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第百三十八話 寝返り

 ダンジョンからから帰還した王都騎士団が冒険者たちを攻撃している。

 先ほどまでは歓喜にわいていた場所は、地獄と化していた。


 自分がみているものが信じられない。

 なぜだ。なぜ、こうなった?



 白煙が立ち込め、焼けた臭いがここまで流れてくる。

 冒険者たちは無様に逃げ回っている。無理もない。歓喜を持って出迎えた相手から攻撃されたら、いかに命知らずの冒険者であろうとも動揺するに決まっている。


 いつだって最も有効な戦術は不意打ちである。意識の外から攻撃すれば格上の存在でも倒せる。

 ましてや今回は格上が不意打ちしているのだ。反撃できるはずもない。逃げる以外の選択肢がなかった。



 俺とソフィーナは少し離れた場所で地獄の光景をながめている。

 みていることしかできない。助けに行くには距離が遠すぎる。


 屋根の下ではアーステラたちが何やらわめいているが、気にしている余裕はない。

 このまま戦いが広がれば、俺たちも身を守るために戦わざるをえなくなる可能性がある。皮肉なことに逃げる数百人の冒険者たちが、俺たちの盾になっている形だ。



「な、なにが起こっているんですか!?」


「わからん!! こっちが聞きたいくらいだ!」


 王都騎士団による攻撃は続いている。


 爆音が鳴りやまないので、ソフィーナとの距離が近くとも叫ばなくてはならない。

 戦うべきか、逃げるべきか。俺1人ならば、迷わず戦う道を選択する。だが、今はソフィーナもいる。俺にはソフィーナを守る義務がある。



 現状はこうだ。


 王立騎士団が味方である冒険者たちを攻撃している。

 おそらく爆発系のスキルを持つ人間がメンバーにいる。地面を揺らすほどの威力を持つスキルとなると、最高級のスキルに違いない。


 10を超えるダンジョンを制覇した冒険者パーティー。

 持つスキルが最高級ではない理由が存在しない。たった1人のスキルで不意打ちとはいえ、数百人の冒険者を圧倒できるのだ。


 最初に頭に浮かんだのは、王立騎士団がダンジョン側に寝返ったということだった。

 だが、即座に否定する。あり得ない。寝返っても王立騎士団に利点などまったくない。


 冒険者が冒険者を攻撃したらどうなるか、知らぬわけでもあるまい。

 今までの輝かしい栄光を捨てさるに等しい行為である。いや、それどころがこの国の冒険者全員から命を狙われることになる。



 ……となると。


「ダンジョンのボスに操られている可能性が高いな!!」


「そんなことあり得るのですか!?」


「ダンジョンでは何が起こってもおかしくはない!! だがしかし……」


 裏切る理由がないことを考えると、操られていると考えるのが合理的だ。

 

 明らかに王立騎士団はダンジョンのボスの味方をしている。ダンジョンの外に出てきた理由はわからないが、決定的な一線を超えている。

 すでに数十人の犠牲者が出ているだろう。まともな精神では同族殺しなどできるはずもない。

 


 洗脳、アンデット化、モンスターに寄生される。

 いくつか操られる原因は考えられるが、どれもがあり得るといえばあり得る。



 とはいえ。

 とはいえ……だ。


 最高ランクの冒険者が簡単に敵に操れたりするだろうか?


 備えていないはずがないのだ。それだけの経験と強さがあるはずだ。俺が思いつくだけで、対策は豊富に種類がある。

 低ランクならばともかく、SSS級の冒険者がボスに操られるなど聞いたことがない。


 今の状況も、操られているのが王立騎士団だから問題なのだった。

 低ランク冒険者が操られてもさしたる被害は発生しない。せいぜい数人が殺されるだけだ。

 最高ランクの冒険者が操られたら、下手したら数万人の犠牲者が出る。


 どうやってダンジョンのボスは王立騎士団を操ったのか。

 くそっ。わからないことばかりだ。俺たちはどうすればいい?



 先日、簡単すぎるダンジョンについて疑問を持ったことがあった。

 ダンジョンのボスが戦いに絶対に自信を持っているか。それともただの大馬鹿なのか。


 どうやらこのダンジョンのボスは前者だったようだ。

 

 むしろただ戦いに強いよりもやっかいだ。

 1人が殺されれば、1人の損失ですむ。操られれば、さらに敵の戦力が増大する。

 戦えば戦うほど、相手を強くすることになるのだった。


 力押しは通用しない。

 有効な策がなければ勝てないだろう。




「あの、ご主人様。なぜ笑っているのですか?」


 ……笑っていたか。

 結局、俺は野蛮な本性を捨てきれない。どこまでいっても冒険者でしかないのだ。

 今も恐怖よりも、いかに王立騎士団やダンジョンのボスと戦うかを考えていた。わかりやすく倒すべき敵がいる。


 それは……素晴らしいことではないのか?

 


 俺は決断した。



「行くぞ。ソフィーナ! 他の冒険者たちと協力して、王立騎士団を無力化する!!」


 これから地獄へ行く。死ぬ可能性も高い。

 ソフィーナも理解しているはずだ。それでもソフィーナは迷わなかった。


「はい!!」


 力強くうなずく。

 それでこそパーティーだ。


 

 実力だけを比べた時、王立騎士団とは天地の差がある。


 だが、この戦は実力など関係ない。

 1000人を超える集団戦である。俺たちが主役になる必要などないからだ。

 

 俺のスキルでも冒険者1人の命ぐらいは助けることができるだろう。


ブクマ、評価をいただけると作者のモチベが上がります。

どうかよろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
[一言] じぶんはいろいろ 自分の未完な小説を作者としてかんがえつづけている最中なのですが   ダンジョン{や、モンスター}は結局現実とどう照らしあわせればよいのか,と 最近は そのこたえとして ゲ…
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