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第九十六話 頭脳戦

グリーズマンとの対決は最終局面を迎えていた。


 現状は俺たちの絶対的な有利。

俺の戦略が完璧にはまっている。


 グリーズマンが事前に用意した攻撃は何一つ通用しなかった。ゴーレムに勝つには、キメラが戦闘不能になる前に新しい戦略を生み出すしかない。

 このまま相手が有効な手を打てなければ俺たちの勝利である。



 

 今も少しずつゴーレムがキメラの戦闘能力を削っている。

 融合されたモンスターが次々と機能停止に追い込まれている。キメラの表面は血で汚れ、ひどい有り様だった。機能停止したモンスターが増えれば、打てる手は狭まってくる。



 試されているのはグリーズマンの頭脳。

 この局面を打開する戦略を思いつけるか。キメラが戦闘不能になるまで、おおよそ20分。グリーズマンにとっては長すぎる時間になるだろう。


 俺とソフィーナはやることがない。全てをゴーレムに任せている。

 もしグリーズマンが戦略を上回る策を思いつくことができたのならば、俺たちの負けだ。




「……うぐぐぐ……」


 必死の形相で考えるグリーズマン。

 手が震えている。部下に戦略を聞くこともできない。グリーズマンにとっては、自分の命運は部下に握られるのは我慢できないことに違いない。


 最後まで積み上げてきた傲慢さに縛られているのだった。



「キメラ!! サラマンダーの炎弾を吐け!!」

 

 グリーズマンがわめくと、融合されたモンスターの一体、サラマンダーの口が開く。

 ドラゴンのブレスほど広範囲ではないが、いくつもの炎がばらまかれる。


 甘い。

 その程度ではゴーレムはとらえきれない。

 サラマンダーの炎弾が効力を発揮するのはもっと距離が近い時だ。距離が遠ければ炎をかわすは難しくはない。攻撃する選択を間違っている。


 現にゴーレムは簡単にかわし、すれ違いざまに剣で斬りつける。

 サラマンダーの首が斬り飛ばされ、また一歩ゴーレムの勝利に近づく。



「油だ。油をまけぇ!!」


 それは確かに有効な策だ。

 地面に油をまけば、ゴーレムの移動がかなり制限される。


 だが、遅すぎる。

 わずかな時間が生死を分ける戦いの中では、のんびりと油をまいている時間はない。

 

油をまきはじめた瞬間、ゴーレムに潰される。有効な策だったが単体では通るはずもない。もっと他の攻撃にからめるか、相手を動けない状態にしてから、油をまかなくてはならない。


 

 キメラは融合されたモンスターがバラバラに動いている。

 目の前のゴーレムを攻撃するだけでは、速さと頭脳に勝るゴーレムをとらえきれるはずがない。



 圧倒的な戦闘能力の差があれば、押し切れたかもしれない。

 あるいは俺が正面からぶつかるような戦いを選択してれば。それがグリーズマンにとっての戦いというものなのだった。


 選択するわけがない。

 子供の喧嘩ではないのだぞ。

 



 はっきりした。グリーズマンに戦闘センスがない。


 権力争いとモンスターの研究ばかりで戦いの経験がまるでないに違いない。部下の中には経験があるのもいるだろうが、助言を聞き入れる性格でもない。

 大勢いる部下たちは文字通り役立たずとなり果てている。仮に俺がグリーズマンの部下にいても状況は同じだったはずだ。



「……ハァ……ハァ。ひ、卑怯だぞ。逃げ回るなんて……。正々堂々正面から戦え!」


 すでにグリーズマンは息も絶え絶えだ。

 外見が一気に老けたように感じる。まるで老人のように感じられる。


「卑怯? 真剣勝負に卑怯も何もないだろ?」



 そもそも逃げ回ることは対決のルールで認められていることだ。

 正面から激突して勝てないならば、頭を使って勝つための戦略をねっただけのこと。非難される理由は存在しない。


 それに。


「卑怯なまねなら、あんた自身がさんざんやってきただろう? 自分の都合のいい時だけ正義を持ち出さないでくれないか」


 もっとも今さら謝られても手加減するつもりなどないが。

 叩ける相手は徹底的に叩け。冒険者の鉄則である。これほど同情心がわかない敵も珍しい。良心が痛まない。ある意味、助かっている。



 すでにグリーズマンの限界がみえていた。

 これ以上、戦いに関する引き出しは存在しないし、即興で思いつけるようなセンスもない。

 

 モンスターを融合する技術は高いが、技術を戦い生かすための努力をしてこなかった。

 世界を変えうる可能性さえあったのに。本心からもったいないと思う。



「ググゥ……。キメラ! 突撃しろ!!」


 グリーズマンの無駄なあがきが続く。

 頭脳の底がみえた以上、勝敗は決まりかけている。


 キメラの突撃は迫力満点だが、あたらなければ意味はない。

 全ての攻撃が同じだ。大振りにすぎる。キメラという魔法生物は戦うためというよりも、技術の見世物として生まれたのかもしれない。


 

 学園の教授同士の対決ならば、それでも通用したのだろう。


 今回は俺という対モンスターの専門家と戦ったのが不幸だったといえる。



 すでにキメラはぐらついている。

 時間切れはもうすぐだ。


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どうかよろしくお願いします。

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