第八十三話 自立型ゴーレム開発 六日目前半
魔法陣を書き込んだゴーレムが完成した。
さすがに本職の魔術師は違う。たった4日で新しい魔法陣を書きあげるとは。
もっとも、ゴーレム開発を始めて以来、徹夜続きではあったが。
アレックスも戦力になってくれた。
たとえ専門外でも、学園の職員は桁違いの基礎学力を持っている。
俺自身もとても勉強になった。
魔法陣を書く能力が劇的に上がった気がする。次は俺一人でも同じようなゴーレムを作れるだろう。
辺境の街で開発したゴーレムと比べて、倍以上の運動性能を誇っている。
これだけでも素晴らしい進歩といえる。低級モンスター相手ならば十分に戦えるだろう。
それでも単独でドラゴンを倒すとなると、まだ戦力が足りない。さらなる改良が必要だ。
「あんた、頑丈だな。こっちはふらふらなのに」
魔術師のリーダーは疲れた顔をしていった。
周囲の魔術師も同様だ。すでにアレックスは数時間前に倒れてしまった。どうも頭の良さと体力は同居しないようだった。
「なに、体力が必要な職業に長年ついているだけだ。一か月間、まるで寝なかったこともある」
「あんたの職業って……いや、いいや。眠い。これで俺たちの仕事は終わりだな」
リーダーは寝室の方へ歩いていく。
足取りが怪しいかなり無理をさせてしまったようだ。
だが、ゴーレム開発はこれから。
まだまだ無理をしてもらうしかない。そうでなければグリーズマンのドラゴンには勝てない。
「待て、まだ仕事が残っている」
「ハッ。きびしい客だな。いってみろ。大金をもらっているんだ、できるかぎりのことはしてやるよ」
「これと同じゴーレムをあと100体作ってくれ」
新しい魔法陣を開発しようとしたからこそ、時間がかかった。失敗したゴーレムの残骸が周囲に転がっている。
まったく同じゴーレムを作るなら、1体当たりの時間はそれほど必要ではないだろう。ただ、100体ともなるとまた徹夜になることは確実だ。
これからゴーレムをドラゴンに勝てるまで、強くしなければならない。
短期間で強くするにはゴーレムの損傷など気にしてはいられない。簡単に替えの体を作れるところもゴーレムの長所である。
「……いいけどよ。あんただって土を固めるのにスキルを使うのだろう? 魔法陣を書き込むよりも、負担がでかいはずだ。大丈夫なのか?」
「問題ない」
あえて断言する。
上に立つ人間は弱みをみせてはならない。
さすがに対決がはじまるころにはボロボロになっているだろうが、問題はない。今回の対決で戦うのは俺ではなく、ゴーレム自身だからだ。
魔術師のリーダーはあきれたように小さな息を吐いた。
「すごいな。とても俺たちには真似できん。学園の教授様に勝つには、それくらいの気合が必要か」
リーダーは歩き出しながら、手を振る。
断る気力もないといった感じだ。この男たちは魔術師といえども雇われた人間にすぎない。本来は無理はする必要はなかった。
それでも協力してくれるのは、純粋に俺たちを応援してくれるからだろう。
「ただし、勝てよ。勝って、貴族の連中が真っ青に震える姿をみせてくれ」
「まかせておけ。絶対に勝ってみせるさ」
「では、1眠りしたら取りかかるとしよう。期待しているぜ」
彼らについては心配していない。
魔法陣を書くプロだからだ。やれるといったら、必ずやれるに違いない。
すでに窓から朝日が差し込んでいる。
今日も暖かい1日になりそうだった。
俺は部屋のすみで寝ているソフィーナを起こしに行く。
ちゃんとした寝室も用意されているのだが、ソフィーナはずっと俺のそばに居たがる。同じ部屋にいないと寝られないらしい。
「んあ?」
俺が寝ているソフィーナの肩を叩くと、薄く目を開ける。
口の周りには少しだけよだれが垂れている。
「すまないが、またゴーレムにスキルを使ってみてくれないか?」
「あ……あ…。ご主人様!? 私いつの間にか寝てしまって」
慌てて起き上がると、よだれを拭う。
他に変なところがないが、急いで確認している。
どう考えても女性のあつかい方としては間違っているな。
対決が終わったら、改善するから許してくれ。
「ああっ! ゴーレムが完成したのですね! 大きい!!」
「巨大なドラゴンと戦う以上、多少は大きくする必要があった。速度と力を両立させるには、このくらいの大きさが限界だ」
新しいゴーレムは人間の1.5倍程度の大きさになっている。
これまで開発したゴーレムの中では最大である。あいかわらず茶色の体だが、体が大きくなるだけで、どことなく強そうにはみえる。
ソフィーナが手を掲げ、スキルが発動する。
ゆっくりとゴーレムが身を起こす。
ソフィーナの方へと体を向ける。ゴーレムに意思が宿ったのだ。
「よし、ではまず俺と戦ってみようか。戦いの指導をするにも、今の実力を知らなければな」
俺は鉄の剣をゴーレムに差し出す。
ゴーレムは受け取る。それだけの動作でも意思がなければできないことだ。
「だ、駄目ですよ。ご主人様が怪我をしたらどうするのですか!?」
「それならそれで喜ばしいことさ」
自分が傷つくことを恐れていては冒険者などやれるはずもない。
戦うのは嫌いではない。今もわりと楽しさを感じている。
俺も剣を持つ。
ゴーレムと向かい合う。
「さあ、かかってこい。お前にはあと4日で、ドラゴンに勝てるようになってもらわなくてはならないぞ」
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