第百八十五話 最高ランク冒険者の戦い①
ブチリッ!
手でつかんでいるエレノーラの首がもげた。
「あっ……」
思わず声が出る。
ちと早く走りすぎたか。いや、エレノーラの体がもろすぎるのじゃ。
強引に走るのを中断する。急には止まれずにしばらくの間、地面をえぐることになる。盛大に土煙が上がる。
エレノーラの体が宙に舞って、落ちる。
落ちたままピクリともしない。首がもげたのだから当たり前といえば当たり前だが。
「……やってしまったのぉ。」
思わず声がもれる。
もしかしてあっさりと殺してしまったのか。
まあ、モンスターでも首がもげれば死ぬからの。魂のない人形でも死ぬのかもしれん。
そもそも本当にこやつは魂のない人形なのか? 見た目は人間と変わりがないぞ。……ああ、いや、しかし首の断面から血が流れておらぬな。やはり人形か。
人形ならば人形でもっと頑丈に作れ。
引きずられたまま抵抗もしないとはどういうことじゃ。
手に持った生首をながめてみる。
首の方もピクリとも動かん。目も閉じたまま。
「くそう。こんなことならば王立騎士団と戦えばよかったのぉ」
勘でエレノーラの方が強いと感じたが、間違いじゃったか。
これならまた王立騎士団と戦った方がましだった。スキルの強さだけは保証されているわけだし。
これで終わりはあまりにも味気なすぎるぞ。戦いの楽しさも何もなさすぎる。
うーん。
引き返そうか。
……でも、今さら帰るのもかっこ悪いのぉ。
今ごろノエルたちは王立騎士団と戦っているじゃろうし……。
それにしても、ここはどこじゃ?
適当に壁をぶち破ってこの場所に来てしまったからのぉ。
しかたがない。エレノーラの首を持って適当に帰るとするか……。
「あなた、たしかエネル……でしたか。首をもぎ取るとはひどいことをしますね」
どこからともなくエレノーラの声が響いた。
手に持った首をみるが口は動いていない。どっから声が出ているんじゃ? 当然体には口はないわけだし。
首のないエレノーラの体がゆっくりと立ち上がってくる。
なんで立ち上がれるのじゃ?
魂のない人形だからか?
わからん。
わからんが……だからこそ面白い。
やはり勘は正しかった。こやつはわらわの敵としてふさわしい。
「ほら、返してやるぞ」
わらわは生首を体にむかって投げる。
エレノーラの体は空中の生首を器用に捕まえる。ほぉ。どうやってみているのか。首から上は飾りということか。うーむ。
それ以上、考えるのはやめる。
ノエルならば一生懸命考えるだろうが、わらわは考えるのはしない。性にあわん。
実行あるのみ。それがエネルという冒険者じゃ。ふふん。すごいじゃろ?
「助かりますね」
エレノーラは受け取った首を体にはめ込む。
目に生気が戻る。表情は……元から無表情じゃったわ。
首をもがれたのに淡々としておる。普通ならば怒って、殺意をまき散らしておるはずなのに。
今一つ、雰囲気が盛り上がらんのぉ。
対決という雰囲気じゃない。殺し合いをする気が失せるわい。
どうもこやつの性格がつかみきれん。変な奴じゃわい。
「ああ、勘違いしないでください。私は怒っているし、あなたを殺す気でいるので」
「ほほぉ。それは嬉しいのぉ」
楽しくなってきた。
やはりそうでなくては。
王立騎士団を無視して、この女と戦う意味がある。
「あなたのおかげで私たちの戦略は台無しです。今ごろ王立騎士団は奪い返されているでしょうね。あなたの命で償ってもらいましょう」
「知らんな、どうでもいい」
「!?」
王立騎士団の連中にはあまり興味がない。
意思のないものに勝っても達成感は得られない。この前の戦いで経験した。
わくわくするのは、楽しめそうなのは、断然エレノーラの方である。
何よりもわらわの勘が、今回の敵の中では一番強いと教えてくれる。これまで長い間、勘を頼りに生きてきたのじゃ。ただの勘といえども、そう馬鹿にするものではないぞ。
「大切なのはわらわとおぬしの戦いだけじゃ。他はどうでもいい」
「なるほど、なるほど。あなたも狂人の類ですか。私を逃がす気はなさそうですね」
速度ではわらわの方が勝っている。
先ほどの戦いでお互いに理解していることじゃろう。
つまり。
「わらわを倒さない限り、どこへも行けんということじゃな」
「……そのようですね」
エレノーラの無機質な目がわらわを捕える。
やっとやる気になったか。
「ならば、そうさせてもらいましょうか。一刻も早く名もなき科学者の元へ帰らねばなりません」
「簡単にわらわが倒せるとでも?」
「ええ、もちろんです。あなたは私よりも弱いのですから」
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