第十三話 そのころの元パーティー②
「なにぃ!! 冒険者を紹介できないだと!?」
ふざけんな!!
ギルド受付の分際で生意気な! 名前は何だったか、リリィ、とか言ったか。
「……てめぇ、誰に向かってそんな口を聞いているのか?」
「誰って……。S級冒険者のグェントとレイナさんですよね。十分承知しておりますとも」
しれっと言いやがって。殺したい。
今すぐこの女を殺したい。
殺意を向けるが受付はどこ吹く風だ。
「冒険者を紹介するのはギルドの仕事でしょ!? なんで私たちだけにできないの?」
レイナがわめく。
その通りだ。最低のE級冒険者でもできることを、俺たちは断られているのだ。
この場で女が殺されても文句はないだろう? それだけの罪を犯しているのだから。
「え? 本当にわからないのですか?」
女は不思議そうに首をかしげる。
「あなたたちの評判は最悪ですから。わざわざ募集するまでもなく、誰もきませんよ?」
「俺はS級冒険者だぞ!!」
「だから何だと言うのですか。強ければだいたいのことは許される冒険者でも限度はあります。仲間を殺しかねない冒険者とパーティーを組みたい人間はいませんよ」
ふざけやがって!
ふざけやがって!
ふざけやがってぇ!!
「あなた、冒険者だけでなく、ギルドに対しても不義理を重ねましたよね。ギルドの許可なくダンジョンに入ったり、勝手に依頼を受けたりしていました。これは噂ですが、裏で盗みや詐欺もやっているとも……」
剣に手をかける。
それ以上しゃべったら、この場で斬り殺してやる。
前に一歩踏み出した時、レイナが腕を掴んだ。
邪魔するのか、レイナ。
「ま、まずいよ! さすがにギルド内で剣を抜くのは。捕まったら死刑になっちゃうよ」
「関係ねぇ!!」
女は平然としてやがる。
すました顔が気に食わねぇ。剣を抜かないとでも思ってやがるのか。
最強は自分だ。逆らうやつなど存在してはならない。
俺にはこの女を斬り殺す権利がある。
「ノエルさんの存在があってこそ、あなたがた2人の悪行も目をつぶっていたのに。自ら救世主を追放するとは、まったく馬鹿なことをしましたね」
「……あの雑魚に何の関係がある?」
「馬鹿は救いようがないとは、まさにこのことです」
無理やり剣を引き抜く。
レイナの体を振り払い、女に飛びかかる。
「死ね!!」
たかが受付の女だ。
俺の剣をかわせるはずがない。真っ二つにしてやる、あの世で後悔しな!!
「そこまでにしていただけませんかな」
振り返ると、ギルド長クラウスがギルドの奥から現れた。
ちっ! 面倒くさい奴が出てきたな。
「それ以上やると、冒険者の地位を失うどころか、街全体を敵に回しますよ。いくら戦いに強くとも、この街にはあなたより強い人が数人います」
「くそっ!」
しかたなく剣をおさめる。
いつかこの男も殺してやる、強く心に刻む。
今は駄目だ。ダンジョンを制覇するまでは。
「リリィさん。あなたもギルド職員として、少々言い過ぎたようだ。謝りなさい」
「……すいません」
女は不満たらたらの様子で頭を下げる。
怒りが冷めたらこんな女、どうでもよくなった。小物を殺したってどうにもならん。
「おい、行くぞ。レイナ」
「え? え? どこへ?」
わかったことがある。
邪魔をしているのは、ノエルだ。
ノエルを追放してから、失敗続き。
つまりこれは。
あいつが裏で俺たちを邪魔していたに違いない。冒険者ギルドもノエルに操られているのだ。
俺たちの評判が最悪? ノエルが言いふらしたに違いない。パーティーを追放されて復讐しようとしているのだ。
許せない。
最初に殺すべき人間は、ノエルだ。
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