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第九十五話 ゴーレムの反撃

 キメラの攻撃の間をぬって、ゴーレムが突撃する。

 これまで逃げ回っていたのが嘘のような勇敢な行動である。キメラの攻撃が遅くなり、攻撃の機会がきたとゴーレム自身が判断したのだ。

 


 この判断の速さこそ、意思のあるゴーレム、最大の長所。



 判断をグリーズマンに頼るキメラに反応しきるのは不可能だ。

 自らが考えるからこそ、一瞬のうちに行動を変えることができる。


 

 ゴーレムはキメラに接近すると、手に持ったオリハルコンの剣で斬りつける。


 ただし、全力ではなく軽く……だ。キメラにとってはかすり傷にすぎない。

 それでも確実に相手を傷つけることができた。確実に戦略は進行し、勝利に近づいている。あとは同じ攻撃をキメラが倒れるまで繰り返すだけ。


 一瞬後、ゴーレムはその場を離脱する。


 直後にくるキメラの攻撃をかわす。

 軽い斬撃だったからこそ、態勢が崩れず、攻撃がかわせる。



 俺が教えたとおりの戦略を完璧にこなしている。

 

 ソフィーナ。やはり君のスキルは素晴らしい。

 俺たちのゴーレムの未来がここにある。2人だからこそ、実現した戦略だ。




「た、たかがかすり傷じゃないか! その程度では私のキメラはびくともしないぞ!」


 グリーズマンの声が震えている。


 さすがに戦況の苦しさに気がついたのだろう。

 一撃一撃はかすり傷だが、いずれは致命傷になり得る。なにしろ全ての攻撃をかわされているのだから。


 傷が増えれば動きも鈍くなる。

 そうなると、ますます攻撃を受ける機会が増える。


 悪循環だ。

 グリーズマンは戦いの素人だが、頭は悪くない。敗北への道筋ははっきりとみえているに違いない。



「す、すごいです! はじめからこれが狙いだったのですね!」


 興奮気味にソフィーナが話しかける。

 ソフィーナでも理解できるほど、はっきりと戦況はこちらに有利に傾いている。

 攻撃をかわして、打撃を与え続ける。いずれは勝つに決まっている、子供でも理解できるだろう理屈である。



「ああ、君のおかげでここまでくることができた。今のところは完璧に戦略が進んでいる」


「……あれ? あまり嬉しそうではありませんね」


「本当の勝負はこれからだからな」


 ソフィーナと会話している間にも、少しずつキメラが削れていく。

 俺たちのゴーレムはキメラの攻撃を完全に見切ったようだ。攻撃する機会が増えている。訓練でみせた学習能力を本番でも発揮している。


 キメラは状況の変化について行けていない。

 単発の攻撃をくり返すだけだ。



「キメラ!! ゴーレムを振り払え!!」


 グリーズマンの指示を受けて、キメラが巨大な尾を振る。

 ここまで風圧が届くような威力だが、ゴーレムは後ろに飛びのきかわす。


 両者の距離が開き、にらみ合うような形になる。




「……前にもいったが、俺たちの戦略の弱点は何だと思う? ソフィーナ」


「え!? で、でも完璧に通用していますよね。もう少しで勝てそうではありませんか!」



 再びゴーレムが飛びかかり、キメラを少しずつ刻んでいく。

 料理人が食材を刻む時のような正確さと速さであった。



「もう少し……というところが問題だ。弱点のないモンスターが存在しないように、弱点のない戦略もまた存在しない」


「えっと……」


 考えこむソフィーナ。

 そんなに難しいことではない。ゴーレムが戦っているうちに、すぐに理解するだろう。


 


「キメラアアア!! 煙幕を張れええ!!」


 キメラに融合されたモンスターの1体が黒い煙を吐き出す。

 体が巨大なため、煙に隠れるきることはできないが、ゴーレムは近づけなくなる。

戦いの素人にしては、なかなか悪くない策を取ってきた。


 今のところ、ゴーレムは視覚からでしか、敵の情報を得ることができない。

 

 煙幕は簡単かつ効果的な策であった。もっと大量に吐く能力があれば、ゴーレムに苦戦することはなかっただろう。



「なめるなよ!! 若造がぁ! 私は20年もモンスターの改造をやっているのだ!!」


 グリーズマンが荒い息を吐きながら、足を踏み鳴らす。

 もはや貴族の威厳などどこにもない。ただただ必死な中年の男である。最初からそのくらい必死になれればよかったのにと思わないでもない。




「……あっ! もしかして時間が……」


「そうだ。俺の戦略ではキメラを倒し切るのに時間がかかりすぎてしまう。その間にグリーズマンに対策を打たれる可能性がある」


 ゴーレムがキメラを倒しきるのにどれくらいの時間が必要だろうか。

 相手は巨体だし、ゴーレムの攻撃は軽い。10分から20分くらいかかるに違いない。戦いの中の時間としては非常に長い。


 グリーズマンはその間にいくつもの策を試すことができる。

 選択肢は無限だ。攻撃方法を増やしたことは強さには繋がらなかったが、打てる手の幅は広がった。

 もちろんキメラが傷つくたびに選択肢は狭まることにはなるが。


 その間、俺たちはみているだけだ。

 全てをゴーレムに任せると決めた。対抗策は打てない。



 つまり残り20分。


 グリーズマンがゴーレムを倒せる正しい答えを導き出せば勝つ。

 出せなければ負けとなる。



 これから。

 試されているのは、俺たちではない、グリーズマンの方であった。


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どうかよろしくお願いします。

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