第八十六話 自立型ゴーレム開発 七日目後半
逃げ遅れたゴーレムが炎に包まれる。
凄まじい炎の勢いだが、ドラゴンのブレスも同じくらいの威力がある。乗り越えなければ勝ち目など存在しない。乗り越えてもらわねばならない。
「スキル発動「土操作」!」
ゴーレムがいるだろう地面が盛り上がっていく。
土表面が焼かれていくが、操作対象はいくらでも追加できる。地面ごと燃えるゴーレムを持ち上げる。俺たちのそばまで運ぶ。
「土操作」スキルにはこんな使い方もできる。殺傷能力が低い分、使い方の範囲が広いのだった。
油から離してもまだゴーレムは燃えている。
まるで炎の塊である。
「ソフィーナ。水を」
「は、はい!」
このような状況に備えて、大量の水を用意していた。
元より一回で成功するとは思っていない。成功するまで何度でも挑戦するしかない。
炎の塊に水をぶっかけると、ジュウッと、肉が焼くような音がする。やっと火が消える。
見た目は火だるまになる前と変わっていないが、全ての魔法陣は焼き切られているだろう。土自体ももろくなっているに違いない。
全身の魔法陣が焼き切られては修理などしようがない。
今回も防御面に時間を使う余裕が存在しない。一撃でもドラゴンの攻撃を食らったら終わりである。それだけドラゴンというモンスターの攻撃は破壊力がある。
全ての攻撃をよけるしか勝つ道はない。とはいえ、ドラゴンの攻撃は重いが、大振りでもある。全て避けるのも決して不可能なことではない。
「体を変えてもう一度だ」
意思があるということはいいことばかりではない。
炎から脱出する際に、わずかにためらいがみえた。恐怖……ではないだろう。ゴーレムには意思はあれど、感情はない。
現時点では原因がよくわからない。もっと研究すれば、いずれは判明するだろう。
訓練を繰り返していくうちに成功するだけの性能は持っている。やれるはずだ。
道具と生物の中間のような存在。
適した学習方法も研究していかなければならないだろう。
「も、もうやめましょう! ご主人様! ゴーレムがかわいそうです!」
ついにソフィーナが我慢しきれなくなった。
正直、ソフィーナの気持ちもわかる。ゴーレムを人間に置き換えれば、間違いなく拷問に等しい。ながめていて気持ちの良いものではない。
ソフィーナはゴーレムのことを友だちだと思っているふしがある。自分のスキルを使って生み出し、言葉をかけたのなら反応してくれる。無理もない。
俺は違う。
ゴーレムとは道具だ。情けをかけすぎては開発などできなくなる。
幾千ものゴーレムを使い捨てにして、今の性能にまでたどり着いたのだ。
「やめてどうする。残念だが、学習を続ける以外にグリーズマンに勝つ方法はない」
「き、きっとありますよ! 誰も傷つかない方法が……」
「そんなものは……ない」
あったとしても、俺たちでは実力が不足している。
完璧な理想論を口に出せる資格があるのは、世界でも数人だけだ。
ソフィーナは未熟である。世界を知らない。
だが、同時にまぶしくも感じてしまう。
それはきっと俺も大人にはなりきれていないということなのだろう。
その時。傷ついたはずのゴーレムがソフィーナの前に立ちふさがった。
両手を広げ、争いを止めるような仕草をする。
「……苦しいけど勝ちたいの?」
ゴーレムがうなずく。
何を考えているのか、本当のところはわからない。
だが、おそらくゴーレムも勝ちたいと願っている。自身には何の得もないはずなのに。
スキル主を助けたいという意識が働いているのか。
なんにせよ。
感動的な光景ではあった。
ソフィーナが涙をぬぐう。
「わかった。もう何もいわないよ」
「おーい。1体だけだがゴーレムが完成したぞ……って、なんだこの空気!?」
魔術師のリーダーが建物から出てきた。
なんとも間の悪い男である。
「なに、負けられない理由がまた1つ増えただけさ」
「あん? なんだそりゃ!? って地面が燃えまくっているじゃないか!! 何があった? 敵の襲撃か!?」
空気が読めない……とこの男をせめるのは酷だろう。
夜まで20体ほどゴーレムをすり潰して、ドラゴンのブレスを完璧によけることができるようになった。
ドラゴンを倒すための最初の1歩が完了した。次はドラゴンの肉体での攻撃をよける訓練が待っている。
まだまだ学習しなければならないことが残っている。
圧倒的に時間は不足しているが、やれるところまでやるしかない。
俺たちのゴーレムを信じよう。
ブクマ、評価をいただけると作者のモチベが上がります。
どうかよろしくお願いします。




