

 

 「お前の親父は強烈だし、ポーン家の当主として認めてくれないかもしれない。だがな、王様も姫も帝国議会もオレたちギルドメンバーもカインのことを認めているんだぜ。」



 カインは無意識に涙が頬を伝う


 オレは頑張ってきていたんだな。家族から迫害を受け、イグニスの槍からも追放された。


 今まで頑張ってきたことは無駄ではなかったんだ…


 「決してポーン家に戻れと言ってるわけじゃねえぞ。カイン。お前はギルドの貴重な戦力なんだ。それだけのことをしてきたんだから、過去にとらわれすに胸を張って生きてほしいと思ってな。」


 「おまえは頑張ってるぞ。カイン。おまえは最強のギルド職員だ。」


 強くなりたいと思った。いや、強くならなければ生きていけなかった。冒険者で一番になることが強くなることだと思っていた。でもギルドメンバーの優しさに触れてそれは誤りだと悟った。


 カインは嬉しくて涙が止まらなかったのは人生で初めてだった。


 「まあよ、オレは話だけは聞けるからよ、何かあったら頼ってくれ。特に女関係でな。」


 マンゼフが笑いながらカインの頭を雑に撫でた


 「ありがとうございます。これからも頑張ります。」


 「頑張り過ぎんなと言ってるんだけどな。だがそこがお前の魅力なんだろうな。」


 空を見上げると星が輝いている。なんて世界は奇麗なんだろうとカインは感じた。


 「あ~こんなところにカインがいるっ。」


 エンリルの弓矢のミナトとシンラ、ユキナが入ってくる。


 「わたしのカインちゃんが泣いているわっ。メンゼフさんがいじめたのねっ。お姉さんが慰めてあげるっ。」


 辞めてくださいと言うが3人がカインに抱きついて離れない。


 「カイン…他の冒険者から刺されないようにな。そろそろ戻るか。今日の主役はカインだからなっ。」



 部屋に戻るとイブがすごい勢いで食べ物を食べていて幸せそうだ。妹のサナと話している。どうやら馬が合うようだ。マンゼフさんは大笑いしながらミントさんと話をしている。


 部屋を見渡して、どこの会話に入ろうかと考えていると、十六夜がカインに話しかけた。


 「カイン。今日はありがとう。あなたがいなかったら私死んでた。完全に足引っ張ったもの。」


 「いえ。ニコラを管理できなかったのは皆の責任だと思います。」


 「あらっ優しいのね。これはお礼。」


 十六夜がカインの頬にキスをする。


 「あ~お兄様がキスしてます。ハレンチですわっ。」


 妹のサナが叫ぶと皆カインを見て。カインに寄ってくる。


 ずるいだの私もしたいだのクレームが聞こえるが、無視して叫ぶ。


 「明日は休日だし、今日は皆で朝まで飲みましょうっ。乾杯っ! 」


 皆、笑顔で「乾杯っ! 」と叫ぶ。


 オレはこのギルドのみんなをこれからも守る。


 それがオレが見つけた『最強だっ。』


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