第百八十八話 最高ランク冒険者の戦い④
スキルのレベルの上げるのはとても大変じゃ。
そもそも個人によってレベルの上げ方が違う。レベルのあるスキル持ちの人数は少ない。参考になる奴が少ないのじゃ。
レベルの上がる条件を自ら発見せねばならん。
わらわも長い年月をかけて、少しずつレベルを上げていっ……。
「しかしあなたの攻撃も通じない。まだ私は負けてはいません」
……なんじゃ。
せっかくわらわが気持ちよく昔の苦労を思い出していたのに。
なんと無粋な奴じゃろうか。魂のない人形は他人の気持ちを考えられん。ずっとダンジョンに引きこもっているからじゃ。
もっと外に出ろ。外に。
もう勝負はついた。
エレノーラの底はみえている。わらわの方が強い。
まあ、本気を出したわらわに勝てる相手は少ないからの。自らの弱さをなげくことはないぞ。
どれ、終わりにしようかの。
「スキル発動「気配遮断レベル10」」
「レ、レベル10!?」
そうじゃ。
お前の負けじゃ。
わらわはゆっくりとエレノーラに近づく。
レベル10を発動してしまえば、走る速度など関係ない。
物理的な攻撃もいっさい通じないし、必殺の攻撃もできる。まさに最高ランク冒険者が持つスキルにふさわしいものへと進化するというわけじゃ。
どこまでレベルが上げられるかって?
フフッ。それは内緒じゃ。
エレノーラの顔が恐怖にゆがんでいる。
はん。魂のない人形にも恐怖の感情があったのか。
「……っ!」
エレノーラの上半身がダンジョンへ潜っていく。
逃げようとしている。負けそうになったら逃げる。理屈っぽい奴のやりそうなことじゃ。
現に過去2回ほど逃げている。2度あることは3度ある……じゃ。
「あー、それは美しくないのぉ」
最近は勝つことばかりにこだわって戦いの美学がない敵が多すぎる。
敵だけではなく、味方もじゃ。特にノエル。もう少し戦い自体を楽しむべきじゃ。
負けそうになったら逃げるという考え自体が弱者の発想。
強者は逃げない。負ける時は死ぬ時じゃ。
美しくないものには戦いの神も微笑まん。それが世界の法則じゃ。
エレノーラの体はダンジョンそのもの。
強力な能力ではあるが、逆にいえば、わらわの攻撃をさけられないということでもある。
どこを攻撃してもエレノーラに届く。スキルがレベル10になったなら、耐久力など関係なくなるのじゃ。
わらわはダンジョンの地面を拳で叩く。
沈み込もうとするエレノーラの上半身が止まる。
表情が恐怖から驚愕に変わる。なんとも表情豊かなことで。
無表情よりもわらわは好きじゃぞ。
「な!? こ、これは……」
「気配遮断レベル10はのぉ。わらわだけでなく、敵の気配をも遮断する。お主は世界から遮断されたのじゃ」
「世界から遮断……とは?」
あー、説明するのもめんどうじゃ。
じゃが、これも敗者に対する最後の礼儀か。
エレノーラやノエルには理解できんじゃろうが、わらわはその辺も大切にするからの。
簡単にいうと、エレノーラはあらゆる繋がりが絶たれている。他の人間にはみえないし、触れない。わらわがスキルを使った状態と同じになる。
たとえダンジョン中が自分の体だろうと、わらわはその繋がりを絶てる。今はもうエレノーラの体は小さな上半身でしかない。ただの無力な人形でしかないのじゃ。
どこまで繋がりを絶てるのか。
本当のところ自分でもよくわからん。
スキルとは本能で使うもの。全部を知る必要などない。レベルが上がり続ければどこまで行けるのか。それは、まあ、楽しみではあるが。
エレノーラはしばらくもがいていたが、やがてあきらめたように下を向いた。
「……どうやら私の負けのようですね」
「そうじゃな。おぬしの敗北は最高ランク冒険者をなめたことが原因じゃ」
魂を奪うという奇襲だからこそ、王立騎士団に勝てた。
正面から戦ったら、人形ごときが最高ランクに勝てるはずもなかろう。
確かにそれなりには強かった。
それでも他のダンジョンのボスはもっと強いのがゴロゴロおるのじゃ。
わらわは右手を振り、エレノーラの首を刈り取る。
エレノーラの首がダンジョンの地面を転がっていく。
今度こそは再生できないじゃろう。
わらわの勝ちじゃ。
さて、次はどんな戦いが待っているのか。
今から楽しみじゃな。
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