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第三十八話 ゴーレム工場との別れ

 職人頭の老人と弟子たちが忙しく働いている。

 次々とゴーレムが作られていく。数百体のゴーレムが並べられている。労働用ゴーレムだから身長も体重も普通の人間の倍はある。

 まるで軍隊のような、すごい迫力だ。


 とはいえ、それだけならば以前建物を訪れた時と同じである。 



 違う点もある。

 職人たちが新しい技術の開発に手を付けていることだ。建物のすみには試作品のゴーレムが置いてある。今のところ性能がよさそうにはみえないが、いずれはこの建物から最高のゴーレムが誕生するかもしれない。

 俺とのゴーレム開発が彼らの目をさましたのだった。金のため義務的にゴーレムを作っていたかつての姿はもうない。



「ノエルさんがいなくなっても、あと10年はゴーレムを作り続けられそうです」


 隣にいる商会の支店長コーネットが、しみじみとつぶやいた。

 

 誘いを断るために、コーネットと会わねばならなかった。まさか面会の場所がゴーレムを作っている建物に指定されるとは思わなかった。

 泥くさい現場には部下を向かわせるような仕事のやり方だと考えていた。違うのだろうか。一流の商人には現場の様子を確認するのも重要なのか。


「どうもあなたがいると、周囲にいい影響を与えるようですね。皆生き生きと働いている。これならば利益も見込めそうです」



「買いかぶりすぎだ」


 そんなスキルは持っていない。

 パーティー全体をバフするスキルは存在するが、精神にまでは影響は与えない。職人たちが生き生きと働いているのならば。俺ではなく彼ら自身の能力である。


「フッ。そういうことにしておきましょうか」



 しばらくの間、無言でゴーレム製作の様子をみていた。

 いつかまたここに帰ってきたいと願う。そのころには今よりずっと進化したゴーレムがみられるに違いない。



「ノエルさんが私どもの誘いを断ったこと。なんとも思っていませんよ。商売においては、誘いを断られるなど当たり前のことです」


「そうか。助かる」


 やっと全ての誘いに対して、筋を通せた。

 恩を受けたのに誘いを断るのは心苦しい。忘れないでおこう。今度はこちらが恩を返す番だ。



「ただ、諦めはしませんけどね。ノエルさんが王都に行ってもゴーレム開発の腕はふるってもらいます」


「……ん?」


「当然ですよ。王都には我が商会の本店があります。王都はこの街よりも比較にならないほど巨大で、ゴーレムはまったく広まっておりません。商売の機会は、むしろ王都の方にある」


 どこまでもコーネットは商売をあきらめるつもりはなさそうだった。

 ゴーレムは金になる。今では俺も信じざるを得ない。労働用、戦闘用ともに将来性がある。世界中にゴーレムが広まってもおかしくはない。

 

「王都では労働力として奴隷が用いられていますが、あんなものはもう古い。非効率的です。無理やり人間を働かせても効率は上がりません」


 

 奴隷か。

 俺は辺境の村で育ち、働いている。辺境には奴隷などほとんどいない。そもそも人間の数が少ないので、使い潰している余裕がないのだ。

 住んでいる人間を最大限活用して、辺境の暮らしは成り立っている。労働用ゴーレムが歓迎されたのは、そういう背景もある。


 実際に奴隷をみたことは、数回あるだけだ。

 好きにはなれない。自分が奴隷だったらと想像すると、ぞっとする。悲惨なことだけならば、ダンジョン内に数多くあるのだが。



「好きにすればいいさ。俺には商会の行動を止める権利はない」


 王都でもゴーレムを製作する建物を作るのか。

 それはそれで面白そうだ。この街と王都でゴーレム開発を競争するのも悪くはない。



「ええ、好きにさせてもらいますよ。上流階級にも、いや、上流階級だからこそ、金が必要です。王都に行っても、私たちはノエルさんのお役に立てると思います」


 そんなものなのか。

 貴族階級のことはまったく知らない。貴族とは遠巻きに見物するだけの存在である。向こうからみたら、俺はさぞや野蛮人にみえるだろうな。




「……これは個人的な予想なのですが、ノエルさんは学園で失敗すると思います。あまりにも環境が違いすぎます」


「だろうな」


 普通の人間ならば、そう考えるだろう。

 野蛮な冒険者が権力争いをして生き残れる道理がない。当たり前のことだ。


 だからこそ燃える。

 冒険者ならではの本能である。


「では、俺が王都に行くこと自体を反対するのか?」



「いいえ、反対はしません。むしろ賛成しておりますとも」


 コーネットはほほえむ。

 抜け目のない商人の目をしている。


「例え1日でも学園に在籍すれば、どこへ行っても尊敬されます。ノエルという人間を宣伝する時には、元学園にいたということは大きな武器になります。失敗しても、成功してもおいしい話ですよ」



 それほどニュイの学園の評判はすごいのか。

 俺でも知っているくらいだものな。世界中の人間が知っていてもおかしくはない。

 1日でも在籍すれば、評判を得られる。確かにおいしい話ではある。


 だが。


「悪いが、失敗するつもりはないぞ」



 やれやれといった感じで、コーネットは首を振る。




「さすがは私の見込んだ人間です。では、みせてもらいましょうか。私の予想を超える姿を」



ブクマ、評価をいただけると作者のモチベが上がります。

どうかよろしくお願いします。

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