第三十一話 決着
俺と職人たちの努力の結晶であるゴーレムは、あっけなく両断された。
グェント最速の剣技をよけられなかったのだ。
体に書き込まれた魔法陣が砕け、唯一の強みであった速さが失われる。両断された胴体をつなぎ合わせることもできない。
1体のゴーレムとして、すでに使いものにはならなくなった。破壊されたも同然である。
それでも、「土操作」スキルだけは、まだ適応できる。
俺のスキルは土の塊ごとに発動される。塊が分断されても、片方だけは操作できるのだ。
とはいえ、小さなゴーレムの、さらに上半身だけでは、ほとんど何もできない。
手に持ったナイフを投げるくらいしか。
ナイフはグェントの顔に刺さる寸前で弾かれた。
スキルではなく、自身の反射神経のみで防ぎやがった。
完全に虚を突いたはずだった。レイナの補助魔法の効果か、それとも前衛職の勘か。
それでも無理を重ねたおかげで、全身がすきだらけである。
グェントの態勢が崩れている。俺の次の攻撃に反応できないだろう。
ここで勝負を決める。勝機はこの瞬間しかない。態勢を立て直されたらもはや勝ち目はない。
全てのゴーレムを使い潰して、ようやくたどりついた。
俺の体はもうグェントの隣にまで接近している。
オリハルコンの塊を握りしめ、振りかぶる。邪魔するものは何もない。
俺のスキルなしでの攻撃など、並の冒険者にも通用しないだろう。だが、この瞬間なら通用する。全てのゴーレムの犠牲と引き換えに、障害を排除したのだ。
オリハルコンの塊を武器にすると決めた時、運命を感じだ。
普通の武器ならば、グェントを確実に殺してしまう。オリハルコンの塊ならば、生き残る可能性がわずかに存在する。
むろん俺は手加減するつもりもなければ、する余裕もない。
生死は神の手にゆだねられているのだ。
甘いだろうか。戦闘者として。
変えられない。これが俺だ。完全に冷酷にはなりきれない。
「ノエ……」
グェントの目が大きく開かれている。
今起こっていることが信じられない、といった表情。
グシャ!
グェントの顔面に塊を叩き込んだ。
鼻の骨が折れる感触が伝わる。自慢だった端正な顔は、ぐしゃぐしゃになっているに違いない。
グェントの剣を持った手が動き、俺を斬ろうとする。
もはや剣を振る速度は遅い。悪あがきにすぎない。
グシャ!!
剣が俺の体に届く前に、再び塊を振り下ろした。
グェントの手から剣が落ちる。立っていられず、仰向けに倒れる。
俺は倒れたグェントの頭に追撃をする。
完全に動けなくなるまで攻撃をやめるつもりはない。モンスターとの戦いで何度も死にかけた経験がある。最後の最後まで油断をしてはならない。
遊びではないのだ。
俺の命どころか、大勢の仲間の人生がかかっている。
何度か頭に塊を叩きこんだ後、グェントは完全に沈黙した。
手足はピクリとも動かない。生きているのか、死んでいるのか。確かめようとも思わない。
確かなのは。
俺が決闘に勝ったということだけだ。
静かだった。
観客の住民たちも黙ってしまっている。
あまりにもあっさりと勝ってしまったから、驚きで声がでないのだろう。
時間にすれば15秒くらいか。
もっと派手な戦いが続くと期待していたのだろう。演劇の戦闘では10分くらいは戦いが続く。本当の真剣勝負とはこういうものだ。みていて面白いものではない。
結果的には圧勝だった。
用意した策が全部はまり勝利した。
グェントは無策だった。自分の強さにおぼれて、俺のことを無力な羊だとしか感じていなかったのだった。残念ながら、戦いとはスキルの強さだけで決まるものではない。
仮にグェントも策を用意していたら、今よりもはるかに苦戦していただろう。負けていた可能性だって大いにあった。何しろ自力ではグェントの方が強いのだから。
決闘の規模の拡大になど力をそそがず、真剣に決闘に向き合うべきだったのだ。
結局のところ。
グェントは俺に負けたのではない。
自分の愚かさに負けたのだ。
ブクマ、評価をいただけると作者のモチベが上がります。
どうかよろしくお願いします。




