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第六十四話 冒険者流の嫌がらせ撃退法

 次の朝。


 ゴーレムたちは粉々に破壊されていた。

 砕かれた土の塊が建物の周囲に散らばっている。なんとも無残な光景であった。間違いなく嫌がらせの犯人が意図的に壊したのだ。



 犯人たちは俺たちの警告を無視した。


 次は冒険者流の方法で反撃させてもらおう。



 ゴーレムはあくまでも道具だ。

 意思はなく、労働用に使われる消耗品である。壊れるのも仕事といえば仕事ではある。

 それでも自然に壊れるのと、他人に壊されるのではまったく違う。




「ひ、ひどい……。ひどすぎます」


 ソフィーナが隣で泣きそうになっている。

 昨日はゴーレムの後を楽しそうに追っていた。たった一日だが、ゴーレムに思い入れが生まれていたのだろう。はじめてゴーレムに接した分だけ衝撃も大きかったに違いない。



 世界は理不尽に満ちている。

 この嫌がらせもその1つ。何もしていなのに、悪意を受けている。


 俺たちは理不尽を乗り越えなくてはならない。

 乗り越えてこそ、夢を実現することができるのだ。

 前向きに考えよう。俺たちに手を出すとどうなるか。学園の連中に知らせるいい機会だ。



 しかしこの世界最高の研究所でもこんな原始的な嫌がらせが起こるとは。

 これでは庶民同士の争いと変わらない。エリート中のエリートでも同じ人間だということか。

 どうせだったら俺の知らない技術で嫌がらせをして欲しかったものだ。



「そうだな、ひどい連中だな。だが、心配はいらない。俺たちにも反撃する権利がある。……あまり君にはおぼえて欲しくはない方法だが」


「っ!? 何をするつもりですか?」


「もちろん悪いことに決まっているさ」


 俺はソフィーナに笑いかける。

 いずれはソフィーナも強くなってもらわねばならない。冒険者はいつ死んでもおかしくない職業。別れなければならない時は必ず来る。結局のところ、自分の身は自分で守らなくはならない。

 

 今は文字を勉強することが優先でも、剣の振り方や効率的なスキルの使い方を教えねば。ソフィーナのスキルの分析も必要だ。



 ゴーレムの残骸はそのままにしておこう。

 侵入者への目くらましになりそうだ。


「スキル発動「土操作」」


 今度は地面から小さな塊を取り出す。

 塊の形を変形させていく。塊が小さいのでかなり精密に操作できる。可能な最大限まで土を固めていく。


 本当は金属で作るのが一番いいのだが、今回は時間も人脈もない。

 使い捨てならば土で作っても問題ないだろう。


 一面だけがギザギザした部品が完成する。

 俺のスキルにはこういった使い方もある。もっともあくまで固めた土にすぎないし、精度にも限界がある。ちゃんとした部品が欲しいのなら、おとなしく鍛冶屋に頼んだ方がいい。



「ソフィーナ。このギザギザした部分をとがらせてくれ。石でこすれば磨けるはずだ」


「はい! お任せください!」


 とても嬉しそうにソフィーナは部品を受け取る。

 まぶしい笑顔だ。自分にできることがあるのが、嬉しいのだろう。気持ちはわかる。俺も冒険者の駆け出しのころはそうだった。


 一生懸命に部品を磨いている。

 ちょっとだけ猫耳のお子様が遊んでいるようにみえる。もちろん口には出せないが。



 次々とスキルを使って部品を作っていく。

 木や草も部品として使う。もともとダンジョン内で作り、使われるものだ。自然から取れる材料だけで作ることができる。



 部品を組み立てて完成。

 構造は簡単である。上に乗った物体をギザギザの刃で挟み込むだけ。

 単純で凶悪。本当は街中では使用してはいけないものだ。下手をすれば兵士に捕まることになる。



「あの、これは何でしょうか?」


 普通の人間ならすでに理解しているだろうが、ソフィーナにはわからないらしい。

 元奴隷ゆえに極端に知識が少ないのだ。


「言葉で説明するより実際にみた方が早いだろう。こいつを地面に埋めてくれ。ギザギザの部分だけ、地面の上に出るように。ああ、土や草をまいて、他人からみにくくするのも忘れずに」


 無造作に手に取って歩き出そうとするソフィーナに注意する。


「危ないから、絶対に埋めた後を踏まないように。あと入り口付近は埋めないようにしよう。無関係な人を巻き込むかもしれない」


「はあ……」


 これでもソフィーナはわからないようだ。

 まあ、明日になれば嫌でもわかるだろう。これまでの嫌がらせの手際からして、相手はプロではない。



 慎重に作業を重ねて、全てが終わるころには夜になっていた。

 この方法ならば、血は流れるにしろ、人が死ぬことはないだろう。嫌がらせをした理由を聞き出さねばならないし。


「よし。あとは待つだけだ。食事をして寝ようか」


「……ああ! やっと理解しました!! この装置は……」


 知識こそ少ないが、頭の回転自体は悪くない。

 これから先、地面に水がしみ込むように知識を吸収してくだろう。俺も負けてはいられないな。




 深夜。

 建物の外から男の絶叫が響いた。


 俺はベッドから身を起こす。


 どうやら獲物が罠にかかったらしい。


ブクマ、評価をいただけると作者のモチベが上がります。

どうかよろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
[一言] 仕掛け罠の定番トラバサミですね
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