第百六話 新米冒険者たち
もう我慢の限界よ!!
これ以上、こんなボロい冒険者ギルドにいてたまるか!
今日こそ王都から出ていかせてもらうからね!
そう決意したのは私だけじゃない。
パーティーの全員での決断である。私たちが抜ければギルドの半分は消えることになるけど知ったこっちゃない。
だって、だって、しょうがないでしょ!
冒険者になって以来、仕事といえばスライム狩りのみ。
毎日小銭もらって家に帰る生活! うんざり!!
だいたいギルドの職員がたった5人なんてあり得ないでしょ!!
ギルド長のじじいは今日も寝ているし! やる気なさすぎ! 私たちが消えても消えたとしても、気づきもしないでしょ。
私たちはこんなダンジョンもない小さなギルドで一生を終える器じゃない。
すぐにでもダンジョン制覇もできるに決まっている。
だって冒険者になってから誰にも負けたことがないんだから。
Eランクだろうと関係ない。あたしたちこそが最強なんだ。
私たちはうなずき合い、ギルドを出ていこうとする。
もう二度と帰ってくることはない。伝説への最初の一歩が踏み出されるのよ。
その時、入り口の扉が開いて、リリィが入ってきた。
「げっ」
思わず声が出た。
出ていこうとした瞬間にリリィと出くわすなんて間の悪い。
最近ギルドにきたこの女はまあまあやる気がある。
おかげでギルドが改善した部分もある。が、私たちはすでに王都を出ていくと決めた。誰にも邪魔させない。
「悪いけど、私たちはここを出ていくから。止めても無駄だよ? 王都では私たちの才能がもったいない」
「……そうですか。しかたありませんね」
あっさりとリリィは承知した。
泣いて引き止められると思っていたけど、簡単に承知されると、それはそれで悔しい。
なに? 私たちはギルド最強の冒険者なんだよ? 抜けられたら困るのはそっちでしょ!?
「ただ、そうですね。出ていく前に本当にダンジョンで通用するか腕試しをしてはいかがでしょうか?」
「腕試しぃ?」
「ノエルさんは入ってきて、いきなりだけど出番だよ」
リリィの後ろから、背が高くひょろりとした男が入ってきた。
かなり顔も整っているけど、あまり強そうにはみえない。
「あんた誰よ?」
みたことがない顔だ。
私たちと同じ冒険者だろうか?
リリィが私たちを引き留めるために連れてきたのか。
男は困ったように頭をなでている。
緊張感がぜんぜんない。
「あー。確かに俺に勝てればダンジョンで通用する。おれは間違いないな」
「ふーん。じゃあ痛い目にあう覚悟はあるんだろうね? 私たちは強いよ?」
「新人に負けるようなら、冒険者引退だな」
カチンときた。なに、この男?
私たちをなめている。
でも、考えようによっては、パーティーの実力を証明するいい機会でもある。
この男が何者か知らないが、叩きのめせばリリィの私たちを見る目も変わるに違いない。
やってやろうじゃない。
今までのうっぷんをこの男で晴らさせてもらうわ。
でも。
でも……だ。
1つだけ疑問がある。
この男は猫耳の子供を連れている。
私たちと戦いにきたのに、どうして子供連れなの?
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