第百七十八話 王立騎士団の救出③
「ギルド幹部によると、王立騎士団は爆発スキルの他に、剣技スキルと暗殺スキルを持っています」
「どちらも最高峰のスキルだろうな」
「もちろん。聞くだけで戦いたくなること、確実ですよ」
結界スキルも爆発スキルも、人間が持ちうる最高のクラスのスキルだった。
残りのスキルも弱いはずもない。
結界スキルに爆発スキル。剣技スキルに暗殺スキル。
王立騎士団はバランスよくスキルを配置している。すきが見当たらない。この国最高の冒険者という名はだてではない。
ただ、今は結界スキルを持った女が欠けている。
それでも例え3人であろうとも、簡単に俺たちを殺す力を持っている。
王立騎士団は無表情のまま。
意思を感じられない。俺たちは人形と戦っていると実感させられる。
「もっとくわしく話したいところですが、難しいようですね。敵の攻撃がきますよ」
爆炎の中から男が1人飛び出してくる。
腰には剣を差している。剣技スキルの持ち主か。
「スキル発動「土操作」!」
俺は敵の前に土の壁を作る。
剣技スキルの持ち主ならば近づけてはいけない。剣が届く範囲内では、剣技スキルは無敵のスキル。逆にいえば近づけければ脅威にはならないはずだ。
俺のスキル程度ではとても王立騎士団の剣技スキルを防げるとは思えない。が、牽制にはなる。他の冒険者たちの防御スキルと合わせれば、攻撃を防げるかもしれない。
防げずとも威力を減らすことはできる。
未知のスキル持ちとの戦いの基本である。この場にいる冒険者たちは指示せずとも実践している。低ランクといえども戦いの経験は豊富である。
ところが。
王立騎士団の男は壁の手前で止まった。
まるで居合をするような姿勢になる。手に持った剣から光があふれだす。
あれは、まさか。
「ふせろ!!!」
俺は叫び、ソフィーナの頭を強引に下げさせる。
地面ギリギリに体を投げだす。
打ち出された剣と共に、男の剣から光が伸びていく。
あっさりと土の壁を切断される。冒険者たちの防御スキルをも貫通する。
俺の頭上を光の斬撃が通過する。
鎧など何の意味ももたない。触れれば簡単に両断されるだろう。
なんという鋭さだ。熟練の……という表現では足りない。生まれ持った才能という他ない。
数人の冒険者たちの断末魔が響く。
距離もあったから、俺たちは斬撃をかわせた。かわせなかった冒険者は死ぬしかない。また、数人の冒険者が死んだ。
歯を食いしばる。
戦いには死者はつきもの、冒険者たちも覚悟してダンジョンに入ったとはいえ、心が痛む。
いや、心を痛めている暇さえなかった。
剣技スキルを使った男が突進してくる。
なんとかして防がねば。防御スキルが無意味ならば、火力で押すしかない。。
「遠距離スキルを使って弾幕を張れ! これ以上、王立騎士団を近づけされるな!!」
今度は冒険者たちが遠距離スキルを発動させる。
炎や氷が王立騎士団の男に向かっていく。男はかわすために距離をとる。遠距離スキルの数が多ければ、剣技では防ぎきれない。
やはり結界スキルがない影響は大きかった。
敵は防御面が手薄になっている。仲間同士の連携もさほどない。
とりあえずはこれ以上の剣技スキルは受けない。仕切り直しだ。
「……「属性付与・光」とはな」
また1つ、王立騎士団のスキルが判明した。
最強に近い剣技スキルである。
剣技スキルは近づかなければ、真価を発揮できない。
だが、属性付与を行うことで、ある程度弱点を克服できる。
特に光属性の威力は別格だ。
魔王と勇者が戦っていた時代からの特別な属性。魂をあつかうスキルほどではないが、使える人間はほとんどいない。
剣の範囲に入ったら、俺たちでは防ぐ手段を持たない。
絶対に近づけさせるわけにはいかない。
「さて、どうします? 普通に戦えば、最終的には勝てるにしろ、冒険者の半分以上は死にますけど」
どうするべきか。
一番避けるべきなのは、敵同士が連携してくることだ。
スキルを持った人間が連携すれば、力は何倍にもなる。意思がなかろうとも、メンバーが交互にスキルを使ってくるだけで脅威になる。
よって持ちうるべき策は。
「敵を分断するしかないな。こちらも分断されるが、数が多い。分断されることによる損失は少ないだろう」
「なるほど。敵に指揮官がいないことを、最大限に生かすというわけですね」
戦いによる死者を減らさねば。
そのために敵のパーティーである利点を消す。徹底的に敵の弱点を突かねばならないのだ。1人ならば戦いようがある。
最強のスキルは存在していても、弱点のないスキルは存在しない。
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