第百六十二話 遊びの眺め方
遠くにダンジョンの入り口がみえる。
「なーにを遊んでいるんじゃ、あ奴らは」
ダンジョンの入り口ではノエルたちが大きなゴーレムを誘導している。
どうやら暴走しているゴーレムをダンジョンに入れたいようだ。
本人たちは必死のようだが、遠くからみると遊んでいるようにしかみえん。
そもそもゴーレムが失敗したしたのなら壊せばいいのじゃ。作り直せばいい。まったくもって奴らは貧乏性じゃのぉ。あきれてしまうわい。
「お言葉ですが、エネルも遊んでいますよね?」
隣にいる副リーダーが答える。
今日もこの女はすました顔をしておる。
「なに!? わらわが遊んでいるじゃと!? どこが遊んでいるようにみえるのじゃ!」
「だって、ここ数日オリハルコンの塊を叩いてばかりじゃないですか」
「むぐっ」
本当はダンジョンのボスが地上に出てくるのを監視するためにここにいる。
じゃが、まだ来ないのだからしかたがない。暇つぶしをして何が悪い。
「違う、これは来たるべき戦いに向けて訓練しているのじゃ! 決して遊んでいるのではない!!」
パーティーのメンバーが監視スキルを持っているから、まかせっぱなしである。こういう時、パーティーの便利さを実感する。
わらわは戦い以外のことは何もしとうない。
ゴーレム作りなど論外じゃ。というか、わらわにゴーレムが作れるとも思えん。ちまちました仕事は苦手じゃ。
その代わり、戦いでは必ず敵には勝つ。
それこそがわらわの存在意義じゃ。
「みてみい! だいぶオリハルコンも変形してきたわい。塊のままよりも持ちやすいじゃろ?」
オリハルコンを持ち上げてみせる。
塊だったのが、棒状になっている。数日、拳で叩き続けたらこうなった。オリハルコンは固い。めちゃくちゃ固い。
拳でオリハルコンを変形させられるのはわらわくらいじゃろ。
……ちょっといい過ぎかもしれんが。
「確かにすごいですが、他にやることが……」
「だから訓練じゃ! 訓練!! 来たるべき戦いに向けて特訓しておるのじゃ!」
副リーダーのあきれ顔に腹が立つ。
お前だって何もしていなくせに。いや、パーティーと他の高ランク冒険者を指揮するので忙しいのか?
わからん。興味がないことは知ろうしないことに限る。
ダンジョンのボスよ。
早く襲ってこい。わらわが何もしていないと思われるだろ。
「そういえば、エネルは武器を使いませんよね。長い付き合ですが、拳で戦う姿しかみたことがありません」
「ふふん。お主にはわからんか、拳同士で敵と殴り合う快感が」
昔はわらわも武器を使って戦っていた。
じゃが、ある日強敵と武器が折れるまで戦い、拳で殴り合った時、拳同士で殴り合う楽しさに目覚めた。
拳はいい、殴り合うたびに敵のことを知ったような気分になれる。より戦いの快感を味わえる。
今では武器など持って戦うなど考えられない。
武器を使わないことを馬鹿にする冒険者もいたが、全て叩きのめしてやった。
わらわの経験上、真の強者は他人などの興味はない。絶対の自信があれば他人を馬鹿にすることもない。もちろんわらわも……だ。
「でも、敵も武器なしはめったにいませんよね? モンスターか、あるいは武器を持っているものばかりです。武器なし同士の戦いなど、めったに起こりませんよ?」
「むむむ」
なんじゃ、こやつ今日は妙につっかかるのぉ。
虫の居所でも悪いのか? それとも。
「……もしかして、お主。わらわがダンジョンのボスに負けるとでも不安になっているのか? だとすれば許さんぞ」
「まさか」
副リーダーはにっこりと微笑む。
「私はエネルを信じていますよ。だからこそあなたの部下になっているのではありませんか」
「じゃとすればなぜ?」
「うーん。そうですねぇ。私も暇だから……ですかね?」
この女。
お前の顔面もオリハルコンのように変形させてやろうか。
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