表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

153/206

第百五十話 最高ランク冒険者の普通のスキル

「おうおう、驚いておるのぉ。そういえばノエルとは長い付き合いじゃが、わらわのスキルをみせたのは初めてじゃったかな?」


 声と共に、エネルの姿が現れる。

 体が透き通っているようにみえる。はっきりしているのは声だけだ。

 存在感が異常に希薄である。通常の体さばきでどうにかなるレベルではない。スキルの力か。


「ニヒヒッ。わらわのスキルは「気配遮断」。他の人間から認知されなくなるのじゃ」



 嘘だ、と直感的に感じた。

 「気配遮断」スキルは俺の「土操作」以上に、ありふれたスキルだ。最高ランク冒険者が持つようなスキルではない。

 たかが相手から姿を隠すスキルでは、ダンジョンのボスは倒せない。エネルはスキルに関して嘘をついているか、あるいはまだ切り札を持っている。



 ただ、そんなことはどうでもいい。

 パーティーのメンバーでもないかぎり、スキルを隠すのは当たり前のことだ。今は親しくしていても本質的にはダンジョン制覇への競争相手。責めるようなことではない。


 本当の問題は……。



「なぜ俺たちの後をつけてきた?」


 この倉庫でソフィーナと話すことは誰にも予想できなかったはずだ。

 となると、会議が終わってから帰るとみせかけて、俺たちのあとをつけてきたということになる。能力を疑っているわけではない。動機の問題だ。


 エネルがソフィーナのスキルを疑う場面などなかったはずだが。



「なぜ? そりゃ面白そうだったからに決まっているからじゃろ?」


 なんだそれは。

 面白そうだから、俺たちのあとをつけてきた?

 最高ランクの冒険者がする行動とは思えんぞ。


 エネルの行動は読めない。

 本能だけで生きているような亜人である。困ったことに、理屈で動くより、本能で動く方がずっと強く賢く行動できるのだった。


「ノエル。お主は頭もいいし、発想も卓越しておるが、本当に自分に関しては無知じゃのぉ」


 半透明のまま、エネルはにっと笑う。


 自分に関することに無知だと。

 意味が解らん。俺のどこをみていたら、あとを追いかけるという選択肢が取る気になるのか。



「まあ、そんなところもわらわからすれば可愛いのじゃがな」


 そっきまで偉そうにソフィーナに説教していたのに、次の瞬間には子ども扱いとは面子が形無しである。

 別に誇るような面子もないが、かなり情けない状況になっている。


 もっとも1000年を生きるエネルである。子供あつかいされるもしかたがない。

 人生とは相対的なもの。どんなものにも上には上がいる。



 しかし、非常に困ったな。

 ソフィーナのスキルをエネルに知られてしまった。


「エネル。ソフィーナのスキルに関しては……」


「ああ、ああ。わかっておる。誰にもいわんよ。わらわとて小娘が不幸になるのはみたくはないからのぉ」


 ペロリと唇をなめる。

 一瞬だけ、年相応の色気が顔を出す。


「ただ、さっきもいった通り、いずれは小娘のスキルと戦いものじゃ。成長した時、どれほどの強さになるか楽しみじゃのぉ。予約していてくれ」


 エネルは嘘をつかない。

 嘘をつく必要がないからだ。約束も決して破らない。

 変なところに信頼がある。だが。



「ソフィーナは戦いませんよ。冒険者ではないので」


 そもそもソフィーナは戦いを望まない。

 この場にいるのは俺に付き合っているからにすぎない。


「なんじゃ、つまらんのぉ」


 俺たちはエネルに弱みを握られたのか。

 いや、逆に考えれば俺が死んだとき、ソフィーナに頼る先ができたともいえる。

 俺はエネルの人間性は信頼している。行動は無茶苦茶だが、誰がなんといおうと俺は信頼している。


 だからこそ100人をこえるパーティーを率いることができるのだ。

 

 

「まあ、いいわい。ノエルも含めて成長に期待しておく」


 エネルの体が薄くなっていく。

 この場から去る気なのだ。本当に何しに来たのかわからない。

 嵐のような現れ方と、去り方であった。


「今回はダンジョンのボスで我慢してやるかのぉ。ノエル、有効な策を頼むぞ」


 

 

 簡単にいってくれるな。

 敵が魂を奪うことはわかった。

 だが、対策はまだみえない。そもそも魂に関する知識がほとんどない。ゆえに対策が思いつかない。


 わかっていることは、魂を持つものはダンジョンには入れないということだけだ。

 

 ……。

 いや、待てよ。

 逆に考えれば、魂を持たないものならばダンジョンに入れるということだ。

 つまりゴーレムならば……。


 

 その瞬間。

 名もなき科学者たちを倒す策を思いついていた。



 

「ご主人様。私たちはこれからどうすればいいのでしょうか?」


 心配そうにソフィーナが聞いてくる。

 ソフィーナからみれば、俺たちはどん底にいるように感じるのだろう。



「安心しろ。ダンジョンのボスを倒すための策を思いついた」


「ほ、本当ですか!?」


「ああ、魂を奪う方法の対策はない。俺たちはあまりにも魂についての知識がないからな。ならば、上から力づくで叩き潰してやる」


ブクマ、評価をいただけると作者のモチベが上がります。

どうかよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ