8-4.ヨコミ、始まりの物語!!二つの出会いと一つの別れ!!
話が暗くなって来ましたよ
これは、5年前の出来事。ヨコミとごら子と、あるかけがえのない存在が出会った時の物語である。当時12歳だったヨコミは、ルナクレープにある河川敷で石を集め、水切りをして遊んでいた。
ヨコミ「いち、に、さん、し、ご、ろく、しちはち、きゅう……あーっ!!もうちょっとで十回行けたのになー」
昼下がり、曇り気味で天気はそこまで良いとは言えないが、涼しく過ごしやすい。気分で休憩をしながら、ヨコミは自身の最高記録である十六回を塗り替える為に研究をしている。ヨコミが良い石を探すため、地面を凝視しながら歩いていると。何者かとぶつかってしまった。
ヨコミ「うーん、誰だァ?この時間帯にこんなところで遊んでるのはワタシくらいしかいないもんだと思ったけど」
顔を上げるとそこには、ピンク色の髪でツインテールをした少女が、少しだけイラついた表情をしてこちらをみていた。彼女はそう、ごら子である。
ごら子「ちゃんと前見て歩きなさいよ。危ないわね」
ヨコミは素直に謝ろうとしたがその手前、ごら子が歩きながらスマートフォンを見ていたことに気がついた。
ヨコミ「キミこそ、どこ見て歩いてたんだい?」
ごら子「私はちゃんと気をつけて歩いてたわよ」
ヨコミ「いーや違うね、キミはスマホを見てた」
ごら子「うるさいわね。私はいいのよ」
ヨコミ「なんだそれは!訳が分からないぞ!」
ごら子といがみあうヨコミ。歩きスマホをしてぶつかって来ておいて、こちらのせいにされるとは心外だ。ヨコミは閃いた。この不毛な痴話喧嘩に決着をつける方法を……
ヨコミ「だったらさ、水切りで決着つけようよ。ワタシが勝ったらキミは謝り、そのスマホをワタシが貰うとしよう」
ごら子「何を馬鹿な事を……でもやるわ。その代わり、私が勝った場合は貴方をチウィッターに晒す!!」
ヨコミ「チウィッター?」
ごら子「知らないのね。世界中で使われているソーシャルネットワークサービスよ。自分が作った画像や文章や動画を公開して、沢山の人に見てもらう事が出来るの」
ごら子が、スマホの画面をヨコミに見せつける。ヨコミはごら子からスマホを奪い取り、ぎこち無い手で画面をスクロールする。次々と流れてくる投稿をみながら、ヨコミは笑い、怒り、安らんだ。次々とタイムラインを見ていく内に、ヨコミはごら子に一つの質問をする。
ヨコミ「この文章の語尾についてる『草』って言うのはなんだ?」
ごら子「それはネットスラングね。インターネットの方言みたいなものよ。草って言うのは、笑った、とか面白いみたいな意味合いで使うのよ」
ヨコミ「へぇー……草!」
ごら子「早速使いこなしてんじゃないわよ」
ヨコミはチウィッターを見るのに夢中になってしまい、いつの間にか水切り対決の事を忘れていた。ごら子は、いきなりにスマホを奪われた事に苛立ってこそいたが、ヨコミがチウィッターを楽しむ姿を見て少し和んでしまい、対決についてはどうでも良くなってしまった。
ヨコミ「なぁ!!なんか面白いネタでも見つけて投稿しよう!川を歩き回ってさ!!」
ごら子「元からそのつもりで私はここまで来たんだけど。まあいいわ、チウィッターの良さを分かって貰えたし、許してあげる」
ヨコミ「許す?何をだ?」
ごら子「ああ、もういいわ。取り敢えずスマホを返してくれる?」
ヨコミ「あぁ、すまぬ」
ごら子にスマホを手渡した後、その腕を掴み引っ張るヨコミ。駆け足で川を駆け回る。すると、近くを通りかかった茂みが一瞬激しく揺れた。二人はそちらの方向を見る。茂みから、大きくて丸く濃い緑色の光り輝く岩?のようなものがはみ出している。二人はゆっくりと近寄ると、その正体を確認する事が出来た。
ヨコミ「カ、カメェェェェエエエエエエ!!」
ごら子「実物のカメは初めて見たわ」
カメ「きゅうー!!きゅう!」
二人は大きなカメを見つけた。ヨコミは咄嗟に甲羅を撫で回して、ごら子は咄嗟にスマホで写真を撮った。カメを撫で回しながら、ヨコミがごら子のスマホを覗き見する。
ヨコミ「おぉ!良く撮れてるじゃないか!!川に亀がいたなんてビッグニュースだな!!ビックリビッグカメニュースだ!!」
ごら子「川に亀が見つかるっていうのも珍しくはあるけど、それよりこの甲羅の模様を見て」
カメの甲羅は半透明の緑で、宝石のように綺麗に光を反射していた。
ごら子「きっと珍しい亀よ。早速チウィッターに乗せようかしら」
ごら子は《これなんてカメ?》という文章を添えてカメの画像を投稿した。
カメ「きゅう!きゅう!」
かわいらしい 鳴き声を上げながらヨコミのスカートに頬ずりをするカメ。
ヨコミ「おおう……なんだ!?くすぐったいぞ!」
ごら子「貴方、懐かれたんじゃないの。この子、凄く楽しそうにしてるわよ」
ヨコミ「おう!そうかそうかー!!嬉しいな!!よし、少し遊んでやるぞ!!お手!」
ごら子「犬じゃないんだから」
カメ「きゅうー!!」
カメに手を差し出すヨコミを呆れ顔見ていたごら子だったが、なんと亀は前足を上げ、ヨコミの手の上に乗っかった!!
ヨコミ「凄い!!こやつ賢いぞ!!」
テンションが上がったヨコミは、カメに様々な芸を覚えさせようとした。
ヨコミ「カメ!!回転!!カメ!!ジャンプ!!カメ!!殻にこもれ!!カメ!!チンチン!!」
カメ「きゅう!きゅーう!きゅーん!!」
芸を教え始めて4時間、カメは5つの芸を完璧にマスターした。その様子をごら子が撮影し、チウィッターへと投稿していた。二人はカメと遊ぶのに夢中になり、気がつくと日が暮れていた。
ごら子「貴方、きゅうじゃなくて、ごっと言いなさい」
カメ「きゅうー!!」
ごら子「私の言う事は聞かないみたいね」
ごら子は少し落ち込んだ。
ごら子「そろそろ門限だわ。私帰るわね」
ヨコミ「門限なんかあるのか?草!!まあいいや、ワタシはもう少しここにいるぞ!!君もまた明日ここに来てな!!」
ごら子「え、なんでよ。いいけど。あと私の名前はゴスポワール=ラビソントゥ=コルソン……略してごら子よーん」
ヨコミ「ああ!!よろしくな!!ワタシは、ヨコミ=ヒメクリダァ……」
帰って行くごら子を見送った後、ヨコミは再びカメの方を振り返った。
ヨコミ「そういえばカメ、キミに名前をつけてやろう!!今日から君はアレックスだ!!」
アレックス「きゅうきゅう!」
ヨコミはカメ、もといアレックスをワシワシと撫で回した。そして、再び芸を教え始めようとする。しかし、そこに不穏な影が近寄る。
バンダナの男「見つけたぞ!!これがチウィッターで広まっていた熟年のエメラルドタートスだ!!」
パンチパーマの男「ヒッヒッヒ!!コイツをひっ捕らえて闇市で売れば200万パコスは硬いぜ!!」
巨大な網を持ったバンダナの男と、それよりもさらに大きいカゴを担いだパンチパーマの男が現れた。
ヨコミ「な!?なんだお前らは!!まさかアレックスをひっ捕らえようって言うんじゃないだろうな!!」
バンダナの男「残念ながらその通りだぜぇ!!このガキ!!どけぇ!!200万は俺たちのもんだぁ!!」
ヨコミ「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああ!!」
ヨコミはバンダナの男に思いっきり川へとぶっとばされた。川の水がばしゃあん!!と音を鳴らす。
パンチマパーマの男「へへ!クソガキが!!さっさとコイツを捕まえてやろうぜ!!」
アレックス「きゅうううううううう!!」
目にも止まらぬ速さの連携でアレックスをカゴへと放り込む二人。川から出てきたヨコミが、カゴを持ったパンチパーマの男に突進する。
ヨコミ「アレックスを……離せ!!離せ!!離せ!!離せったらぁ!!」
バンダナの男「うるせえガキだなぁ!!テメェも捕まえて売り飛ばしてやろうか?ディミトリ家の変態野郎に売りつければ300万は行くんじゃないかぁ?」
ヨコミ「ヒェ!!この!!クソ野郎!!うわあわあわあわあわあをあわあわあわあわあわあわあ!!」
ポコポコとバンダナの男を殴るヨコミだったが、全く効いていない。そして、隣にいたパンチパーマに6連発で殴られた後、力強い蹴りによって再び川に蹴り飛ばされた。
パンチパーマ「ヒャッハッハ!!子供が大人に勝てるわけねぇだろうが!!しかしアレだな、ガキも一緒に売るんだったらあんまり傷をつけねぇ方がいいな……とまずい!!誰か来る!!」
誰かの気配を感じ、パンチパーマとバンダナはヨコミを川に放置しそのまま何処かへと去っていった。向かって来ていたのは夜のパトロールを行っている魔女二人組であった。二人は川から上がろうとするボロボロのヨコミの姿を見つけ、駆け寄る。
パトロール魔女A「ど、どうしたの貴方!?ボロボロじゃない!!」
ヨコミ「ア……レ……ク……ス……」
パトロール魔女B「この子、死にかけてる!!早く治癒用の魔道具を!!」
二人の魔女はヨコミの傷を魔道具を使って治療し、彼女の家へと送った。ヨコミは自分の家族に何があったのかを話し、風呂に入り、自分の部屋に戻り、思いっきり泣いた。
ヨコミ「うわあああああああああん!!アレックス……アレックスぅぅううううう!!うわあああああああああんん!!」
ここから数日後、ヨコミは大切な者を護る力を求め、魔女になる道を選んだのであった。
明るいギャグ小説のはずだったのに!!




