第百九十六話 はじめての冒険①
私はゴーレムちゃん(仮)たちと走る。
ご主人様がダンジョンのボスと戦っている場所を離れて。
本当は、ご主人様の所に残りたかった。
一緒にダンジョンのボスと戦いたかった。私に何ができるのかわからない。何もできないのかもしれない。
それでも一緒にいたかった。
ご主人様と一緒なら、できないことがないとさえ思えてくるのだ。
でも。
それでも私は……ご主人様から離れた。
信頼に答えたかったのだ。役に立ちたかった。私にもできることがあると信じたかった。
今は足を引っ張る存在でも、いつかは胸をはって隣にいれるようになりたい。
同じパーティーだと、ご主人様に認めて欲しい。今度は私がご主人様を助けるんだ。
はじめての冒険。
これはそのための最初の一歩だ。
ゴーレムちゃん(仮)たちは周囲を警戒してくれている。
ご主人様は1人で残っている。私は走る。早く王立騎士団の魂を助けてあげて、ご主人様の元に戻りたい。
でも、走っているけど、これからどうすればいいのかわからない。
ずっと考えていたけど、結論はでなかった。
私のスキル。本当に魂をあつかえるのかな? 自分ではなく、他人の魂を。
走っているうちに不安が増してくる。
そもそもどこへ行けばいいのか。どこに王立騎士団の魂があるのか。
それすらも決まっていない。やみくもに走っているだけだった。
見渡す限り機械ばかり、どこを走っているのかもわからない。迷子になっちゃう。
本当に私はご主人様の期待に応えられるのか。
私には世界を変えるような力があるのか。
やっぱり私は無力ではないのか。不安は増すばかり。
その時。
機械の後ろから、敵のゴーレムが飛び出してきた。
名もなき科学者が作ったというゴーレムだ。
思い返せば、最下層でも敵のゴーレムがいないはずもないのだ。
「あわわっ!?」
私は戦えない。逃げることもできない。
最弱のスライムを倒したこともあったけど、とてもこのゴーレムには勝てそうない。
本物の敵は力が違う。私にではどうにもできそうにない。
尻もちをついた私のかわりに、ゴーレムちゃん(仮)が戦ってくれる。
私でもわかる。
1体だけを比較するならば、敵のゴーレムの方が強い。
でも10対1だ。10倍もの力の差はない……はず。
しばらくして、ゴーレムちゃん(仮)たちが勝利した。
けど、こっちも無傷ではない。けっこうな傷を負ってしまった。足を引きずっている子もいる。修理してあげたいけど私では不可能だ。
今回は勝ったとしても、何度も何度も襲われたらまずい。
ゴーレムちゃん(仮)たちが消耗し続けちゃう。早く魂を見つけなくちゃ……。
あっ、そうだ!
すぐにこの場を離れないと!
戦っていた音で、また敵のゴーレムが集まってくるかもしれない。
ご主人様がいないから自分で判断しなくちゃ。
怖い。間違ったら死ぬかもしれない。ご主人様は毎回こんな怖いことをしているの?
私たちは走る。
目的地はない。ただ走っている。
どうすればいい? どうすれば……。
声がしたような気がした。
1人のようなたくさんの人の声のような。聞いたことがない声だ。
「誰? 誰がいるの?」
私を呼んでいるような声。
気のせいじゃない。
ゴーレムちゃん(仮)たちも同じ方向をみている。
暖かいような。人ごみのよう感じ。言葉ではいい表現できない。
……スキルが私を導いている?
こんな感覚は生まれてはじめて。
「みんな。あそこへ行ってみよう!」
何が待っているのかわからない。
でも、行こう。挑戦しよう。挑戦の先にしか未来はない。
それこそがご主人様が私に教えてくれたことだ。
1人じゃないからがんばれる。今は私には希望がある。
奴隷だった昔とは違う。ずっと1人だったあの頃とは。
私は再び走る。急ごう。
急げば、きっとご主人様の助けになるはずだ。
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