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第百二十九話 最高ランク冒険者

 俺は冒険者の男から話を聞くのを早々に切り上げ、酒場の外に出た。

 金さえ払えば、いつでも情報は得られることがわかった。それよりも今は優先することがある。


 エネルがダンジョンにいるとわかった以上、挨拶にいかねばならないだろう。

 辺境の街では先輩として可愛がってもらった。恩がある。

 とはいえ、会いたかったような、会いたくなかったような複雑な気分だ。信頼はしているし、味方だという確信はある。


 ある……が、性格が……。



「いいか、ソフィーナ。これから会うエネルは面倒くさい性格をしているからな。気をつけてくれよ、怒らせると後が怖いからな」


「……はぁ。えっとエネルさんは強い冒険者なんですよね?」


「ああ、ダンジョンを制覇したことで最高のSSSランクになったはずだからな。弱いはずもない」


 俺のSランクですら、冒険者全体の1%にも満たない。

 SSSランクともなるとこの国全体でも十人もいない。名実とも最強の冒険者の仲間入りである。


 とはいえ、SSSランクにはダンジョンを数十個も制覇している猛者もいる。

 S級の俺からみれば強すぎる冒険者ではあるが、上には上がいる。どの世界でも同じだ。本当の最強を目指すならば、出発点でしかないのかもしれない。



「それなのに面倒な性格をしているのですか? 強いのに?」


「ソフィーナは勘違している。強ければ性格が良いなんてことはない。むしろ悪いとまではいわないが、面倒な性格をしていることが多い」


 考えてみてほしい。

 強いということは、自分の意見を通すことができるということである。自分の意見の通せるならば他人への配慮など必要なくなる。


 強くなるということは良いことばかりではない。

 知らず知らずに自分の性格が変わっていくのを気づかない冒険者が多いのだ。



「別にエネルの性格が悪いとはいっていない。ただ……とにかく良くも悪くも子供っぽいからな」


 エネルは狐の亜人で少なくとも1000年は生きている。

 それなのに見た目は子供そのもの。性格はやりたいことだけをやり、やりたくないことは一切手を出さない。

 俺も同じだって? いや、全然違うぞ。どう違うかは……実際に会えばわかるだろう。



 強いからといって性格が良いとは限らない。

 長く生きていからといって成熟するとはかぎらない。

 そういうことなのだった。


 人間も亜人も1人として同じ生き方をするものは存在しない。

 そこが面白くもあり、恐ろしくもある。


 あるいはエネルこそ、ソフィーナの師匠にふさわしいのかもしれない。

 俺が寿命で死んだ後も、エネルならばずっとそばにいてやれる。



「……なんだが怖くなってきました。私はエネルさんとやってけるのでしょうか」


「大丈夫だ。君の方が大人だからな」


 エネルが子供っぽすぎるのか。

 ソフィーナが大人びているのか、微妙なところだ。


 逆にソフィーナはものわかりが良すぎる。俺のいうことを何でも信じる傾向がある。

 今はそれでいいが、いずれは独り立ちしなければならない。

 強大なスキルを持っているだけになおさら。他人を導く存在になるには、まだまだ勉強しなければならないことが多い。


「それに君と同じ亜人だからな。通じ合うものがあるのかもしれない」


「え!? 本当ですか?」


 ソフィーナの猫耳がピンと立つ。

 嬉しそうに聞き返してくる。


「じゃあ私たちは友達になれますか?」


「……うーん。無理じゃないかな」


「ええ!?」


 エネルとソフィーナ。

 同じ亜人ではあるが、性格は真逆に近い。

そもそもエネルに友達というのは想像しにくい。どんな人間が友達になれるのかわからない。


 俺はエネルの友達なのだろうか。

 どうだろうか、悩ましい。




 ソフィーナと話しているうちに、エネルの家へと到着していた。


「お、大きな家ですね」


 アーステラが建てた建物と同じくらいだ。

 大貴族と同じくらいの家を建てるとは、エネルも出世したのだ。辺境の街では金がなくて、すねていたものだったが。


 ダンジョンを制覇するということは、それくらいの恩恵をもたらす。

 冒険者としての格が桁違いに上がっている。引退しても一生食べて行けるほどの金も手にしているだろう。



「エネルのパーティーは大人数だからな。この程度の家が必要なのだろう」


 冒険者でも100人以上のパーティーを組んでいるのは珍しい。

 エネルは単に子供っぽいだけではない。同時にカリスマ性も持っている。だからこそ人が……。



「つまらん! つまらん! つまらーーーん!!」


 家の外までエネルの大声が響いてきた。


「ふぁ!?」


 ソフィーナが驚いて背筋が伸びている。



 俺は頭を抱えたくなった。

 どうもエネルの性格は辺境の街にいたころと、まったく変わっていないようだ。


 ……このまま帰ってもいいだろうか。

 またひと騒動ありそうである。どんどん面倒ごとだけが増えていくな。

 はたして俺たちはダンジョンへ入れるのだろうか。


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どうかよろしくお願いします。


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