第七十四話 教授の弁明
「その部下のアレックスさんですが、昨日、あなたの指示があったと自白しましたよ」
「でっちあげだ!!!」
ふざけるな。
ふざけるな。
ふざけるなぁ!!
完全に罠にはめられた。
誰だ。陰謀の首謀者は。絶対に許さんぞ。
周囲を見渡すが、誰も私に目を合わせない。
私を支持しているはずの教授たちも沈黙したままだ。冷や汗が流れる。裏切ったのか、私を。
根回しが完璧にされている。もはや逃れる方法はないのでは?
「クレスト、貴様が罠にはめたのか!」
「罠? さぁ、何のことだか。私たちは理事として当然の行いをしているまでですよ」
他の理事の連中もすました表情で私を見下ろしている。
ふざけるな。見下ろすのは自分でお前らではない。
落ち着け。落ち着くのだ。
このままでは教授をクビになってしまう。理事となる野望も終わりだ。
なんとかこの場を切り抜ける方法を考えなければ。
「嫌がらせを指示したあげく、部下を切り捨てるなど見苦しすぎます。栄光ある学園の教授としてふさわしくないと思いませんか?」
「た、たかが小石につまずいただけじゃないか」
そうだ。
本来嫌がらせしたぐらいでは、教授職は解任されない。
せいぜい短い期間の研究室閉鎖がいいところだ。
それなのにクビとは。
完全に権力争いの標的にされている。
「ほう。では嫌がらせを認めるのですか?」
「い、いや、違う! 絶対に認めないぞ!! そうだ、犯人をすでに解雇した証拠はある! 記録を調べてくれればいい!」
「なるほど。しかし、こちらの記録ではアレックス君は捕まるまで、あなたの研究室に残っていた……と、なっています。もちろんこちらの方が正式な書類ですよ?」
こいつら。
書類を偽造しやがったな。
人を罠にはめるために証拠を偽造するとはなんて外道だ。
めまいがする。
机に手をつく、立っているのも苦しい。
もはや言い逃れはできそうにない。なぜだ、なぜ私がこんな目に合わなくてはならんのだ。
私は何を間違った?
あの庶民の男に関わったのが間違いだったのか。
「……私をクビにしたら一族が黙っていないぞ」
この手だけは使いたくはなかった。
一族に借りを作ったら、あとでどんな要求をされるのかわからん。
「ふむ。確かに大貴族であるあなたの一族が抗議されることになれば、少しだけ面倒なことになるでしょうね」
「そ、そうだろう! だったら……」
「そこで私たち理事会から、提案があるのですよ」
さらなる嫌な予感がした。
私が一族のことを持ち出すことを含めて、全てがクレストの予定通りに進んでいるのではないか。そうだとすれば、もう私に対抗策は存在しない。
「どうでしょう? 庶民の……いや、ノエル氏だったかな。彼と開発した魔法生物で対決してみませんか? もし勝ったのなら学園への残留を認めましょう」
「この私ともあろうものが……」
とっさに言葉が続かなかった。
庶民と戦うなど、屈辱もいいところだ。
「この天才と呼ばれた私が、あんな無学な若造と戦うだと!?」
「そう馬鹿にしたものではありませんよ? こちらで調べたところによると、ノエル君は北の大地でゴーレムを研究していたようですね。しかも爆発的に利用が拡大しているとか」
ゴーレム!?
ゴーレムだと!?
あんな土の塊。原始的な制御では魔法生物とさえ名乗れまい。
私の作ったモンスターの融合体とは比べ物にならん。
「ふざけるな! 私に庶民と技術を競えというのか!! 私は天才だぞ!」
周囲の教授たちから失笑がもれた。
ば、馬鹿な。かつては私がしゃべれば誰もが黙った。どんな意見も通った。
この状況はなんだ!? あり得ない。
クレストは腕組みをする。
小さくため息をしていった。
「そこなのですよ。我々が疑っているのは。本当は嫌がらせしようが部下を解雇しようが、どうでもよろしい。あなたはここ10年研究の成果を出せていない。やることといえば、理事の地位を狙うだけ」
「……っ!!」
「確かに家柄も大事ですが、それもこれも全ては実力があってのこと。我々は世界一の研究機関ですよ? あなたとノエル氏、無能な方には消えていただきたい」
ブクマ、評価をいただけると作者のモチベが上がります。
どうかよろしくお願いします。




