第百六十七話 開戦
「ほほう。すごい光景じゃのぉ。こんな数のゴーレムはみたことがないわい」
ダンジョンの入り口にゴーレムが列をなしている。
次々とダンジョンの中に入っている。この前のように暴走することもない。きちんと冒険者たちの命令に従っている。
あっという間に冒険者たちのゴーレム作りの腕が上がっていた。
全てはノエルの手腕である。まったくもって素晴らしい。素人だった冒険者たちのやる気をここまで引き出すとは。わらわにはとても同じことなどできそうにない。
「のぉ、副リーダー。どのくらいの数のゴーレムがいるのかな?」
「そうですね。すでに一日3000体のゴーレムが作られているようですよ」
「3000!? それはすごいのぉ!」
となると、ここ3日で10000くらいのゴーレムがダンジョンで暴れていることになる。
嫌がらせとしては最上級。ダンジョンのボスとしては、たまったものではないであろう。あのダンジョンはそう広くはないのだから。
ふーむ。
それなのに未だにダンジョンのボスに動きはない。
だからこうしてわらわも副リーダーも暇をしているわけじゃが。……いや、決して暇をしているわけではない!
「来たるべき戦いに向けて、訓練を積んでいるのじゃ!!」
「……はぁ。ものはいいようですね。エネルもゴーレムを作ったらどうですか? 少しはボスを倒すために役に立てるかもしれませんよ?」
「なんじゃ!! わらわの部下のくせに生意気じゃの!」
足元にはオリハルコンが転がっている。
拳で殴り続けて、さらに変形が進んでいる。どうじゃ! いい出来であろう? 褒めたたえてもいいのじゃぞ?
だが、副リーダーは無視しておる。
よほどわらわにゴーレムを作らせたいのか? 絶対にごめんじゃ!
「……そろそろダンジョンのボスは動きますかね?」
「いきなり話を変えるな!」
まったく。
副リーダーじゃなかったら、この場でボコボコのボコにいてやるところじゃわい。
パーティーの管理を任せているから、わらわといえどもこの女には弱い。
「……チッ。そりゃそろそろ動き出すじゃろうな。このままダンジョンにこもっていても不利になるばかりじゃ」
「魂を奪う技術は破壊できるでしょうか? 元々はそれが目的ですよね?」
「さあな、敵に聞くのが一番早いじゃろ」
魂を奪う技術か。
王立騎士団を倒した恐るべき技術。
さすがのわらわも魂を奪う技術を使われては勝ち目が薄い。どうやって防げばいいのかわからん。
死ぬだけならばまだしも。
魂を抜かれて、体だけ操られるなど屈辱の極みじゃ。
「技術にしろ、スキルにしろ、決してダンジョンの外に出してはならんのぉ。ダンジョンごとこの世界から消滅させなければ」
世界中が混乱しかねない。技術の争奪戦になるだろう。
そうなれば、冒険者などできなくなるに違いない。
世界が平和だからこそ、わらわたちはダンジョンを捜索できるのだった。
「そう心配することはないでのは? スキルならばボスを殺せば終わり。技術ならば、簡単にまねできるとは思えません」
「世界で1つだけあるじゃろう? まねできそうなところが。ちょうどノエルも所属しておる」
「学園ですか」
学園の教授が逃げ帰ったのは、結果的によいことであった。
ノエルも学園に技術は伝えないであろう。他の冒険者たちは馬鹿だから技術を伝えることもできない。ダンジョンを破壊し尽くせば問題ない。
結局のところ、技術、いや力は使うもの次第。
あの小娘が魂をあつかうスキルを持つのを許せても、ダンジョンのボスや腐った連中が持つのは許せない。気軽に人を殺すような連中に特別な力を持たせてはいかん。
もちろんあの小娘が変わってしまう可能性もある。
そうなったら戦わねばならぬ。ノエルには内緒の決意ではあるが。
「……っ!!」
「ん? どうしたのじゃ?」
「パーティーの探査スキルに反応があったようです!! おそらくボスが再び地上に出てきたのではないかと!」
ククッ。
そうかそうか。
退屈な時間は終わった。
ついに最後の戦いがはじまるというわけじゃな。
力がみなぎる。やはり戦いこそ、わらわの楽しみじゃ。
「よし! パーティーのメンバーを集めろ! 戦争の始まりじゃ!!」
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