第九話 そのころの元パーティー①
グェントは大声で叫んだ。
「くそっ! くそっ! くそぉぉぉ!!」
どうしてこうなった!?
俺は最強の冒険者だ。誰にも負けるはずがない!
これは夢だ。あり得るはずがない……。
グェントとレイナはダンジョン内を逃げ回っていた。
すでに自慢だった装備もボロボロになっている。ノエルを追放した時とは、比較にならぬほど落ちぶれた姿だった。
後ろにはモンスターの大群が迫っている。
雑魚ばかりだ。なぜ逃げなければならないのか!? くそっ!!
「グェント待ってよぅ。魔力が尽きて魔法も使えないし、もう走れないよ」
レイナが泣き言を言う。
後衛だから体力がないのだ。
「うるせえ!! 黙れ! お前が足止めになって死ね!」
「そ、そんなぁ」
ダンジョンに入った当初は、全てが上手くいっていた。
俺は最強の剣士だ、雑魚モンスターごときに負けるはずもない。ダンジョン最下層に到達しても簡単に勝てた。拍子抜けしたぐらいだ。やはりダンジョンを制覇するのは俺しかいないと確信した。
ところが、一匹のモンスターの不意打ちから何もかもが崩れた。
不意打ちされようが簡単に勝てるはずだった。ところが戦いに時間をかけているうちに、モンスターがモンスターを呼んできた。気がつけば、逃げるしかないところまで追い込まれていた。
今だかつて、これほど無様な逃走は一度もなかった。
モンスターに負けるにしても、もっと安全に逃げることができていた。命からがら逃げるなどあってはならないことだ。
この場にノエルがいれば。
レイナの代わりにモンスターの餌にしてやれたのに。
くそっ! ただで追放したのは失敗だった。最後の最後まで使い潰してやればよかった。能力のない奴は俺のために死ぬのは当然のことなのだ。
どれほど逃げたのか。
気がつけばモンスターの姿は消えていた。
「ちくしょう。俺ともあろう人間が……」
こんなはずではなかった。
最下層に行き、無双をして、ダンジョンのボスを倒す。実力は十分だったはずだ、ちょっとした不運にあって予定が狂ってしまっただけだ。
俺は悪くない。最強なのだから。
レイナがおそるおそる語りかける。
「ね、ねぇ。もうちょっとパーティーのメンバーを増やさない? やっぱり二人じゃ最下層は苦しいよ」
「レイナてめえ! 俺の力が足りないって言うのか?」
レイナの首を掴む。
苦しそうにレイナがもがく。誰だろうが俺を侮辱する人間は許さない。
「い、い、いや。そうじゃないよ。グェントがいちいち雑魚モンスターを倒すのは、効率が悪いと思って……」
「……ふんっ。確かにそうだな」
いちいち俺が雑魚モンスターを相手する必要などない。
雑魚の相手は雑魚がすれば良いのだ。
レイナの首から手を放す。
「ゲホッ、ゲホッ」
苦しそうにレイナがもがくが知ったことか。
それよりも、メンバーを増やすのは悪くないアイデアだった。
俺が新たにパーティーを募集すれば、希望する奴が列をなすだろう。
その中から使えそうな奴を選べばいいのだ。
いざとなったら使い潰せばいい。簡単だ。
俺のために死ねることを、ありがたく思って欲しいくらいだ。
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