第百二十四話 ダンジョン到着
何事もなく2週間がすぎ、俺たちは新しいダンジョンへと到着していた。
起こった出来事といえば、雑魚モンスターが襲ってきたぐらいか。
新人冒険者たちでも倒せるぐらいだ。負けるわけない。俺一人でも十分であった。
あとは各地の名物を見学したり、美味しい料理を食べたり……。
普通の観光旅行と変わらない。なんとも先行きが不安になる旅ではあった。
そして今。
この場所から新しいダンジョンが一望できる。
山の斜面が大きくえぐれて、ダンジョンの入り口がみえる。
周辺には冒険者たちが仮の家を建てている。いや、冒険者だけでないだろう。商人や鍛冶屋などもいるに違いない。
もしダンジョンの質がいいのならば、ここから街へと成長していく可能性がある。
こんな森の中でも街ができるのだからダンジョンの力はすごい。
「わぁ、あれがダンジョンなんですね!」
嬉しそうにソフィーナがはしゃぐ。
ソフィーナはダンジョンをみるのは初めてだ。さんざん俺がいい続けてきたダンジョンが遠くに存在する、はしゃぐのも無理はない。
しかし。
「どうも、露骨すぎる気はするな」
普通のダンジョンは隠されていたり、洞窟に偽装されているものが多い。
遠目からでも、はっきりとダンジョンの入り口だと確認できるのは珍しい。明らかにダンジョン側から発見されたがっているとしか思えない。
挑発的なダンジョンだな。
待っているのはなく、自ら世界に登場してきた。
「ソフィーナ。なぜこのダンジョンはわざと発見されたと思う?」
これまで冒険者側の事情ばかりを話してきたが、当然ダンジョン側にも事情がある。
ダンジョンはモンスターがいて、最深部にはボスがいるとこまではどこも一緒だ。ただ、モンスターの配置や罠の有無などは微妙に違う。まったく同じダンジョンは存在しない。
ダンジョンの性格とも呼べるものがあるのだ。
では何がダンジョンの性格を決めるのか。
それはひとえにダンジョンのボスの意思である。
ボスとはダンジョンの支配者。
絶対的な君主である。
知能や戦闘力はモンスターとはけた違い。モンスターという定義を逸脱した存在である。
存在は様々。ドラゴンの上位種だったり、精霊だったり。
かつては人間がダンジョンのボスになったと聞いたこともあるが、まあ、これは伝説にすぎないだろう。
「え……と、わかりません。敵にも何か考えがあるのでしょうか?」
「もちろんあるだろうな。新しいダンジョンを創造すれば、この国の冒険者が群がってくる、最低でもそこまでは予想しているはずだ」
高い知能があるからこそ、ダンジョンを作り出すことができるのだ。アーステラが研究しているように、ダンジョン発生の原理は未だによくわかっていない。
モンスターはどこから来るのか。いつかダンジョンが発生することがなくなるのか。誰にもわからない。
世界最高の頭脳が集まる学園でもわかっていなのだ。
どれだけダンジョンに未知の部分が残っているのか、誰でも理解できるに違いない。
ボスを倒せばダンジョン制覇。
思考を推測するのは困難だ。
ただ単に冒険者と戦いたいのか。
人間を殺すのが好きなのか。あるいは人間では理解しようもない理由があるのか。
相手の思考を予測するのが勝利への第一歩であるが、思考が異質な相手を読むのは難しい。
だからこそ。
面白い。
「やっぱりご主人様は楽しそうです」
未知のものに挑むことこそ、冒険者の目的。
この光景をみて心が躍らない冒険者はいない。
「だが、ダンジョンだけじゃないぞ。この国の一流冒険者も集まっている。王都の新人冒険者たちとは比較にもならない奴らがいる」
戦うならば、格上がいい。
まさに絶好の敵になりうる存在である。
ダンジョン制覇のためには越えなければならない奴らだ。
「会ってどうするのですか?」
「戦わないまでも、ダンジョン攻略の技を盗ませてもらうか。俺には師匠がいないからな。冒険者の技を盗んでは力をつけていった」
俺はソフィーナに笑いかける。
俺たちは庶民だ。プライドなどない。強くなるためならば手段は選ばない。
ああ、そうだ。
大切なことをいい忘れていた。
「君のスキルはできるだけ使わないことにしようか」
冒険者ギルドや他の冒険者にソフィーナのスキルを知られるわけにはいかない。
奪い合いになってしまう。さすが全員でこられては守り切れる自信はない。隠しておく必要があるのだ。
いや、それよりも重要なことがある。
ソフィーナのスキルでダンジョンを攻略しても面白くない。
ここは俺の舞台である。
できるだけ自分の力で戦いたい。
「さあ、行こうか」
俺たちは新しいダンジョンへ向けて歩き出す。
何が待っているのか。楽しみだ。
不安はあるし、死ぬかもしれない。
それでも楽しみなものは楽しみなのだ。
ブクマ、評価をいただけると作者のモチベが上がります。
どうかよろしくお願いします。




