6-5.氷の上のランデブー!?ヨコミVSペンギーゴ!!
ヨコミそして、ペンギーの戦い!
ロッカとピップの戦いが終わった頃……ヨコミと、彼女自身と同じく準一級を目指すペンギーゴとの戦いが始まろうとしていた。
ヨコミ「試合開始の手拍子は、ワタシがやっていいかい?」
二人はフィールドの位置につき、魔力構築を始める。魔力構築とは、身体の中心に魔力を集中させ、その魔力をより強く、より自分自身に使いやすい物に変換する。準二級以上の魔法使いが皆習得している技術である。
ペンギー「うん……」
両者とも、準備が整ったようだ。ペンギーと目を合わせるヨコミ。目が合ったことびっくりして、視線を逸らしてしまうペンギー。そして、ヨコミが手拍子を鳴らす。
ヨコミ「さぁ、ゲームスタートダァ……」
手拍子の直後、両腕を大きく広げるヨコミ。そして、右手に一丁、左手に一丁、巨大なハサミを生み出し握る。十分な魔力構築を済ましていたのもあってか、その一連の動きを一瞬でこなしていた。強化魔法もマシマシだ。そのままペンギーの元へと高速で接近する。
ペンギー「いきなり突っ込んでくるなんて、怖いよ……」
自身の目の前に巨大な氷の壁を作り、防御するペンギー。彼女の能力は、氷の属性魔法。氷を操り戦うのだ。もちろんペンギーも魔力構築をしていた。とっさに出した氷の壁もかなり頑丈な物となった。
ヨコミ「甘い!甘いぞ!揚げあんパンくらいな!草!」
ガ ガ ガ バリーン!!
ヨコミは右手の巨大ハサミをアイスピックのように氷の壁に何度も突きつけ、ヒビ割れさせ粉砕した。
ペンギー「ヒィ!!強引すぎるよぉ……」
びっくりしながらも、ペンギーは氷の壁の割れた破片を操り、ヨコミへと飛ばす。壁を破壊しそのまま追撃しようとしたヨコミだったが、氷の破片の量はかなり多く当たってしまうとダメージはかなり多いと判断し、バックステップをしつつそれでも当たりそうな物はハサミで弾いた!!
ヨコミ「ぶっ壊した氷まで操れるのか!?君、中々やるじゃないか。自信持ちなYo!」
属性魔法や創造魔法で生み出された物は、基本的に破壊されると、主がコントロールする事は出来なくなる。例えば、ロッカの縛り縄の輪っかがちぎられたり、ユメミのアイスクリームミサイルが真っ二つにされてしまえば、その場に落下するか消滅する。しかし、ペンギーの氷は違う。氷は砕かれても、氷としての役割を果たすことが出来る。食品を腐らせないようにする為の氷も、小さく削られたかき氷も、同じ氷だ。
ペンギー「自信?無理だよ……」
俯きながら、ペンギーはヨコミの真上に氷柱を生み出し落とす。ヨコミは先程と同じく落ちてきて氷柱を破壊しようとするが、またこの破壊した破片がさらに襲ってくる事を考え、素直に回避した……が……
ヨコミ「あぁ、どちらにせよ、だな!」
真下に落ちていっていたはずの氷柱が直角に曲がり、ヨコミの方へと突っ込んでいく!!そしてさらに六本の氷柱が現れヨコミを追尾するように飛んで行く!!
ヨコミ「鋏の舞!」
来た!ヨコミのスゴ技!高速回転しながら目にも止まらぬスピードで踊るようにハサミを振り回すヨコミ。飛んできた氷柱を全て破壊し、改めて飛んできた破壊された破片も全て弾き飛ばす!!
ペンギー「長引くと色んな人に見られちゃうから、早く終わらせたいのに……仕方がない、ちょっと卑怯で恥ずかしいけど……」
ペンギーは、鋏の舞をするヨコミに対して、氷柱での攻撃を続ける。そして、その攻撃をしながらゆっくりとしゃがみ、左手を地面へとつけた。
ペンギー「ごめんね……」
左手を中心にして、地面が波状に凍りついていく。そしてヨコミの足元も凍った。
ヨコミ「なんだなんだぁ!!ホワッチャッチャッチャ!!アーッれ!」
氷と化した地面に足を滑らせ、すってんころりんと転ぶヨコミ。尻もちをつきその勢いで鋏も両手から離れてしまう。その隙をつき、ペンギーの氷柱が襲いかかってくる。
ヨコミ「あー、イタタタタ、イタタ!」
無謀なヨコミに向かって何本もの氷柱が四方八方から飛んでくる。自身の身体を護る遮断魔法の技術が高く、根性もあるヨコミは、氷柱の攻撃を身体で受けつつ、痛みを我慢しながら、もう一度滑って転ぶ事がないよう立ち上がった。
ペンギー「ごめんね……卑怯だよね……」
立ち上がったヨコミから目を逸らしながら、ペンギーが呟く。申し訳なさからか、氷柱での攻撃が少し弱まる。ヨコミは氷に足元をすべらせオロオロとよろめきながらも、攻撃をなんとか回避しながら話す。
ヨコミ「いいんだ、自由にやんな代!とはいえ、このままではワタシは氷柱に削られて負ける!よし……こうなったら!日替わり魔法!今日は!何が出るかな!?」
ピンチになったヨコミは、いつものように日替わり魔法を発動!ヨコミの周りがキリに包まれる……そして、そこに出てきたのは……
強 力 瞬 間 接 着 剤 セ メ ダ リ オ ン
ペンギー「ん……」
見ての通り、強力な瞬間接着剤である。
ヨコミ「今日は九月十九日、くっつくの日だからってわけか!?でも、これでどう戦えと!?」
接着剤を片手に握り、困惑するヨコミ。ペンギーも困惑して攻撃をやめてしまったが、直ぐにまた氷柱を呼び出し、ヨコミにぶつける。
ヨコミ「クソ!どうすればいいんだ!!こんなもの!!こんな!!瞬間接着剤なんて!!」
途方にくれるヨコミに更に氷柱が襲いかかる!ヨコミの防壁も限界に近い。そろそろ破られてしまうだろう……
ペンギー「長引くと皆が見に来ちゃうかもしれないから、そろそろ終わらせるね……」
氷柱をペンギーの限界である9本にまで増やし、最大のスピードでヨコミに襲わせる。これが当たれば、ヨコミはノックアウトだ!!どうなる……
ヨコミ「コレだぁぁぁあああ!!」
とてつもなく速いスピードで氷柱の間をくぐり抜けて、ペンギーの元へとやってくるヨコミ。足場は氷で滑る筈なのにどうしてなのか。それは、瞬時にヨコミが鋏を二つに分解し、強力瞬間接着剤セメダリオンを使い、靴の裏にくっつけ、即席でスケートブーツを作り滑走したからだ!!
ペンギー「そんな!うわあああああ!」
トドメの一撃を、意外な方法で回避され驚くペンギー。ヨコミは、その一瞬をつきペンギーに接近しそのまま頭の上へと持ち上げる。
ヨコミ「フィギュアスケート……開幕ダァ……」
ペンギーを持ち上げながら、リズミカルに滑走するヨコミ。スイスイとフィールド上を駆け回る。
ペンギー「そんな……持ち上げないで……!恥ずかしいよ……」
ヨコミ「でもちょっと、楽しいだろう?」
ペンギー「まぁ……楽しいかも……」
頬を赤らめながらも笑顔になるペンギー。実技演習の休憩をしていた生徒達が、ヨコミのスケートが気になり、集まってくる。
ペンギー「人が集まって来ちゃった……恥ずかしいよ……」
ヨコミ「そんな事!気にしなくていいダルルォ!」
ペンギー「……羨ましいよ、ヨコミさん……」
人の視線を気にせずに大胆な行動をするヨコミに、ペンギーはそう投げかけた。
【ここで過去回想】
小さな頃からペンギーは、粘土で物を作るのが好きだった。毎週、父に買って貰った粘土で、人形や土偶など芸術的な作品を作っていた。
ペンギー「よし……出来たぁ……」
ペンギー父「凄いぞペンギー!将来は陶芸家だな!!」
ペンギー母「凄い凄い!写真撮らせて!」
両親もペンギーの作品が完成する度に喜び、彼女を褒めたたえた。ペンギーはどんどん作品を作っていき、中学に上がる直前には、その作品数が1000を越えていた。
ペンギーはルナクレープにある中学校に入った。源流界にあるのと同じような、普通の中学へと入学したのだ。そこに、陶芸部はなかったので、代わりに小学生の頃からの友達に誘われた美術部に入って、そこで粘土の作品を作って行く事を決めた。
ペンギー「うん……いい感じ……」
美術部のみんなもペンギーの達人の如き技で作られた作品に感動していた。ペンギーの作品に魅了され教えを乞う部員もいたほどに……
しかし……
ある日の部活終わり、部員が皆帰る頃……
美術部の友人「ペンギー!帰ろー!」
ペンギー「ごめん……もう後30分くらいでいいモノが完成しそうなの」
美術部の友人「マジ!?見たい……でも妹を迎えに行かなきゃ!明日見せてね!バイバーイ!」
ペンギー「……うん!楽しみにしててね」
友人を送り、美術室で黙々と作品作りに没頭するペンギー。そこに、二人の男子がやってくる。
バンダナつけた男子「おいおい、なんかいるぜ!何やってんだアイツ……なんか粘土で作ってんぞ!」
ペンギーの元へとニヤつきながら近づくバンダナをつけた男子、その後ろからパンチパーマの男子も声を上げる。
パンチパーマの男子「ギャハハ!中学生にもなって粘土遊びとか……お前恥ずかしくねーのかよ!」
笑い声を上げるパンチパーマ。ペンギーが嫌そうな顔で二人のことを睨む。
バンダナ「きったねぇー!」
パンチパーマの男子とバンダナをつけた男子がペンギーをからかい始める。ペンギーの作りかけの作品を見ながら嘲笑う。
ペンギー「貴方達何……?それにこれは私の作品……」
男子二人を追い払おうとするペンギー。しかし、この行動によって二人の嫌味は加速する。
パンチパーマ「作品?このウンコみてーのが!?冗談きついわぁ!気持ちわりぃよー!」
パンチパーマがペンギーをバカにする。どんどん表情が沈んでいくペンギー。
ペンギー「気持ち悪くない!素敵な作品だもん……それにこれはまだ作りかけだし……」
二人と作品の間を遮るように立つペンギー。しかし、バンダナをつけた男子はそれを避けて作品の方まで行き……
バンダナ「おーら!!」
作りかけの作品を蹴飛ばし壊すバンダナの男、パンチパーマも追撃するように壊れた部分を踏み付ける。
パンチパーマ「うんこ踏んじゃったよー!きったねぇ!」
粘土がついた靴をペンギーに見せつけるパンチパーマ。ペンギーは痺れを切らし怒った!
ペンギー「みんな……みんな楽しみにしてくれてたんだよ!!美術部の皆も!!お父さんもお母さんも!!」
普段は上げないような大きな声で二人を怒鳴りつけるペンギー。少し涙目になってしまっている。
バンダナ「みんなが楽しみに?何言ってんのだよ?みんなお前の作ったもんをバカにして笑ってるだけだぜ!!」
胸を抉られるような言葉を投げられ、沈むペンギー。荷物を持って美術室から飛び出す。
ペンギー「なんなの……あいつら……何も分かってない……まぁ、美術部の皆は分かってくれてるもんね……」
そのまま学校を出て、帰り道を歩く。歩いた先に、弟と一緒に塾に向かおうとしてるであろう美術部の友人の姿が見えた。声をかけようと近寄るペンギーだったが。友人と弟の
会話が聞こえ、足を止める。
美術部の友人「それがさぁ!でかいウンコみたいでさ!まじで笑っちゃの!ほんと……中学生にもなってさー!」
ペンギー「え……」
ずっと仲の良かった友人が、先程の男子二人が言っていた事と同じ事を言っていた……ペンギーは何が何だか分からなくなってしまった。本当に、自分は今まで家族にも友達にも裏でバカにされて、嘲笑われていたのでは無いか。ペンギーは涙を流しながら、家へと走って行った。
美術部の友人「ただの腐って茶色くなったバナナで笑うとか、本当に私ってばガキだわー!って……あそこにいるのはペンギーじゃない?おーい!って行っちゃった……」
そう、友人は決してペンギーをバカにしてなどなかった。しかし、ペンギーはそれに気がつくことは無く……
ペンギー「ただいま」
ペンギー父「お帰りー。粘土買っといたぞーってあれ?」
家に帰って直ぐにペンギーは自分の部屋へと籠った。この後、親や美術部の仲間たちは皆、ペンギーにもう粘土での作品作りはやらないのかと何度も聞いたが、その声はペンギーにとって嘲りとしか感じられなかった。そして、それ以来、ペンギーは自分の作品は愚か、何をするにも人に見られる事が嫌になってしまったのだ。
ペンギー「恥ずかしい……恥ずかしい……」
この日から、ペンギーは粘土での作品作りを辞めてしまった。
【回想終了】
ペンギー「ヨコミさんは、正々堂々としてて凄いね……憧れちゃうよ……どうしたらそんなに自分に自信を持てるの?」
スケートするヨコミに持ち上げられながら話すペンギー。この言葉を聞いて、ヨコミは少し照れながら話した。
ヨコミ「なぁ、ペンギー。君が作ったこのスケートリンクで、一緒に踊らないか?」
ヨコミがペンギーを地面におろし、自身のと同じように彼女の靴の裏にハサミを分解して作った刃を強力瞬間接着剤セメダリオンを使ってくっつけた。
ペンギー「え、いや……そんなの恥ずかしうわぁあ!」
モジモジするペンギーの腕を引っ張って一緒に連れていくヨコミ。
ヨコミ「さぁ!!踊ろう!!」
引っ張られるペンギーだったが、体勢を立て直して、ヨコミと並行するように滑る。
ヨコミ「ほら、ワタシと息を合わせるんだ!」
右足を出してスイー。左足を出してスイー。二人の足を動かすタイミングは次第に近づいていき、二人はほぼ同時に同じ動きをしている状態となった。
ペンギー「……やめようよ」
ヨコミ「ここまで来てやめる方が恥ずかしいんじゃないか?」
ペンギー「それは、そうかもだけど……」
既に二人の周りには十人ほどの生徒達が集まっていた。戦いを終えたロッカやエコロも、その中にいた。
エコロ「お、ヨコミとペンギーが楽しそうな事をやってるね。スケートかぁ……」
ロッカ「二人とも上手だにょー!!」
二人の滑りに感激するロッカ。実際ヨコミとペンギーの動きは美しかった。魔法の力で身体能力が上がってるとはいえ、慣れないスケートをやるのは難しいが、それを上手くやり遂げている。
ヨコミ「さぁ……三回転ジャンプダァ……行くぞ!せーのっ!!」
ペンギー「ぅ……うん!」
ヨコミとペンギーは息を合わせて同時にジャンプ!そして空中で身体を三回転!!ヨコミは一瞬体勢を崩したが何とか着地。ペンギーも綺麗に着地する事が出来た。
ペンギー「今……なんだか凄く楽しいかも!」
ヨコミ「そうだ!その調子!」
そしてまた二人はもう一度息を合わせ、今度は右足で片足滑走。左足を大きく上げてポーズを取る。そのまま足を戻し同時に二回転ジャンプ、そしてそのまま繋げて三回転ジャンプ!!周りで見ていた生徒達が湧き上がる!
ヨコミ「さぁ!そろそろフィニッシュだ!!」
ペンギー「……うん!」
二人は近づき両手を繋ぐ。お互いが向かい合い、ペンギーの進行方向に合わせ、ヨコミが後ろ向きに滑っている。
ヨコミ「さぁ!!ワタシを投げろ!!遠慮なくな!!」
ペンギー「……分かった!!」
遠心力を使いヨコミを斜め上へと投げるペンギー。ヨコミが空へと舞う!!空中でムーンサルトのように回転し、そのまま落ちて行くヨコミ!!それをペンギーがキャッチ!!
ヨコミ・ペンギー「ハイ!!」
終☆幕
いつの間にか、魔法学校の生徒の殆どが集まっていた。皆二人の公演に拍手喝采!!歓声が響く。
ポール「二人とも凄いよー!!」
キャロライン「いいね……まるで百合のようだ!!」
ごら子「これはまさに……希望の光!!」
生徒皆が二人を祝福する声を上げる。その中には、実技演習を途中でやめて見に来た生徒もいるようだ。
ヨコミ「なぁ、まだ恥ずかしいか?」
ペンギー「ちょっとだけ……ね……だけど思い出したよ……皆に何かを見せるって、とっても素敵な事だって」
ヨコミ「ああ!それは良かった!!」
こうして、ヨコミVSペンギーの実技演習は幕を下ろしたのだった。
自分自身がこの作品に慰められるわぁー




